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違和感による伝染

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「自分のまわりにいる人たちも、時と場合によって、敵にも味方にもなれるに違いない」
 といえるであろう。
 だから、
「他人なんだから、俺には関係ない」
 と突っぱねるような考えをせずに、まわりのことを考えておかないと、結果、自分にブーメランとして戻ってくることになるかも知れないのだった。
「だが、相手に非がなく、正しいのは明らかである」
 ということが分かれば、身動きのできない状態で、下手に動いてもいいのだろうか?
 と思うのだ。
 そこで身動きが取れなくなる人には、
「気が付けば逃げに入っていた」
 というような、
「無意識の逃げ」
 というものがあるに違いない。
 それを思うと、余計なことは言えないのであって、いかにどの方向に、遊び部分としてのニュートラルを作っていかないといけないということになるのであろう。
 そんなことを考えていると、最初こそ、会社で定時近くの時間から、最終に間に合うくらいまでの時間を過ごすかということに集中しなければいけなかった。
 時間にして、午後七時くらいから、最終電車の発車時間から逆算すると、大体会社を午後11時くらいまではいなければいけない計算になる。
 残業しての4時間くらいだと、それほどのきつさはない。最初の一週間はm想像以上にきつかったのだが、それからは慣れてきたのか、さほどでもなくなっていた。
「残業の4時間とそんなに変わりはないかな?」
 というくらいになり、2週間が過ぎると、今度は一気に疲れが襲ってくるのか、
「虚脱感が、ハンパない」
 と思うようになってきた。
 正直、毎日熱を測っていたのだが、その頃になると、体温が、それまでより1度近く高くなり、それまでは、15度台だったものが、36度台後半を示すようになり、明らかに熱っぽさを感じるようになったのだ。
 身体がほてってしまい、疲れが感じられるようになった。まるで、
「眠たいのに眠ることができないかのような、指先が痺れ、身体の重たさがまるで石のようであるのを感じさせ、眠っているのか、起きているのか、意識がなくなってしまったかのよう」
 だったのだ。
 そんな状態で、会社に行くのも億劫になってきた。そのくせ、
「会社の人とは逢いたい」
 という不思議な感覚に襲われた。
 もちろん、その上司とは顔を合わせるのも恐ろしく、近くを通っただけでも、身体に悪寒が入り、吐きそうになるのを感じるのだ。
 それなのに、他の社員に遭いたいと思うから会社にも来れるのだった。
「まさか、他の人が今のこの苦しみを救ってくれるはずはない」
 ということは分かっている。
 だが、
「他の人に逢いたい」
 と思うことで、何とか会社に来ることができるのだ。
 もしそう思わなければ、きっと引きこもりになっているだろう。
 ひょっとすると、会社の総務が、連絡をくれるかも知れない。だが、その時は、
「解雇通帳」
 であり、完全に自分が、
「出社拒否」
 をしていることで、業務遂行が判断ということで、
「懲戒解雇」
 ということになっても、無理もない案件だ。
 上司に、
「佐藤君がなぜ出社してこないということを君は知っているのか?」
 と聞かれたとすると、
「いいえ、知りません」
 と答えることだろう。
 それ以上のことを答えると、自分が苛めたためだということを白状するというもので、上司が苛めたという自覚がない以上。総務部からいわれる前に、上司として、連絡の一つもあっていいだろう。
 きっと、
「連絡もしてこないようなやつは、社会人失格だ」
 とでも思っていて、今までの所業には悪気がなく、あくまでも、
「部下への教育だった」
 と思っているかも知れない。
 もし、そうだとすると、上司には、
「これから連絡してくることはないだろう」
 という思いしか浮かんでこなかった。
 その期間、佐藤はずっと黙って、家で引きこもっていただけではない。
 最初の3日間は、体調不良ということで連絡をしたが、そこから、一週間近くは、完全に、無断決起印であった。
 だが、確かに最初の3日間は、体調も悪く、実際に発熱もしていたので、体調が悪かったというのも、まんざらでもなかったのだ。
 だが、そこからの一週間は、体調も治り、精神状態がしっかりさえしていれば、会社に赴くことができた。
 しかし、4日目会社に行こうと家を出て、今までのように駅までいったのだが、駅を出てからというもの、身体が、まったく動かなくあり、降りるはずの駅で降りれなかった。一緒の金縛り状態だったといってもいいだろう。
 そして気が付けば、降りたこともない駅で降りていた。
 というか、そこが終着駅だったのだ。
 もちろん、初めて乗った数着駅、
「こんな寂しい駅だったとは、思ってもいなかった」
 といえる駅だったのだ。
 駅前は、寂れている。
 というよりも、昔の佇まいが残ったままで、開発から遅れてしまった駅だといっても過言ではないのだ。
 寂れた駅前には、お約束といってもいい、ロータリーと、その先には、アーケードが昔のままの商店街があった。
 今の商店街でも、老朽化したからといって、建て直したはいいが、そこから、客はおろか、電車に乗る人さえもが、まばらに感じられる駅前の風景画思いだされた。
 それも、電車に乗る人は確かにいるのだが、結局駅前からバスにのって、住宅街に引きこもった形の家に住んでいる人が、商店街を通らずに通勤しているということになるのだった。
 そんな商店街と、その商店街のイメージが時系列で交錯したことで、この終着駅の商店街が、映えて見えるのは、面白い感覚だった。
 思わず、
「今日はここで過ごそうか?」
 と考え、会社に行く気もしなくなったのだ。
「会社には明日行けばいい」
 と考え、上司のことも頭から離れていた。
 この不可思議な、
「時代が交錯した」
 といえる雰囲気の中で、商店街を見ていると、商店街の奥に見えている明かりが、自分を呼んでいる木がした。
 その明かりというのは、ちょうどその先に児童公園があり、そこに、日の光が当たったことで、ちょうど、こちらに反射した明かりが見えているだけだったのだが、その偶然が、あたかも自分を誘ったのだ。
 最初から、その光が、太陽の光で、反射したものだということが分かっていたのだ。
 分かっているから、余計にその偶然に魅せられたと言えばいいのか、見えている明かりが、すでに分かっている偶然が、自分を呼んでいると思えてならなかった。
 公園に行くと、誰もいなかった。
 いないにも関わらず、ブランコが揺れていて、まるで誰かが乗っているかのように見えることで、震えに襲われる。そして、襲われたその震えを感じたそのちょうどの瞬間に、フッと風が吹き抜けていくのだった。
 しかも、何か生暖かい空気が感じられ、その暖かさが、腰から吹き抜ける風によって、膝に急な痛みが感じられた。
「この痛み、最近、無性に感じるような気がするな」
 と、まるで懐かしいと思うくらいんおその痛みに、どこからくるものなのかがすぐには思いだせないことを、不思議に感じていた。
 そのわりには、この駅に着いてからの、想像やイメージが、すべてに繋がっているかのように思えたのだ。
作品名:違和感による伝染 作家名:森本晃次