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平和な復讐

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 しかし、今の時代は、基本的な平和の元、怪しい国家が存在するというものだ。植民地を持った帝国主義のような土台が根底にある時代とは違うのだ。
 それを考えると、
「今の時代は、何か突出したことをすると目立ち、侵略は悪だという構図が完全に確立しているので。昔とは違う」
 といえるだろう。
 だから、小説に出てくる世界は、明らかに昔のことであり、ちょんまげをしていて、刀を腰から下げた武士が街を練り歩いている時代と、さほど感覚的に変わるものではないかも知れない。
「だから、想像して本を「読むのが楽しい」
 というものだった。
 想像するからこそ、一度最初に読んだその場所が、
「想像するのに、この場所」
 ということになり、
「もし、他のジャンルの小説を読むとすれば、その場所は、必ず確立されることになるんだろうな
 と思うようになっていたのだ。
 だから、刑部には、椎名君の気持ちがよく分かった。
「だけど、公園でSFというのは、どんな想像がめぐらされることになるんだろうね?」
 と、いうと、
「この人、分かっているんだ」
 と、椎名君が感じたのか、ニッコリとした笑顔になって、
「児童公園には、いろいろな遊具があるでしょう? それがまるで円盤などに見えて、そして遊具と遊具の間にある微妙な距離が、星と星の星間という感覚になったんですよ」
 というではないか。
「なるほど、その星間という感覚には恐れ入った気がしましたよ。じゃあ、公園で遊んでいる子供たちは、さしずめ、宇宙人ということですか?」
 と聞くと、
「いいえ、そんな高尚なものではないですよ。せめて、地球外生物と呼ばれる、まるでバクテリアのような単純生物だと思います」
 というではないか。
 それを聞いた時、刑部は、
「ああ、この人は、子供が嫌いなんだな」
 ということを感じたのだ。
「子供がどれほど鬱陶しいものなのか?」
 ということを、刑部も近い将来に感じることになるのだが、その時、さらにその感情をたかめたのは、この時の、
「椎名君との会話だったんだ」
 というのは、ずっと後になっても頭から消えないことであった。
 刑部にも、
「子供が嫌いだ」
 という意識はあった。
 だが、先輩が面白いことを言っていた。
「子供が嫌いだと思っていても、自分に子供が生まれると、溺愛するものさ。だけどな、一度嫌いになった子供を好きになることはないので、今、お前が思っている子供に対しての感情が消えることはないんだ」
 といっていたのを思い出した。
「椎名君というのは、相手の感情をも動かすことのできる、
「面白い青年なんだ」
 と感じたのだった。
 刑部は、そんなことを思いながら、椎名君が、本を読んでいる公園で、自分は子供を見ながら、ボーっとしていた。
 普段であれば、苛立ちが次第にこみあげてくるにも関わらず、その時は耳が真空になったかのように、何も聞えなかった。
 むしろ、巻貝を耳にあてて、風が通る音が聞こえてくるくらいのものだったのだ。
 その時から、椎名君とは友達になった。彼が苦学生であることは、その時に聴いた。
 正直、あまり気の毒な生い立ちの人には、
「重すぎる」
 と思い、一歩下がって付き合うことが多かったが、彼を見ていると、そこまで暗そうにしていないことで、
「彼とは友達になれる」
 と感じたのだ。
 だが、実際に、話をしてみると、想像よりも、大変そうであり、後から思い返すと、
「結構重たいじゃないか?」
 と思うのだが、一度打ち解けてみると、そこから離れようとは思わなかった。
 そのおかげか、友達が、どんどん減っていっても、そんなに気にならなかったことが、今幸いしていると思えてきたのだった。
 椎名君の話を聴いていると、
「まるで、自分が経験してきたこと」
 という風に思えてくる。
 自分の経験など、
「彼の足元にも及ばない」
 と思うのだが、それはあくまでも、
「年上として見ているからだ」
 と感じるのだ。
 もちろん、彼が今経験している大学時代と、自分が経験したのでは、時代が違うともいえるのだろうが、一人一人の考え方自体が違っているように見えるのは、なぜなのだろうか?
 一つ不思議に思うのは、
「今の時代の方が、自分から何でも発信できるようになっているのに、なかなかそれを活用している人が少ない」
 と感じるのだ。
 SNSと呼ばれるものが、普及してから、昨今。確かに、今までできなかった発信方法を行うことができる。
「ユーチューバー」
 などという人たちが増えてきて、数年前などは、小学生などに、
「大人になって、なりたい職業は?」
 という中の上位に、
「ユーチューバー」
 というものがあった。
 特に、
「一度バズって、人気ユーチューバーと呼ばれるようになると、どんどんお金が入ってくる」
 という印象が深かった。
 だから、一時期、才能もないくせに、
「とにかく、インパクトの強いことをやれば、バズる」
 と言われたことで、結構無茶なことをしたりして、ニュースになっていたりした。
 例えば危険なところに登ってみたり、人の迷惑を顧みず、自分がバズるためだけに、人を利用したりというのが多かった。
 いわゆる、
「迷惑ユーチューバーと呼ばれる人たち」
 であった。
 本当に犯罪行為すれすれというのもあった。
 警察官の前で、堂々と、道路交通法違反、例えば、
「信号無視」
 などのことをあからさまに行い、警察に追われているという、
「捕り物劇」
 と、別人が撮影し、それをライブ中継したりして、バズらせていた。
「もし、その時に誰かをはねてしまったらどうしよう?」
 などという思いが少しでも頭をよぎらないだろうか?
 殺人犯になってしまえば、それこそ、本末転倒である。
 いや、そういう奴は、殺人犯になったとしても、それがバズるのであれば、前科がつくくらい何でもないと思っているのかも知れない。
「犯罪者が、ユーチューバーということであれば、人気になるんじゃないか?」
 とまで思っている人もいるだろう。

                 椎名君との会話

 そういえば、昔、一時期であるが、
「自費出版社系」
 と呼ばれる会社があった。
 その会社は、実際には、
「詐欺商法」
 の一種であったが、やり方は、意外といいところをついていたのだ。
「小説家になりたい」
「本を出したい」
 という人の夢を叶えるというところから始まったのだが、実際には、その考えを無視するようなやり方になったのが、無理なところであった。
 当時、素人が作家になりたいとか、本を出したいということになると、方法は2つだった。
 一つは、出版社系の新人賞で入選するという、王道の登竜門を突破するというやり方か?
 もう一つは、正面突破で、実際に原稿を持ち込むというやり方であった。
 しかし、出版社系の新人賞は、なかなか難しい、もし、入選し、次回作を書けるチャンスをもらったとしても、それがなかなかできないのだ。
 一つの理由としては、
「新人賞を取るために、その力を使い果たした」
 と思い込んでしまうことであった。
作品名:平和な復讐 作家名:森本晃次