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死体発見の曖昧な犯罪

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「まずは空爆から入って、制空権を握り、そこから地上部隊を展開させる」
 というのも、電撃作戦から来ているといってもいいだろう。
 日本軍にしても、そうである。
 たとえば、海軍における、
「機動部隊」
 の作戦など、まさにそうである。
 当時は、まだまだ、
「巨艦一騎打ち」
 というべき、主砲による威力で相手を圧倒するというのが、海軍の戦いとして、当たり前のことと言われてきた。
 しかし、日本軍は、真珠湾攻撃において、
「相手が停泊している艦隊ということで、航空機による雷撃作戦」
 が取られたのだ。
 機動部隊による作戦というのは、空母を基本として、艦載機が飛び立ち、相手の艦隊を雷撃にて攻撃するというものだ。
 ただ、真珠湾の場合には大きな問題があった。
 それは、
「水深が浅い」
 ということで、そもそもの魚雷は、
「一度着水すると、しばらく沈んで、ある程度のところから推進力を使い、浮かび上がって、相手の艦艇を破壊する」
 ということであった。
 しかし、真珠湾の場合は浅すぎて、普通の爆撃であれば、魚雷はすべて、海底に突き刺さるということになる。
 それを解決したのが、
「日本の科学力」
 と、
「熟練パイロットによる訓練のたまもの」
 であったのだ。
 それらの作戦が見事に的中し、さらに、真珠湾ではまったくの奇襲であったことが幸いだった。
「ルーズベルトがハワイに警告していなかった」
 というのも、その一つで、これも、彼の欺瞞であっただろうが、何よりも、
「真珠湾で雷撃は不可能」
 ということで、ハワイ側に、
「まず、攻撃はありえないだろう」
 という思いがあったのも事実ではないか。
 ただ、これが、いくら離れているとはいえ、ハワイというと、アメリアの50番目の州である。
 つまりは、
「本土爆撃」
 といってもいいだろう。
 それまでアメリカは、本土爆撃などされたことがなかった。
 それを思うと、アメリカとすれば、屈辱であり、
「リメンバーパールハーバー」
 と呼ばれたのも当たり前のことであった。
 だが、これが、
「眠れる獅子を起こしてしまった」
 ということが痛恨だったのだろう。
 その頃から、世の中は戦時色が強まってきた。食料も、配給制となったり、次第に自由が束縛されていく。反社会的勢力ということで、共産主義や政府批判を行っている連中に対して、完全に敵対するものとして、特殊高等警察。つまり、
「特高」
 と呼ばれるものが、幅を利かせ、世間を黙らせるという任務を負うようになった。
 完全に、民主主義とは正反対の体制であった。
 まだ、大東亜戦争が始まる、
「真珠湾攻撃」
「マレー上陸作戦」
 のあたりは、そこまでひどくはなかったのだろうが、日本が劣勢になりかかった、ミッドウェーからこっちは、次第に、
「戦争に関係のないもの」
 あるいは、
「精神が堕落する」
 と考えられるようなものは、ほとんどが禁止になった。
 特に本などでも、探偵小説なるものは、発刊を許さないどころか、今まで発売されていたものも、絶版となるような時代だった。
 今から思えば、
「そんなことをしている暇があるのか?」
 と真剣に考えるが、あの当時とすれば、少しでも、国民の気持ちが離れてしまうと、戦争遂行が難しくなると、軍は、真剣に考えていたのだろう。
 ちなみにいうと、当時の大日本帝国という国の体制として、
「軍と政府は、まったく別のものだ」
 ということであったのだ。
 そもそも、軍というものは、大日本帝国の中にある、
「天皇大権」
 という項目に、
「天皇は陸海軍を統帥す」
 という言葉があるのだ。
 つまりは、
「日本における軍隊は、天皇直轄の機関であるため、政府には口出しができない」
 ということである。
 要するに、戦争を行うための機関として、普段は陸海軍と別れているものを、
「戦争における。本陣」
 という位置づけのものに、
「大本営」
 というものがある。
「大本営発表」
 というのがそれであり、それぞれ軍の、
「○号作戦」
 なるものを知っているのは、軍内部の一部の人間と、天皇だけだということになるだろう。
 だから、政府は軍がどんな作戦を立てていて、実際の被害がどれほどのものであるかなどということは、大本営が発表するものでしか知る由もなかったのだ。
 当時の日本が、負け続けても、
「日本が勝っている」
 という宣伝をさせたのは、あくまでも軍による、
「情報統制」
 であり、政府は何も知らないというのが事実である。
 当時の首相であった東条英機でさえ、ミッドウェイの惨憺たる敗戦を知ったのは、半年後だったというではないか。だから東条は、軍の作戦に参加できるための。参謀総長への就任を、陸軍大臣と兼ねるということを天皇に上奏した。今までは、条文化はされていないが、
「権力の集中を恐れて、慣習的に兼任はできないということになっていたものを、天皇に、戦争責任者として、軍を掌握できないというのは何もできないのと一緒だということで渋々認めさせた経緯があった」
 これにより、東条英機は、軍関係者から命を狙われることになったのであった。

                 続探偵小説談義

 東条英機の時代が一番ひどかったのだろうが、とにかく、日本は、終戦までは、完全に情報統制も行っていたし、陸軍などは、真剣に、フィリピンや、アリアナ諸島が落ちて、沖縄戦が間近に迫り、さらに、アリアナ諸島からであれば、B29における、航続距離が、日本本土の主要都市が、ほとんど空襲範囲内に入るということが分かっているにも関わらず、真剣に、
「本土決戦」
「一億総火の玉」
 などという言葉で、完全に、すべての都市で、玉砕を考えていたのだろうか?
 確かに、日本は他の国とは違い、相手に降参する場合には、日本独特の、
「国体」
 というべき、
「天皇制」
 というものが存在した。
 だから、日本は簡単に降伏してはいけない。今までの日本の歴史は、すべて天皇によってつくられた、
「神の国」
 という言われ方をしていたのだった。
 なるほど、日本という国は、天皇中心の国家として成り立たないといけなかった理由があった。
 というのは、幕末において、幕府が弱腰外交で、最初は攘夷を真剣に考えていた志士たちであったが、途中から、
「幕府に政権を任せておけば、日本という国は、諸外国の植民地にされる」
 ということで、まず、
「幕府を倒す」
 ということが、先決であった。
 そして、
「天皇中心の新しい世界を作ることで、世界から侵略されないようにする」
 という名目で明治という時代が始まったのだ。
 だから、国民も、天皇中心の世の中だから政府や軍についてきたのだ。
 それが、本土が焦土になってやっと、降伏するということになり、やってきた占領軍も、天皇の戦争犯罪をどうするかでかなりもめたようだった。
 とりあえず、戦犯を裁いて、その後の天皇に責任なしということにすることで、占領をやりやすくしたという点では、正解だったのかも知れない。
 そういう意味で、日本という国は特殊であり、それだけ、大きな問題を孕んでいたのだろう。
 そして、日本という国が、
作品名:死体発見の曖昧な犯罪 作家名:森本晃次