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パンデミックの正体

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「病院にはあります。時には他の薬と調合することで、立派な医薬品になりますからね。ただ、毒物というのは、意外と、身近にはあるんですよ。手に入れることの難しさを考えなければ、トリカブトのようなもの、ストリキニーネのような猛毒といわれるものは、田舎に普通に生息していますからね。さらによく、探偵小説などで使われる青酸カリなどは、メッキ工場で、普通に使われているという。それよりも何よりも観賞用の植物にも、毒性の含まれているものが結構あって、例えば、スズランなどには、コンパラトキシンなる毒物が含まれていて、生けておいたその水を飲んでも中毒症状を起こします。さらには、野生のキノコなども恐ろしいですよね、しかも、食用と非常によく似たものもあるので、素人はキノコ狩りなど、危なくて仕方がないですよ。フグの毒もそうですよね。テトロドトキシンという毒が含まれていますからね。至るところに、毒物は生息しているということになる。ただそれ以上に、もっと怖いのは、同じものでも、人によって、普通の食物でしかないものが、人によっては。毒になるものもある。それが、アレルギー症状ですよね? アナフィラキシーショックといって、アレルギーがショック状態を引き起こし、死に至らしめる。しかも、アレルギー物質はいろいろなものにあって、食物だけではなく、ゴムに対してであったりする、ラテックスアレルギーというのもありますからね。スズメバチに刺されるというのも同じです。二度目に刺された時、ショック状態が起きてしまい、そのまま死に至るというものですね」
 と、先生は語っていた。
「じゃあ、どこの病院にもあるものなんですか?」
 と聞かれ、
「そうですね、普通にあると思います。うちにも当然あるので、お見せしましょう」
 と医者は言った。
「それは、もちろん、厳重な管理がしてあるんでしょうね?」
 と聞かれて
「ええ、もちろん、使用する際も、しっかり量を計測し、どれだけ、いつ誰が、どのような治療で誰に使用したということをしっかりと記載し、それを記録として残すことは、薬事法で決められていますからね」
 というではないか。
 なるほど、昔HIVなどで、
「薬害エイズ」
 という問題が出てきた時、薬事法が厳しくなり、昔とは、かなり様相が変わってきたことは周知のことである。
 病院内部では、いかに薬品、いや、薬品だけではなく、医療器具に至るまで、その処分も問題となり、いちいち報告義務が発生したりしているのであった。
 今では信じられないことであるが、
「昔は注射針や注射器などは、熱湯消毒で煮沸することで、再利用していた時期があったんだよ」
 というのである。
 今は、注射に一回使用すれば、その時点で廃棄が当たり前のことであるが、やはり、問題になったのは、かつての、
「薬害エイズ問題」
 からであろう。
 エイズというものが流行りだしたのは、今まら40年くらい前であろうか?
「致死率が圧倒的に高い病気」
 ということで恐れられた。
 下手をすると、
「罹ればほぼ死ぬ」
 といわれていた時代であり、さらに、
「同性愛者などに多い」
 というウワサが流れたことで、誹謗中傷の嵐が巻き起こったのである。
 ただでさえ、未知のウイルスが流行れば、その影響ははかり知れないものがある。それを思えば、
「エイズに罹ったお前は変態だ」
 などというレッテルが貼られるようなものだった。
 死の恐怖を味わいながら、さらに、周りからの誹謗中傷、これほど生きていることが地獄だと思えたことであろうか。
 そもそも、エイズというのは、
「体液から感染する」
 ということが分かったことで、セックスも危険視されたのだ。
 それでも、
「ゴムをつけていれば大丈夫」
 ということで、かなりそのあたりの問題は解決されたが、それだけではすまなかったといってもいいだろう。

                 世界的なパンデミック

 今回の、
「世界的なパンデミック」
 にしてもそうである。
 罹った人は、もちろん、医療従事者に対しての差別も激しかった。
 家族に医療従事者、つまり、医者であったり、看護婦がいるというだけで、
 子供だったら、
「学校に来ないでください」
 といわれたり、旦那の方も会社に行って、
「濃厚接触者は出社してくるな」
 といわれ、ひどい時には、解雇されるということまで起きていたという話を聴いたこともあったが、その真意は分からない。
 しかし、それくらいのことがあっても驚くことなどないというほど、最初の頃はその情報の錯そうもであったが、内容としても、結構でたらめが多かった。
「あるうがい薬が効く」
 などというウワサが流れると、街の薬局から、あっという間に、それこそ、一瞬にしてといってもいいくらいに、その消毒液が消えているということもあったくらいだった。
 実際にはデマだったのだが、それだけ、誰も正しい情報を掴んでおらず、デマであろうが、とにかく飛びつくという輩がいかに多いかということである。
 冷静に考えれば。
「ただのデマであればいいが、その薬を使うことで、却って死に至るということが真実であれば、どうだというのだ」
 つまり、ウワサというものは、どのような伝わり方をするか分からない。本当は、
「危ないから絶対に使ってはいけない」
 という趣旨の話が、どこでどう変わったのか、
「その薬が効く」
 という風にならないとも限らない。
 テレビなどのバラエティでよくある、
「連想ゲーム」
 という遊びであるが、
「数人に伝達するのに、その内容はコロコロ変わっていることがある」
 というものなのに、世間のウワサなのだから、何人につたわることで広まってくるか分からない。
 中には、
「あれ? 他の人から聞いた時、違う話だったぞ?」
 ということだってないとも限らない。
 特に、何の情報もない中で、
「伝染病が猛威を振るっている」
 などという情報が伝わってくると、混乱するのは当たり前だ。
 当局や政府も、
「デマに惑わされないでください」
 と言いながら、政府の情報が錯そうしているのだから、どうしようもない。
「この間、公表したことに誤りがございました」
 などというのを幾度も聴いたような気がする。
 そんな状態で、発生する誹謗中傷なのだから、それはひどいものなのだろうということは、容易に想像がつくというものだ。
「何をいかに信用すればいいんだ?」
 ということであるが、実に難しいことである。
 それを思うと、今回の、
「世界的なパンデミック」
 というものに対しても、かつて流行した、
「エイズ問題」
 も似たところがある。
「エイズ問題であれだけ、医療現場のルールが変わったのだから、今回のパンデミックでは、医療現場だけでなく、市民生活のルールも変わるだろう」
 というのが、大方の見方だったのだ。
 梶原先生が、若先生を訪ねた時のことだった。若先生にも、彼女の自殺未遂の話はきていたのだが、その話はなぜか、イシダ病院内では、タブーの状態だった。
「喋ってはいけない」
 と決まっていたわけではないが、一種の、
「暗黙の了解」
 のようで、
 その状態になったのは、
作品名:パンデミックの正体 作家名:森本晃次