タイトルの「悪魔」
探偵小説というのは、西洋から入ってきたというイメージがあるが、その通りであり、
「シャーロックホームズ」
などと呼ばれる探偵が事件を解決するということから、
「探偵小説」
と呼ばれていたのだ。
探偵小説と言われるものが、日本でも、戦前、戦後にはよくあった。
さすがに、シナ事変が始まってから、大東亜戦争が終結するくらいまでの間、
「当局による、出版規制」
というものが行われていたりした。
シナ事変が勃発すると、それまでの満州事変以降の、
「満州国建国」
に対して、国際連盟が、
「日本による、自作自演」
ということを、調査団の報告から位置付けてしまったことで、満州国の承認を加盟国で多数決を取ったところ、
「反対が日本、棄権が二か国」
という以外は、すべて、賛成ということで、
「満州国を承認しない」
ということに決まったことで、日本は、国際連盟を脱退し、孤立の道を選ぶことになった。
そんな時代に、国内でも、クーデター未遂事件や、要人の暗殺などと、物騒な時代へと入り、陸軍が、北京で中国側と戦闘状態に陥ったことで、もう、後には引き下がれなくなってきたのだった。
特に、欧州で侵略戦争を繰り広げる、ファシスト党イタリア、ナチス・ドイツなどと同盟を結んだだけでも、列強を刺激したのだから、そこへもってきて、欧米列強が大きな影響力を持っている中国と戦闘状態に陥ったとなれば、欧米列強も黙っているわけにはいかないということである。
大東亜戦争に突入し、その後、軍の統制の元、情報統制が行われていた時代は、
「探偵小説のような、俗っぽい小説は発刊を許さなない」
ということで、恋愛小説などと一緒に、発刊が禁止されたことで、数年間は、
「暗黒の時代」
だったといえるだろう。
昭和20年に入り、アリアナ諸島が占領されたことで、日本本土の主要都市ほとんどが、空爆範囲内となったことで、無差別爆撃が始まる。
そんな時代において、
「明日、命があるか分からない」
と言った時代を乗り越えて、いよいよ、無条件降伏を受け入れることで、戦争が終わるのだが、あくまでも、
「空から焼夷弾が落ちてこない」
「戦闘が終わった」
というだけで、混乱は、その後も続く。
何と言っても敗戦国。国内では食料も住むところもなく、さらには、占領軍は進駐してくることで、
「何をされるか分からない」
という状態だったのだから、当然であろう。
国内以外はもっと悲惨だった。
満州に移民した人、中国大陸の居留民などは、ソ連が進駐してきたり、中国人からの迫害や、虐殺などが、平気で行われていた。
満州は本当にひどく、捕虜となった人たちを虐殺したり、シベリアに抑留し、
「強制労働に従事させる」
などということが、平気で行われているのだった。
満州国の建国目的に、
「食糧問題」
というものがあっただけに、戦前は、
「できるだけたくさんの人間を満州に送り込む」
ということが、必須だった。
それだけに、満州では、日本人や、朝鮮人がさぞかし多かったことだろう。
当然、それらの民族が迫害を受け、狭いところに収容され、悪辣な環境の元、隔離されたりしていたことだろう。
当然、虐殺も行われ、有名なとことで、終戦前に、満州国の首都を、新京から、通化に移していたが、捕虜をそこに集められ、大量虐殺が行われたという事実もあるくらいだ。
相手はソ連の赤軍と、中国の八路軍と呼ばれる過激な軍である、
ほとんどの人は虐殺されるか、シベリアに送られるかで、中には日本に帰国できた人もいただろうが、
「まだソ連の支配よりも、マシ」
というだけで、結局は占領されているわけで、何も立場が変わるわけでもなかった。
食料もなく、ハイパーインフレで、物価は、天文学的な数字になり、もはや、
「金銭は紙切れ同然」
とまでなり、食料を得るには、
「田舎に行って、物々交換」
ということになるのだった。
しかし、田舎の人も、都会から持ってくるものは皆同じで、同じようなものをそんなにたくさんもらっても仕方がない。次第に売ることもしなくなり、さらに、食料がなくなってくる。
「国からの配給だけで生活をする」
ということを貫いて、結果、栄養失調で死んだ、いわゆる、
「悪行を許さない、勧善懲悪」
という考えを持った人がなくなる時代である。
さらに、国のインフレ対策として、
「新円の切り替え」
という政策を打ち出した。
「今持っている金は、使えない。両替できる額も決まっている」
ということで、
「いくら、十万円持っていたとしても、実際に交換できるのは、千円まで」
というようなことをするのだから、残りは、本当に紙屑でしかなかった。
あまりにも荒っぽい政策で、景気がよくなるわけもないのだが、日本にとってよかったのは、
「朝鮮戦争の勃発」
だった。
朝鮮戦争の特需で、景気がある程度戻ってきて、そのおかげで、少し余裕ができてきたことで、復興に拍車がかかったのだ。
昭和30年代に入ってくると、だいぶ景気もよくなって、戦後復興がほぼ軌道に乗り、日本は、好景気によって、奇跡的に復興できたのだ。
ある探偵
そんな混乱の昭和20年代から、30年代にかけて、探偵小説も、
「復興」
してきたのだった。
特にそれまで抑圧されていた状態が、戦後復興により、ストレスも解放され、時代に即した、
「おどろおどろしい小説」
がウケたりした。
しかし、それは、最初のプロローグの部分であり、後半になればなるほど、トリックを駆使したストーリー展開に、胸躍るというものが多くなった。
その作家の作品は、令和の今でも人気があり、平成の頃、
「昔の小説は時代遅れということで、本当に売れるもの以外は、本屋には置かない」
という時代がやってきて、さらに、2000年代に入ると、
「絶版」
という状態にまで追い込まれていたりした。
だが、その作家の小説は、
「不死鳥」
のようなところがあった。
元々は、昭和50年代前半に、急に爆発的な人気が出てきたのだ。
そもそも、この作家の作品は、それまでにも何度も映画化やドラマ化をされてきた。
探偵が個性的な探偵だったので、それがウケたのだろう。
結構探偵小説というのは、戦前にも映画化されたりしたものだが、
「爆発的な人気」
というところまでは行かなかったのだ。
ただ、昭和50年代のブームの時には、バックアップをしたのが、出版社であり、出版社が、
「社運を賭けて」
というくらいに、力を入れての映画化だったのだが、それが、大人気を博したのであった。
おかげで、その他のこの作家の作品も、他のジャンル。
「社会派推理小説」
であったり、まったくジャンル違いの、
「学園、青春もの」
なども、すべてがヒットした。
そのおかげで、
「推理小説ブーム」
が到来したのだった。
有名な作家だけではなく、人気のある作家。あるいは、
「トラベルミステリー」
などの、作家独自のオリジナリティの先駆者は、爆発的に売れ、一発屋というわけではないのだった。
だが、それらの作家も、合わせて、