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平和な復讐

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「放送禁止用語ではないか?」
 と思わるほどになってきたのだ。
 そもそも、放送禁止用語と呼ばれるものも、法的な拘束力は何もない。放送関係であれば、
「放送倫理に引っかかる」
 ということはあるだろうが、放送禁止用語を放送で流したからといって、侮辱罪になったり、精神的な苦痛を与えたことでの罪になったりはしないのだ。
 あくまでも、放送局の自粛ということであり、勘違いの元だといってもいいだろう。
 言わなくなった言葉のほとんどは、
「職業」
 に関連したものだが、
「看護婦」
「スチュワーデス」
「婦人警官」
 などがそうである。
{前述のように、作者は、別にかまわないということで、これからも、それらの言葉を使い続けるが}
 ちょっと神経質すぎる気がするが、そんな時代において、叫ばれてきたのが、
「ハラスメント」
 という言葉である。
 最初の頃、よく言われたのが、
「セクハラ」
 という言葉であった。
 いわゆる、
「セクシャルハラスメント」
 ということで、女性に対して、女性差別的なことをいうと、
「セクハラ」
 と言われる。
「今日はきれいだね」
 という言葉だけでも、セクハラになる。
 また、
「まだ結婚しないの?」
 という言葉も、昔なら、世間話くらいで、女性側も言われたとしても、苦笑いをしながら、
「なんてデリカシーのない上司なの?」
 とばかりに、しょうがないという意識ではいたことのが、それまでのことだったのだろう。
 しかし、それらを、
「セクハラだ」
 と言い始めてから、他のハラスメントも、
「まずいのではないか?」
 と言われ始めた。
「上司が帰らないから、部下も帰れないので、仕事もないのに、上司につき合い残業しなければいけない」
 ということもあった。
 上司だって、
「会社で、仕事があるわけではない。家に帰っても、女房子供がうるさいだけで、自分の居場所がない」
 というまあ、勝手な理由で残っているだけだとすれば、部下とすれば、溜まったものではないだろう。
 実際にそういうことも平気で行われていた時代があったのだ。
 さらには、宴会などは、ハラスメントの凝縮のようなもので、
「女性社員は、上司にお酌をして回らなければならない」
 ということであったり、男性社員でも、上司からの酒の誘いを断ると、
「俺の酒が飲めんのか?」
 などと平気で言っていた時代である。
 今の若者には、信じられない時代だろう。
 そんな時代があったと言えば、早速、
「コンプライアンス違反だ」
 と、100人中、100人がそういうだろう。
 そんな今の時代なので、余計なことをしようとすると、必ず、何かをいう人がいるのだ。
 昭和の時代のように、よかれとしたことでも、すべてが余計なことになってしまう。
 就職の時の、履歴書一つをとっても、書いてはいけないこと、逆に、募集する側の募集要項にも書いてはいけないことなど、結構ある。
 履歴書には、男女の区別や、本籍を書く欄がない。募集要項には、年齢制限を掛けてもいけない。
 などという時代になってきた。
 かといって、本当に男か女かということは、面接をすれば分かることで、しょせん、書類選考の時に、落とされないだけで、結局同じではある。
 募集要項に年齢を書かないといっても、実際に面接をして30代と40代後半が来たとすれば、募集内容で適切な人を選ぶだけなので、年齢が高いと、圧倒的に不利だ。
 あくまでも、年齢不問というだけで、実際には、
「30歳くらいまで」
 というのが、影の募集要項というだけなのだ。
 そういう意味では、
「本当にこれでいいのか?」
 ともいえる。
 年齢不問にすれば、
「ダメ元で」
 ということで、応募してくる人もいるだろうから、面接をしないわけにはいかない。
 しかし、最初から出来レースのように、、見た瞬間、不合格が確定しているような人にまで合わなければいけないというのは、企業側にもデメリットだし、就職希望の人にも、
「ワンチャンある」
 として、思い込ませるという罪なことにもなるのだ。
 どちらにも、デメリットでしかないのであれば、最初から年齢制限を書いておいた方が、お互いにいいはずなのに、
「コンプライアンスという問題は、実に面倒臭い要素を秘めている」
 といえるのではないだろうか?
 さらに、
「プライバシーの保護」
 という観点からの、
「個人情報保護」
 というのも、大切ではあるが、結構大変だったりする。
 実際に、ハッカーと呼ばれる連中から、個人情報を抜かれ、
「数百万人の個人情報が流失」
 というニュースがよく流れたりしている。
 実際に、そのために、どのような被害があったのかということを、当局は分かっているのか、認識していないのかまでは分からないが、正直、恐ろしさもある。
 それよりも、最近では、
「オレオレ詐欺」
 であったり、
「振り込め詐欺」
 などという新手の詐欺が横行し、気を付けなければいけないということを政府が発表していくと、さらに新手の犯罪が現れてきたりするという、
「いたちごっこ」
 になったりするのだった。
 そういう意味で、世の中は、
「とにかく、物騒だ」
 ということになった。
 さらに、ここ数年で、世界的に見れば、今に始まったことではないのだが、日本にも、入ってきたものとして、
「伝染病の流行」
 というものがあった。
 今までは比較的、
「地域的な流行」
 というのが多かったが、今回の伝染病は、世界的な規模で、
「世界的なパンデミック」
 と呼ばれた。
 さすがにここまで世界で流行したウイルスが日本で流行るということはなく、政府もどうしていいのか分からないから、苦し紛れの、
「緊急事態宣言」
 などというものを出したりしたのだ。
 基本的に、
「有事の存在しない日本」
 という国で、
「戒厳令」
 と呼ばれる、本当の意味での、
「個人の権利の抑圧」
 ということはできない。
 そのためにできることは、
「努力義務」
 であったり、
「政府からの要請」
 という形でしかなかったのだ。
 そんな時代において、
「とにかく、三密を避ける」
 ということが叫ばれるようになった。
 それによって、人込みが避けられるようになり、電車のラッシュも減ってきたのはよかったのだが、緊急事態宣言が終わってから、車通勤の人は結構大変になったかも知れない。
「公共交通機関では、密にならないように」
 ということが、叫ばれ出してから、
「車を持っている人は、自家用車で通勤」
 という人が増えたことだろう。
 道路は混むし、駐車場の空きも、そんなにあるわけではない。そうなると、都会への通勤は、車では、ただでさえきついのに、さらにきつくなるということであった。
 もちろん、通勤しないでもいいように、
「テレワーク」
 というものが推奨されるようになったが、ほとんどの会社が、いきなり襲ってきたパンデミックに対応できるわけもない。
 ただ、世の中は、都会に事務所を設けて、家賃などを考えると、事務所レスの体制を取ろうとしていたところは、大企業などでもあるようだ。
作品名:平和な復讐 作家名:森本晃次