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タイトルの「悪魔」

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「推理小説ブーム」
 というものが終わると、人気は当然すたれてくる。
 しかし、元々の火付け役になった作家の作品は、ブームがすたれている間でも、爆発的なブームに比べればかなり静かではあるが、何とか、底辺にまでいかずに、売れ続けていたのだ。
「ロウソクの炎が、消えそうで消えない」
 というそんな状態であろう。
 そして、
「ブームというのはサイクルがある」
 とよく言われるが、この作家の作品も、ある時期になると、またブームを巻き起こすのであった。
「いい作品は、いつになっても、色褪せない」
 と言われるが、逆に、
「古い時代の作品だからこそ、再度人気になるのだ」
 といえるだろう。
「今の時代と比較して読む」
 ということが、その時代時代を反映して、想像力という、
「小説の醍醐味」
 を自然に感じることができるのだった。
 この一連の小説に出てくる探偵は、他の探偵と同じ特徴を持ったところと、
「明らかに違う」
 というところが、共存している。
 まず、共通点としては、
「自分が好きな事件。気に入った事件であれば、依頼料度返しで、すぐに飛びつく」
 というところである。
 だから、どんなに金を積まれても、
「気に入らない事件であれば、引き受けない」
 という考えに徹底しているのである。
 だから、いつも金銭的に困っていたり、探偵事務所の人間が、
「やれやれ」
 と思っていたりしているのだった。
 ただ、それでも、本気で嫌なわけではない。あくまでも探偵をリスペクトしているからこそ、事務所でずっと働いているのである。
 あくまでも、
「呆れながらも、探偵の人間性を好きでなければ、やっていられない」
 ということである。
 この探偵と比較される、もう一人の巨頭と言われる探偵がいた。その探偵の活躍時期は、
「戦前の頃」
 ということであるが、その作家の性格と、戦後の探偵の性格とが酷似しているのであった。
 というのは、
 戦前の作家は、作品が出来上がって、それが映画化されたりして、人気が出たとしても、自分の中で納得していなければ、自己嫌悪に陥るのか、1年以上出奔してしまうことが多いという。
 出版社としては、
「せっかく人気が出ているのに、今のうちにたくさん作品を世に出す」
 と思っていたものが、作家が行方不明では、どうなるものでもない。
 ただ、その作家の場合は、出奔してから戻ってきて、最初に書いた作品が、本人も納得する作品で、世間からも認められ、ベストセラーになったりしている。
「彼の代表作と言われるのは、行方不明になってから、帰ってきてから書いた作品ばかりではないか」
 と言われるようになった。
 そんな作品は、今でも。地道に人気があり、結局、絶版になることもなく、今でも大きな本屋では、そのほとんどが、並んでいるくらいであった。
 ただ、戦後の代表的な探偵の方も、戦前の作家と似たところがあった。
「ああ、あの作家のリスペクトですよ。本人には話をしています」
 ということであった。
 もっとも、この作家は、戦前は、出版社で編集長をしながら、自分でも作品を書いているというような作家だったのだ。
 だから、二人は知り合いであり、悩みを聞いたりするくらいの仲だったというくらいである。
 だから、戦後の探偵の外見は、実は、戦前の探偵の初期の姿そのものだった。
 最初の頃は、設定が大学生で、当時、大正時代だったこともあって、いわゆる昔の、
「書生姿」
 というものであった。
 それこそ、夏目漱石の、
「坊っちゃん」
 に出てくるような、羽織袴と言えばいいか、そんな姿だったのだ。
 だが、戦前の探偵は、最初こそ、そんないでたちだったのだが、それは、
「あの探偵は一作品だけにしようと思っていた」
 ということだが、どこからそう思うようになったのか、その後の作品にも登場するようになった。
 ただし、同じ探偵ではあるが、最初は、探偵ごっこに近かったのだが、再登場してきた時には、
「探偵事務所を持った、素人探偵」
 ということで、前の作品を知らない読者には、
「新しく登場した探偵」
 として映ったかも知れない。
 その時には、背広にネクタイ、パリっとした清潔感のある探偵に変わっていた。
 自分から、どんどん行動していくタイプで、得られた証拠や状況を加味し、犯人を追い詰めていくというところが売りであった。
 だが、戦後に登場した方の探偵は、様相こそ、羽織袴に、ボサボサ頭というところであるが、頭脳明晰で警察が迷宮入りした事件を次々に解決するという探偵だったのだ。
 時代背景なのか、作者の好みなのか、事件は、東京以外でも、田舎の旧家で起こることが多かった。
 というよりも、代表作が、そういう作品に集中しているということで、作家が戦争中に、疎開していたことから、田舎の旧家であったり、
「血のつながり」
 というものに、異常なまでの意識があったに違いない。
 だからこそ、やけに、
「近親相姦もの」
 が多かったり、
「父親の秘密」
 なる話が多かったりした。
 都会の方の作品では、混乱した時代を反映するかのように、
「ドロドロした犯罪が多い」
 今のラブホテルのような、いわゆる、
「連れ込みホテル」
 で殺されていたり、犯罪の中に、SMであったり、猟奇殺人などと言った、
「変格探偵小説」
 を思わせるものがあり、そこに耽美主義が結びついてくることで、まるでオカルトっぽさが滲み出ていたりした。
 しかし、実際に謎解きになると、本格探偵小説というべき、
「トリック重視」
 の作品に変わっている。
 この探偵は、最初から理論立てて考える方であり、決して、犯人を追い詰めたりということはしない。
「彼ほど、人間らしい探偵はいないのではないか?」
 ということで、羽織袴を着せたのも、そのあたりに思惑があったのではないかと思うと、感慨深いものがある。
 その彼には大きく分けて、2つの性格があった。
 まず、一つは、
「実は、躁鬱症の気がある探偵だ」
 ということであった。
 というのも、
「彼は、自分の好きな事件には前のめりで進んで入り込んでいくというのは、前述のとおりだが、実際に事件がクライマックスを迎え、犯人を指摘し、絶頂を迎えた瞬間、急に冷めてしまうところがある」
 ということであった。
 いわゆる、
「賢者モード」
 といってもいいだろう。
 それまであれだけ、自分の独壇場だったのに、犯人を指摘して、実際の逮捕ということになると、そのあたりから、一気に冷めてくる。
「もう、ここから先は、自分の仕事ではない」
 と言いたいのだろう。
 それが、彼の一番の性格であり、これも、
「一番人間臭い」
 と言われるゆえんだろう。
 これはやはり、
「戦前の作家の性格をそのまま拝借した」
 といってもいいだろう。
 しかも、その作家は、結構その探偵のプライバシーを書いたりしている。
 ある作品では、朝食のラインナップを書いたりしていたが、たぶん、そのあたりは、ひょっとすると、
「字数稼ぎ」
 なのではないか?
 と思うが、それだけではないだろう。
 さて、その作家のもう一つの特徴は、
「犯罪防御率が悪い」
 ということだ。
作品名:タイトルの「悪魔」 作家名:森本晃次