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タイトルの「悪魔」

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 だったようで、刑事が、店の名を聞いた時、そういえば、ビクッと反応したような感じがしていたのを思い出していた。
「実は、この男というのは、このビルとまったく関係のない人ではなかったんだよ。というのは、この人の身元は、建設会社に勤務する人で、そこの課長さんをされている方なんですよね?」
 と、浅倉刑事が言った。
「じゃあ、ここのビル建設の関係者だとおっしゃるんですか?」
 と聞くと、
「そういうことになりますね」
 と浅倉刑事がいうのだが、
「でも、よく刑事さん、その人の名刺や免許証だけで、身元は分かったのかも知れませんが、よく、このビルの関係者だということが分かりましたね」
 というと、
「さすがに、あなたは敏い方だ。確かに、それだけでは、このビルと、被害者の関係を結びつけるには、無理がありますよね? でも、被害者が勤めている会社というのは、少し曰くありげな会社でしてね。いろいろな会社や土地に首を突っ込んでは、ところどころで、問題を起こしているようなんです」
 それを聴いて、
「まるで、迷惑ユーチューバーのような類になるんですかね?」
 と聞きなおすと、
「うーん、そのたとえが、的を得ているかどうかということは難しいかも知れませんね」
 というではないか。
 浅倉刑事がそういうと、今度は桜井刑事が補足する形なのか、その後を引き継いだ。
「私がさっき、あなたに、この人を知らないか? と聞いたのは、先ほどまで飲んでいたという飲み屋ですがね? あそこの土地の、いや、あのあたりの駅前横丁付近の土地も、この被害者が勤めていた会社が狙っているあたりだったんですよ、それで、この男の立場からいうと、偵察に行っていたとしても、不思議はないくらいですからね」
 という。
「この人の立場というと?」
 と聞くと、
「どうも、企画部の係長をしているようだったので、偵察要因としてちょうどいいくらいではないかと思ってですね。ひょっとすると、一人で隅の方で呑んでいても、不思議がないような気がしたんですよ。でも、実際に店で飲んでいると、明らかに違和感がありそうで、そうであれば、記憶にも残るのではないかと思って聴いてみたんです」
 と桜井刑事がいうのだった。
「なるほど、そういうことであれば分かる気がしますね。でも、私には記憶がないですね。少なくとも、ここ数年は、皆さんだってお分かりになるとは思いますが、あんな伝染病が流行っていれば、わざわざ酒を呑みに行こうなんてなかなか思いませんよね? だって、馴染みの人がいるとは限らない。むしろ、皆この自粛ムードの中で、わざわざ酒を呑みにいくようなやつはいませんからね」
 と大谷は答えた。
「そうですか。いや、それはそうでしょうね。真面目にルールやモラルを守っている人に、これ以上は失礼にあたりますからね」
 と桜井刑事は答えた。
「そんな難しいことは、私には分からないですよ。とにかく、本当に久しぶりに今日行って、以前からの仲間と出会えたことだけで嬉しくなって、それでこんな時間になったんですからね」
 と、もうすでに。終電もなくなって、帰ることができなくなったことで、
「こんなことなら、第一発見者にならなければよかった」
 と、警察に実際に嫌気がさしていたのだった。
 この日は、これ以上の話ができるわけではなかったが、警察から解放される形で、
「今日はどうもありがとうございました」
 ということで、大谷は、その日は、
「お役御免になった」
 ということだが、このまま家に帰れるわけでもないので、しょうがなく、近くのビジネスホテルに泊まることにした。
 普段なら、カプセルホテルということもありなのだが、アルコールが入っているので、正直カプセルホテルはきつかった。
 何がきついといって、
「カプセルの中は、微妙に暑い」
 と思っていた。
「きっと空気が循環しないからだろう」
 という思いがあり、その原因は、
「あの必要以上の圧迫感にある」
 と思っていたのだった。
 その暑さは、汗が滲んでくるもので、この季節は、さすがに夜になると、寒さを感じるようになるので、カプセルの中は暑くても、通路に出ると、とたんに暑さを感じさせる。
 ただ、カプセルホテルのいいところは、
「広い風呂がついている」
 ということである。
「そもそも、サウナから始まった店も多いくらいで、カプセルなどは、後からできたおまけだ」
 というところも多いようである。

                 サウナの客

 サウナであったりカプセルホテルは、駅前にあるわけではなく、少し離れたところにある。主要駅から歩いて、5〜10分くらいのところに、実際には3軒ほどあり、ちょうどその奥には、昼間はアーケードを設けた商店街があり、その少し外れたところが、飲み屋街であったり、風俗街などがあり、
「一大歓楽街」
 というものができていた。
 駅前は再開発が進んでいるが、このあたりは、まだまだ一気に開発というところまで至っていない。飲み屋あたりは、雑居ビルになっていて、ワンフロアに3軒くらいの飲み屋が乱立しているようなところが多く。地上5階。地下1階というビルが平均ではないだろうか?
 昔は、週末ともなると、午前0時を過ぎても、まだまだ歓楽街のネオンは消えることはなく、人の出入りも激しかった。
 もっとも、性風俗地帯は、風営法において、
「深夜時間帯の営業は禁止」
 ということになっている。
 性風俗における風営法での、
「深夜時間帯」
 という括りは、
「午前0時から6時まで」
 ということになっているのだ。
 実際の効力を持つのは、風営法ではなく、都道府県の条例である。特殊浴場などの縛りは、県庁所在地によってまちまちで、特に店を出せる範囲は固定されていることが多い。県によっては、
「特殊浴場を県内に建設してはいけない」
 ということになっているので、法律が変わらない限りは、建設はありえない。
 しかも、特殊浴場は、
「新規参入を許さない」
 という決め事が風営法で決められているので。店舗の大規模改修も許されないのだ。
 条例というのは、
「風営法を厳守したうえで、都道府県の都合で制定することができるものであり、その効力は、条例に依存する」
 というようなことになっている。
 つまりは、風営法が基礎となって、条例を定めるというのが、性風俗業と取り締まる法なのであった。
 カプセルホテルは、その日、そこまで人がいっぱいではなかった。半分くらいの客がいるくらいではないかと思われたが、お腹が減ったので、食堂のある階で、うどんを食べようと思ったのだ。
 店内はガウンでの移動で、ロッカーのキーがそのまま会計にも直結していて、財布を持ち歩かなくてもいい仕掛けになっていたのだ。
 一応、ビジネスホテルは予約を入れていて、まずは、腹ごしらえだった。深夜開いている店もあるにはあったが、なぜ、サウナを選んだのかというと、
「食事と一緒に、大きな風呂に入れる」
 からだった。
 食事ができる店もあるにはあるが、最近は、また夜の街の人が増えてきて、特に飲んだ後の、
「締めのラーメン」
 ということで、店が満員ということもありえるだろう。
作品名:タイトルの「悪魔」 作家名:森本晃次