小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

パンデミックの正体

INDEX|20ページ/21ページ|

次のページ前のページ
 

 といってもいいのか、夜夢を見ていても、たまに、ビックリして、目を覚ますことになるのだった。
 夢の中で、自分は歩いていた。
 どこに向かって歩いているのか、まったく分からない。見えているはずなのに、見えないというのは、実は見えていることが分かっているということでもあった。
 そんな中、見えていることを認めたくない自分がいて、その自分は、
「過去に苛められていた」
 ということですら、自分の中から、意識として消し去ってしまいたいのだった。
 夢の中で歩いていると、足元にはドライアイスを敷き詰めたような雲か霞のようなものが、風もないのに、たなびいているようだった。
 東西南北など分かるはずがない。まわりに、建物は何もなく、真っ青な壁が見えるだけだった。
 夢でなければ、
「無限の世界だ」
 と思うかも知れない。
 しかし、
「壁だ」
 という意識があることから、逆にそれを、
「夢の世界だ」
 と感じるのだった。
 あるで、
「タマゴが先かニワトリが先か?」
 という禅問答のようであるが、もし、その質問をされた時、私が答えるとするならば、
「最後に訪れたのが、タマゴであれば、最初はニワトリ。最後になるのがニワトリであれば、最初はタマゴ」
 と答えるだろう。
 しかし、そこには、
「但し書き」
 があり、
「あくまでも、それが最後だということを分かったのであれば」
 ということであった。
 つまり、
「そこまでくれば、世界の終わり。だから、生命の循環に終わりがくるのであれば、最後を誰も見ることはできない」
 といえるという考えであった。
 それを思うと、世の中の理不尽さも、
「循環によって繰り返されて当たり前なんだ」
 と思うのだった。

                 大団円

 美亜が自殺を図ってから、4日が経った。「医者から、
「面会謝絶の期間が終わった」
 と教えられたので、刑事はやってきた。
「ただし、15分が限度です。それ以上はドクターストップです。それに私も一緒についていますので、もし、棄権だと思うと、その瞬間に、面会は打ち切っていただきます。いいですか、あくまでも面会としてお通しするのであって、事情聴取ではないということをお忘れなく」
 と、少々きつめに、医者はそういったのだ。
「だったら、もう少し回復してからでも」
 と刑事は思ったようだが、医者の方としても、
「ここまでは回復しても、ここからは、ほとんど変わらない日が続く。ということであれば、いつ面会してもらっても同じことだ」
 ということであった。
 そのことは、刑事にも伝えられ、刑事の方も、
「そんなに、厄介なんですか?」
 といわれ、
「そうですね、精神的なショックはひどいものです。何と言っても、中学生の女の子が、自分で毒を用意して、それを服用するということをやってのけたんですよ。それだけでも、相当な神経の痛み方をしているはず。こんなことは不謹慎だということを分かって、敢えて言わせてもらうのですが、この子は、死んでも地獄、助かっても地獄なんですよ。こんなことなら、一思いに死んでいた方が、彼女によってはよかったのではないかとまで思えるほどなんです」
 と医者がそこまでいうのだった。
 その医者は、梶原先生で、刑事も、
「若いのに、ここまでよく言い切れるな」
 ということであったが、この気持ちは、きっと、若先生と話をした時に感じたことだったのだろう。
 梶原先生には、子供の頃、苛められていたという記憶はなかった。ある意味、順風満帆で友達に関しては、恵まれていたといっておいい。
 しかも、人生の仲での節目に関しても、失敗は一度もなかった。
「高校受験、大学受験、医者の検挙の取得」
 と節目節目では、底辺んお心配などありえないほどの、優秀な成績で、やってこれたのだった。
 それを思うと、
「いつもまわりから羨ましがられるタイプ」
 であったのだ。
 しかし、彼本人とすれば、それがプレッシャーであった。なんでも、こなせて人よりいつも前にいるということは、もし何かの挫折を招いたとしても、まわりは、相手にしてくれるわけはない。
 せめて、
「ああ、あいつも人間だったのか」
 ということで、ほんの少し、親近感を得られるというだけで終わってしまうことだろう。
 そうなると、
「俺は、絶対に先頭でないといけないんだ」
 ということになる。
 それを分かっているから、
「俺の気持ちは誰にも分からない」
 という思いが一番強く、
「何か悩みがあるか?」
 と、もし聞かれると、
「このどうしようのない孤独感」
 と答えることだろう。
 実際に、高校時代に、自分のまわりにそんなやつがいた。何をやらせても、絶対に一番、彼の辞書には、
「1番か、それ以外かしかないのではないか?」
 といわれるほとであった。
 実際にその友達から、
「先頭を走る人間のとんでもないほどの無限を味わうほどの孤独感、絶対に分からないさ。どうせ、皆は、それを皮肉にしか見えないのさ。それは、俺に対して、嫉妬しかないからな。だけどな、俺から見ると、嫉妬というものがどういうものか、よくわかるのさ。それがいかなるものかということになるわけで、そこは誰にも分からない。何といっても、この俺にすら分からないんだからな」
 と、今まで見たことのない興奮でまくしたてるのであった。
 それを思うと、
「平凡な人間から上であっても、下であっても、橋の方にいけばいくほど、その先が無限にしか見えず、その恐ろしさに震え上がるということなんだろうな」
 ということであった。
「そうか、上には上の苦しみがあるんだな」
 と思うのだったが、
 その苦しみを、最近のパンデミックが示しているようだ」
 と思っていた。
「伝染病も罹ってみないと、分からないのと一緒で、人が自殺をするという気持ちも同じようなものなのかも知れない。そういう意味で、自殺をしたくなるような病気があるとしても不思議はないだろう?」
 という、おかしな意見を持っているのが、この梶原先生だった。
 梶原先生は、ある程度のところまでは、美亜の気持ちを分かっていたようだ。しかし、そこで終わりなのか、まだまだ果てし撒く続くものなのか分からない。それはあくまでも、「上下の限界が見えない」
 ということでの苦しみに似ていると分かっているからではないだろうか?
 そして、彼が思ったのは、今回の自殺が、そんな菌に犯されているからで、
「その菌に、抗うことはできない」
 という考えであった。
「逆らうということと、抗うということでは違う」
 ということを、梶原先生は分かっているようだった。
「逆らうというのは、気持ちが逆らおうということで、身体を動かす場合であって。抗うというのは、気持ちに関係なく、身体が反応して、拒絶するものではないか」
 ということであった。
 その菌には、
「抗うことはできても、逆らうことはできない」
 のだった
 それを、無理に、
「逆らおう」
 とするならば、
「そこに無理があり、その無理に今度は抗うという意識が働き、自殺のようなことを考えるのではないだろうか?」
 ということであった。
作品名:パンデミックの正体 作家名:森本晃次