小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

マルチリベンジ

INDEX|7ページ/22ページ|

次のページ前のページ
 

 という、一種の折衷案が示され、実際に、その通りに、トレードで、意中の球団に移ったのだが、その時のトレードとなった投手は、もちろん、エース級のピッチャーで、騒がれはしたが、そのピッチャーは古巣相手に、力投し、確か、20勝をしたのではなかったか?
 元々のチームにいれば、そんなに勝てるわけはなかった。そういう意味では、
「ある意味。どちらのチームも得をした」
 といってもいいかも知れない。
 プロ野球球団として、世間を騒がせたのはまずかっただろう。特に最初に、
「空白の一日」
 などを持ち出して、強引に契約を結んだというのは、あきらかに、
「火事場泥棒」
 といってもいいだろう。
 しかし、この問題は、そんな簡単な問題ではなかった。
 そもそもの、
「ドラフト会議」
 というものの欠点であったというのももちろんだが、それよりも、
「行きたい球団に行けない」
 ということが、
「一番の問題だった」
 ということであろう。
 本当に最初、ドラフト会議が始まった理由ということを考えれば、それも仕方のないことだったかも知れない。
 そもそもの理由というのは、ドラフト導入までは、入団選手と球団は、
「自由契約」
 となっていて、
「球団のスカウトが声をかけ、選手が承諾すれば入団できる」
 というものであったが、それが、どういうことを招くのかというと、
「金のある球団に選手は入りたいだろう」
 ということである。
「金に物を言わせて、いい選手を集めてくる球団がある」
 そして、その球団と金銭交渉で負けて、取れる選手は、そこまで有名選手ではないということになり、
「強いチームはどんどん強くなり、金銭的にも裕福になっていくが、そうではないところは、どんどん弱くなってきて。球団も貧乏になる」
 ということで、戦力の差が歴然としてきて、
「強いチームと弱いチームがハッキリ分かれて、プロスポーツとして面白くない」
 ということが一つの理由だったのだろう。
 ただ、これは、どちらかというと表向きの理由であった。
 これは野球協会側からの意見であるが、
「逆に、球団経営者側にも、もっと切実な問題」
 というものが起こってきたのだ。
 というのも、
「有名選手というのは、セリに掛けられた魚のようなものだ」
 といっていいかも知れない。
 つまり、選手に対して、球団から契約金や年棒が示される。すると、他の球団が、さらに高い値段で競り落とそうとする。しかし、また他の球団が……。
 ということで、どんどん音が吊り上がっていくということだ。
 ということは、それだけ、選手に対しての相場というものが、どんどん吊り上がっていくということである。
 最初は契約金が、2千万くらいであったものが、数年後には5千万になり、次第にどんどん膨れ上がって一億になるということで、球団側も一人の選手にそこまで値を上げると、他の選手の手前、年棒も引き上げないといけなくなる。
 すると、野球界全体の年棒が跳ね上がり、結局、にっちもさっちもいかなくなる。
 だから、ドラフト会議というもので、
「年棒や契約金の高騰を抑えよう」
 という理由があったのだ。
 これは、球団側にもメリットのあることなので、ドラフト会議というものの導入には、さほどの反対はなかったかも知れない。
 しかし、そうなると、
「選手は、好きな球団を選べない」
 ということになる。
 自分の運命を、指名球団が意中の球団一球団であれば問題はないのだが、いくつもの球団が名乗りを挙げ、しかも、意中ではない球団が引き当てれば、
「自分の運命はくじで決まるのか?」
 ということになる。
 しかし、就職活動でも、大企業であったり、人気企業から、複数の内定をもらうというようなもので、それだけ、認められているというだけでも、羨ましいことなので、
「意中だろうがなかろうが、プロ入りできればいいではないか」
 という人もいるだろうが、選手の寿命などにおいて、理解のある球団であればいいが、そうでもない球団であれば、こんなにつらいことはない。
 やはり、
「くじで決められるというのは……」
 と思うに違いない。
「今まで、自分はそれだけの努力をして、結果を出してきている」
 という自負があるだろうからである。
 そんなドラフト会議で、戸次は、8球団からの競合の中で、くじで引き当てたのが、
「東鉄フェニックス」
 というチームだった。
 関東の球団で、千葉県北部の方にあり、東鉄という鉄道会社が、スポンサー会社で、他にも百貨店や、不動産業といった、私鉄がやっている球団としては、普通のところであった。
 しかし、今の時代、
「私鉄会社が、プロ野球の球団を持つ」
 というのは、正直ビックリさせられた。
 元は、新聞社がオーナー企業だったのだが、新聞社、出版社関係は、正直、その性質から、電子書籍や、ネット新聞という形でしか営業もできなくなり、本屋も減ってきたことから、
「昔のような経営ができず、業務の縮小を余儀なくされることから、どうしても、球団を手放す」
 という状況に追い込まれることになっていたのだ。
 元々、プロ野球球団というと、一番多い時などは、半分近い球団の親会社が、鉄道会社だということだった時代があった。
 後は、食品関係、新聞社、そして映画関係などもあった。
 さらに私鉄会社で球団を持っているところは、そのほとんどが関西だったというのも特徴だっただろう。
 それが、ちょうど、時代が昭和から平成に移った頃で、それも、国鉄が民営化された時代ということも偶然なのか、私鉄が親会社の球団の身売りというのが、頻繁に行われたりしたものだ。
 身売りした相手は、スーパーだったり、リース関係の会社と、それまでにはまったくなかった業種だったので、少しビックリもしたものだ。
 だが、時代が移ってきて、今度は、さらに、IT関係が増えてくると、
「時代の移り変わりの激しさ」
 というものを感じるようになった。
 もし、プロ野球というものが30年先にも存在していれば、
「一体、どういう企業が親会社として君臨しているんだろうな?」
 と感じるのだった。
 そんな中で、10年くらい前に、東鉄という私鉄が、買収したのには、ビックリした。
 元々は、お菓子メーカーがオーナーだったが、一時期の物価の高騰から、経営がうまくいかなくなり、球団を手放したのだ。
 元々は、その球団や球場もそこから買い取った形でやっていたが、肝心の東鉄が通っていないというのはネックだったということもあり、千葉駅を中心に展開している東鉄ならではで、ちょうど、千葉駅近くにスタジアムを建設したのだった。
 形態は、ドーム球場になっていて、
「一体、どれだけドーム球場が増えるんだ?」
 という感じであった。
 確かに雨に降られると試合が中止になったりして、スケジュールや試合日程が合わずに大変になるので、できるだけ雨に関係なく試合ができるのがいいということでのドームなのだが、半部に情がドームということになると、下手をすれば、
「アメリカメジャーリーグよりも、ドーム球場が多いのではないだろうか?」
 と言われていた。
作品名:マルチリベンジ 作家名:森本晃次