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一毒二役

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 ということで、俄然、事件に興味が湧いてきて、ある意味、
「一人ではしゃいでいる」
 といってもいいのではないだろうか?
 その時の事件がどのようなものだったのかというと、事件としては、本当に残虐なもので、
「昭和の事件だ」
 といってワクワクなどするのは不謹慎な事件であった。
「ある老夫婦の家に入った強盗が、老夫婦を脅して金を出させ、そのまま二人を殺害し、逃亡する」
 という、実に極悪非道な犯罪だったのだ。
 この時の事件では、すでに犯人が分かっており、親と対立した長男が、家を飛び出し、いろいろ彷徨い歩いているうちに、金がなくなり、サラ金に手を出してしまったことで招いた事件だった。
 そもそも、この男がサラ金に手を出すまで落ちてしまったというのも、その裏には、ある組織による、組織ぐるみのカラクリがあったのだ。
 実にこれが昭和であれば、
「引っかかる方も悪い」
 と言われる事件であり、ドラマとしても、ベタな展開になってしまい、そのリアルさが、昭和を醸し出しているような話であっただろう。
 そこには、一人寂しく彷徨っていた男に対し、巧みに声をかけ、
「金なら心配するな」
 といって、スナックや、高級クラブ、さらには、ピンサロのような店を毎晩のようにその男は豪遊に連れていった。
 これだけで、普通なら、
「なんとベタな」
 と少しでも考えるのだろうが、この男は、どこか抜けているところがあり、いわゆる、
「頭のネジが一本どこかに抜けてしまった」
 といっても過言ではないようだった。
 だいたい、親と喧嘩して、意地から、
「家に帰るようなことはしない」
 と思っているこんな男を、そそのかすように近づき、さらに、豪遊を繰り返すなど、
「まるで絵に描いたような展開」
 と言えるのではないだろうか。
 こんなストーリーであれば、次がどのような展開になるかということは、目に見えて明らかだといえるのではないか。
 そう、つまり、ここから先は、
「色仕掛け」
 だったのだ。
 豪遊に明け暮れて、いろいろな意味で、神経がマヒしてしまっている男に、女をあてがってしまうのは、もう鉄板であった。
 ギャンブルにうつつを抜かし、さらに、酒と女、こんなことをしていれば、金など、あっという間になくなるというものだった。
 友達を装って近づいてきた男が、最初に、
「いいからいいから、今日は俺が」
 といって、最初の頃はずっと払ってくれていたので、その後の豪遊も、当然彼が払ってくれるものだと思い込んでいた。
 そうは問屋が卸すはずがない。
 途中から、その男の分まで、払わされることになっているなど、想像もしていない。
 完全に自分は、
「VIP待遇を受けるのは当たり前の存在なのだ」
 と思い込んでいた。
 自分で金を払うわけではなく、自分をおだてるような言い方をする男が隣にいるということは、それが役得であるということから、次第に、
「俺は、王様なんだ」
 と-いう、普通の神経なら、考えられないような発想になるよう、男にうまく誘導されたのだった。
 世の中には、普通ならしないと思えるようなことをするバカ者がいるものだ。
 三浦刑事が、まだ学生の頃、彼は歴史的なものが好きで、名所旧跡など見て歩くことが好きだった。
 特に、お城などは結構好きであり、
「お城というと天守があるものだ」
 とそれまで思っていたことが恥ずかしくなるほど、陶酔していたといってもいいかも知れない。
「お城というのは、昔の最盛期には、3万ほどあったらしいぞ」
 と、同じ趣味の友達から言われたことがあった。
 その頃はまだ、
「お城というと天守」
 ということをいっていた頃で、知識も中途半端にしかなかった。
 もっとも、歴史というものは、
「掘り下げれば掘り下げるほど、奥が深く、なかなか底が見えてくるものではない」
 というものであり、
「中途半端」
 という言葉が、どこまで中途半端だといえるのか、考えさせられるのであった。
 そんな中において、
「天守閣というやつは、本当の歴史通ではない」
 とまでいうやつだった。
 実際に、自分も勉強してみると、
「そいつの気持ちもよく分かる」
 というようなもので、
「城を回ってみれば、その素晴らしさが分かる」
 ということで、よく一緒にそいつと回ったものだった。
 そのうちに、彼の学業が忙しくなり、彼の精神を受け継いだというのは大げさだが、同じ考えを元に、自分も、
「城を巡ってみよう」
 と考えるようになっていたのだ。
「そもそも、コンビニの数よりも、よっぽど多い数の城なので、どこを回るか、漠然とではなく、計画を断てておかなければいけない」
 と思うのだった。
 回る城が決まってくると、それに合わせて計画するようになった。
 そんな中で、あれは、一人で回るようになって、ひと月くらいが過ぎた頃だったか、回ってみることに、すでに慣れてきた頃のことだった。
 あれは、日帰りでいけるところだったのだが、今は天守が残っていない城で、天守台は存在しているが、ウワサとしては、
「天守はなかった」
 という話もあった、
 しかし、近年の研究では、
「この地方でも最大級で、全国的にもひけを取らない立派な天守が聳えていた」
 という話もあるくらいである。
 ただ、行ってみると、ほとんどの建物は残っていない。
「櫓が二つに、御門が二つ。あとは、石垣と、城跡としての丘のような状態が残っているだけだ」
 というところだった。
 中には、資料館のようなところが作られていて、そこで、
「御城印」
 を購入し、ビデオのようなものを見たのだった。
 その城の天守の復興、あるいは、模擬天守などの復元は、行わないように、管理している市が決定したということであり、城ファンとしては、寂しい限りであった。
 とりあえず、残っている数少ない建造物の中の、櫓と御門が隣接しているところにいってみることにした。
 そこには、
「想像していたよりも小さいかな?」
 と思う門があったのだが、それは勝手な思い込みであり、重要文化財であることに変わりはないのだから、
「敬意を表して拝観しないといけない」
 と思うのだった。
 ゆっくりと歩いていると、そこに見えてきた門を、写メとして納めていると、観光客の一人と思しき人がやってきて、
「こんにちは」
 といって頭を下げると、相手も、同じリアクションでニコニコしながら、答えてくれたのだ。
「登山と同じ感覚だよな」
 と中学の頃、ハマってよく登山に行ったのを思い出していた。
 城は、さすがに登山と比べれば楽なのだろうが、基本的に城の通路、特に段になっているところは、歩きにくいものだと相場が決まっている。
 なぜなら、城というのは、元々、
「戦うための要塞」
 であるということだ。
 城は攻められれば、籠城するというのが基本で、相手が大軍で押し寄せてきた場合、いかに近寄らせないか。そして、そんな中でも途中を突破してくる兵を減らすことができるかということで決まってくる。
作品名:一毒二役 作家名:森本晃次