悠々日和キャンピングカーの旅:⑨東北太平洋岸(茨城~岩手)
松尾芭蕉が「奥の細道」の旅で立ち寄った温泉でもあり、俳句を詠み、この近くにその句碑が立っていた。
受付を済ませた後、川を跨ぐように架けられた廊下を進み、脱衣所に入るとそこから、銭湯やホテルの大浴場とは対極の、木枠造りの幾つかの湯船が見える。それは湯治場の雰囲気だ。
先ずはかぶり湯だ。頭をタオルで覆って200回ほど湯を被って・・・と書かれており、湯の薬分を頭から吸収して入浴後のめまいや吐き気などを防止するとかで、試みるも100回もできなかった。
そして湯船は41、42、43、44、46、48度の浴槽があり、44度の湯から浸かり始めた。
少々熱いが全く問題ない。48度の湯に挑戦するひとつのステップをクリアした。
少し休んだ後に46度の湯に浸かろうと、足を入れると熱い。初めての熱さだ。回りの人たちの会話が聞こえる。体と湯の摩擦時が特に熱く感じるとのことで、それを信じて、既に浸かっている人への影響を及ぼさないように、静かにゆっくりと浸かっていった。熱い。非常に熱い。漬かってからは全く動かずにいたところ、肌が触れている湯の層が冷えるのか、肌が湯温に慣れるのか、高温に我慢できている。
ここは短熱浴を勧めていると壁に書かれているが、勧められなくとも長い時間は耐えられない。限界に達したため、ゆっくりと湯から出ようとした瞬間、体と湯の摩擦で、浸かった際の熱さが戻ってくるが、それでもゆっくりと湯から出た。
先ほど以上に休みながら、「1日の入浴回数最高4回(約15分程度)」との注意書きに納得。
いよいよ最高温度の48度への挑戦だが、そこに浸かっている老人がひとりいたが、我慢している雰囲気はなく、ちょっと熱めの湯に入っているような感じに見えた。
湯に浸かるのに「勇気」が必要というのも凄いのだが、正にそうだった。先ほど以上にゆっくりと足先から浸かり始めるも、首まで浸かってからは10秒が限界だった。ゆっくりと湯から出ようとすると、熱さが体全体を包む。先ほどから浸かっている老人に迷惑を掛けないようにゆっくりと脱出した。
私も含めて殆どの人の体が赤くなっている。硫黄を豊富に含んだ強い酸性の泉質も作用しているのか。仕事の関係で、5年間ほど海外で暮らしたことがある。その時に体験した非常に酸性が強い温泉は、水着を着て入る温泉で、その湯が目に入るとめちゃくちゃ痛かった事を思い出したが、この鹿湯はそのレベルにはなかった。
湯上り後、男湯と女湯で分かれて入浴していた家族が、湯治ができたこと、48度の湯に浸かったこと、そんな話声が聞こえてきた。鄙びた温泉に満足したのか、良い雰囲気が満ちていた。
6つの湯温のコントロールの方法を受付で訊いたところ、源泉から流れてくる湯の“湯船までの距離”のみで決まってくるという。季節で多少の差が出てきそうだが、あまり影響はないとのことだった。「ジル」に戻り、冷蔵庫で冷えたコーラを飲んだところ、これまでにないほど、火照った体に沁みた。旨かった。
熱い湯に浸かるといつも以上に空腹を感じるのか、道の駅「那須高原友愛の森」に向かって、坂を下り始めた。高原を訪れる観光客向けのレストランやショップが並んでいる。その裏手は林や牧場が見え、改めて、那須高原の広さを感じた。
道の駅の駐車場に「ジル」を停めた。外観が印象的な建物に入るとそこはインフォメーションコーナーで、紀行文の執筆に役に立ちそうなパンフレットを貰った。そしてショップに入ると、スーパーの食品売り場のようだったが、特に買うものはなく、レストランにも立ち寄らず、「ジル」の中で湯を沸かし、カップ焼きそばと缶詰の昼食になった。
昼食の後は一路、埼玉県越谷に向かう予定だ。先ずはR4に下る道を確認し、その後はひたすらR4を走り続け、17時着を目標に、4時間で160kmを走る計算になる。まあ大丈夫だろうと、道の駅を出発した。
R4がバイパスになると、殆どのクルマのスピードがアップした。ひたすら走った。運転時間が長くなり、ナビが小休止を促してくれる。休憩したいのだが道の駅もコンビニもない。やっと見えたコンビニで小休止。
私と同じようなドライバーが多いのか、トイレの前に列ができていた。その中のひとりに、この先の道の駅について尋ねると、あと13km走った先にあるという。ということで、直ぐにそこを目指した。
道の駅「まくらがの里こが」に立ち寄るも、特に目的はなかったが駅舎に入ったところ、とにかく広く、茨城県最大の道の駅とのことだった。特に野菜が安く、娘宅への土産にしたいほどだった。
再び走り続けると、案内標識に「越谷」が出てきた。あと少しだ。眠くはないが、運転の集中度合いが低くなっている。車内に流れる曲はウォークマンに入っている約200枚のCDのランダム再生で、スローテンポの曲になったため、2曲ほど飛ばすと、門あさみの「ファスシネーション」が始まった。大学時代によく聞いた好みの曲だ。懐かしい。運転に集中できて、R4から脇道に入り、娘宅に到着。プリウスがミライに替わっていた。
夕食は、孫が好きな寿司となり、ミライに乗って出掛けた。ミライのダッシュボードはクルマのそれではなく、オーディオ機器のようなデザインだった。そして、排気ガスは水だ。いいね。
【本日の走行距離】189km