自転車事故と劇場型犯罪
で、会社だけが何とか生き残ったというところであろうが、それからの日本は、迷走を重ね、
「失われた30年」
などという言葉でいわれるようになり、その途中で、
「非正規雇用問題」
「男女雇用機会均等」
などという問題が上がってきて。紆余曲折の中、今がある。
大きな波も中にはあった。
「ボーガンショック」
などというのもあり、こちらも、世界的な不況をもたらしたが、何とか乗り切った。
だが、非正規雇用などでは、大きな社会問題を引き起こした。
「雇用単価が安く、いつでも首を切ることができるという派遣社員などの制度は、雇う方にもメリットがあるが、今までの終身雇用などということで、会社に尽くす、忠誠を誓うなどという古臭い考え方から、新しく、契約社員などという形のものにあると、雇われる方も気は楽だった」
と言えるだろう。
しかも、不況で
「少しでも経費節減ということで、単価の安い社員を雇う方が会社も楽だ」
と言えるだろう。
しかし、そんな時、一番バチをかぶるのが、今までいた正社員だろう。
正社員は、それまでにリストラなどで、かなり人員を切ってきたが、経済が少し余裕を見せてくると、今度は、会社としての体力がなくなっていたのだ。
「ゼロ戦だって、熟練のパイロットがいたから、全戦全勝で、無敵と言われたのではないか」
ということであった。
つまり、バブルがはじけたせいで、会社は、経費節減に走り、
「一番手っ取り早いのが、人件費だ」
ということで、リストラが行われたせいで、今度は、体力がまったくなくなり、会社を支える人がいなくなってしまったのだった。
まさに、
「国破れて山河在り」
とはこのことだろう。
だから、会社が何とかちょっとした不況を乗り切ったとしても、それは、
「肉を切らせて」
のことであっただろう。
それが、社会問題となった、いわゆる、
「派遣切り」
だったのだ。
契約を切られた派遣社員が街にあふれた。ホームレスが一気に増えたことで、ボランティアの人たちが、
「派遣村」
というもの作り、そこで、炊き出しを行ったりして、
「会社から弾き出されていくところもない人が、頼った場所だった」
のである。
それでも、会社は、容赦なく、派遣切りを行う。
「会社さえよければそれでいい」
ということなのか、どう考えても、理不尽であり、理屈に合わないことであるにも関わらず、ボランティア以外に助ける人はいないのだった。
政府は、ずさんな管理で、
「年金を消してしまった」
などという事件もあった。
完全に、経済を復興するどころか、会社や国がそんな状態では、もう、どうすることもできないのであった。
外国では、不況というものが起こっても、経済が復活していた。しかし、日本の場合は、そうもいかなかった。
その理由としては、経済が停滞する時の問題として、
「物価の上昇」
というものがある。
しかし、物価が上昇するのだが、上昇しても、それにともなって、
「給料も上がる」
ということで、
「給料が上がれば、その分、お金を使う」
ということで、経済が停滞するということはないのだ。
給料が上がるということが分かっていれば、お金を使う。なぜなら、お金を使って経済が潤滑することになるから給料も上がるという仕掛けを知っているからであった。
しかし、日本の場合はそうもいかない。企業が、絶対に給料を上げないからだ。
もし、給料が上がったり、一時金などが出たとしても、国民は金を使わない。それが、
「一時金である」
ということが分かるからで、
「調子こいて使ってしまうと、自分で自分の首を絞めることになる」
と思うからだった。
ここには、日本企業の、
「内部留保」
という考えがある。
これこそ、
「国破れて山河あり」
ということなのであろう。
内部留保というのは、各企業が、黒字になったとして、普通黒字になれば、社員に分配するものなのだろうが、日本の場合はバブルがはじけた時の教訓で、
「会社が、いつどうなるか分からない」
という恐怖を覚えたのだ。
それが、
「銀行不敗神話」
であり、絶対に潰れないと言われた銀行が潰れたことで危機感を持った企業が、儲けを少しでも会社の貯蓄にしようと、社員に還元しないのだ。
そうなると、お金が流通するわけはない、会社も分かっているのだろうが、内部留保によって助かったという時代もあったことから、国も、
「内部留保をやめてくれ」
と大きくは言えないのだ。
その内部留保のおかげで助かったというのは、言わずと知れた。ここ数年前に起こった、
「世界的なパンデミック」
であった。
その時に、経済の停滞どころか、
「人流抑制」
ということで、国からの、
「緊急事態宣言」
ということで、
「休業宣言」
が行われたのだった。
政府とすれば、どうしようもなく、しかも、休業宣言というのも、強くは言えなかったのだ。
そんな内部留保が、経済の停滞を招き。日本は、ベースアップがないまま、物価だけがどんどん上がっていくという、
「インフレと不況が一緒に来た」
という、
「スタグフレーション」
という、ジレンマのような状態に経済が追い込まれ、何をやっても、うまくいかないというような状態になってしまったのだ。
さらに今は、
「伝染病の流行抑制と、経済を回す」
ということのジレンマの中、政府も難しいかじ取りを迫られているというのが、現状であるが、正直、
「今の政府に、何ができるというのか?」
ということであった。
民主国家
そんな時代において、アーバーウーツなどの宅配が流行るのは、当たり前のことで、
「自粛期間中、買い物に行くのも憚るくらいで、食材を買いにいけないのであれば、宅配を頼むしかない」
と考えるのは当たり前のことで、どうしても、それだけ配達員が、道路を縦横無尽に走っているのだ。
もちろん、キチンとルールを守って配達している人は山ほどいるだろう。
しかし、ごく一部の、不心得の人たちが、迷惑をかけるのだ。
道を歩いて、
「危ない」
と思ったことが一度でもある人がどれくらいいるのか、想像しているよりも、きっと確率は高いものではないかと思えるのだった。
これは、タバコの不心得者にも言えることで、今の世の中、
「タバコを吸っているのを見られるだけで、罪人のような目で見る人がいる」
当然、ちゃんとルールを守っている人間からすれば、理不尽で仕方がないのだが、一人でも不心得者がいれば、それだけで、
「タバコを吸っている皆がマナーが悪い」
とみられてしまうのだ。
「そんなのは理不尽だ」
と思うだろう。
しかし、それが事実なのであり、本来マナーを守って吸っている人が怒りの矛先を向けなければいけないのは、
「ルールを守ることのできない連中」
なのである。
そのことも分かっている人も多いだろう。
だから、
「マナーを守れない連中は、禁煙者だけではなく、ルールを守って吸っている人からも嫌われている」
ということになる。
作品名:自転車事故と劇場型犯罪 作家名:森本晃次