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静岡のとみちゃん
静岡のとみちゃん
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悠々日和キャンピングカーの旅:⑨東北太平洋岸(茨城~岩手)

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 ちょっと薄暗い松林の中を海側に20分ほど下ると展望台がある。脇見せず展望台まで歩き、そこで初めて左側を見下ろすと、見事な「穴通磯」が見えた。波の力で3つの大きな穴が空いた奇岩の絶景だ。
 暫く見ながら思ったのは自然の偉大さで、ひょっとして津波で穴の大きさが大きくなったのでは? そして、思い出したのは、国立公園シリーズの切手の「穴通磯」の図柄の切手だった。
 この旅が終わってから、自宅の本棚にあるストックブックの中の、その切手を見ていた時、国立公園の名称が変わったことに気付いた。以前は「陸中海岸国立公園」だったが今は、「三陸復興国立公園」という名称だ。東日本大震災は国立公園の名称まで変えてしまったことに、改めて気付いた。
 もうひとつ、「穴通磯」を撮った写真を眺めていた時、その背景に、大船渡湾の入口の左右から伸びた湾口防波堤が写り込んでいたことに気付いた。

 少し走って、碁石海岸インフォメーションセンターの駐車場に「ジル」を入れた。
 この末崎半島の東側は海食崖が続き、その中に幾つもの絶景が見られる。センターで入手したマップを見ながら、碁石海岸の“歩いて行ける絶景ポイント”を順番に回ることにした。
 海食崖の上は松林で、その中の多少上り下りのある遊歩道を歩いて進むと、何やらドーン、ドーンと音が聞こえてきた。
 海食崖に向かい合うように切り立つのは約30mの雷岩(かみなりいわ)、その間が乱曝谷(らんぼうや)で、三陸の荒波が押し寄せ砕け散り、激しい波しぶきが飛び散っていた。その雷岩の洞穴に波が当たり、中の空気が圧縮されるため、先ほどから聞こえている雷鳴のような音がするのだろう。いつまでも眺められ、飽きのこない景観だった。十分に体感した後、先に進んだ。
 半島の南端には灯台があり、その直下の碁石岬の展望台に下りた。そこからの景色も素晴らしかった。ひとりで見るのがもったいないくらいで、妻と一緒に、この景色を見たかった。

 「ジル」に戻り、昼食の準備を始めた。レンチンご飯にインスタント味噌汁、それに、先ほど買った刺身をパックのままテーブルに並べた「なんちゃって刺身定食」、刺身の中にマグロが入っていないことで、静岡県の遠州から遠く離れた場所にいることを感じた。

 そういえば、このエリア一帯の総称になっている「碁石」とは、碁石のような扁平な黒い石の多い海岸から付けられた名称だったが、その海岸に行くのを忘れた。「ジル」で、その海岸の横を走りながら、車窓風景のひとつとして見たので、それでよしとした。

 気持ちの良い散策の後は温泉に浸かりたくなり、センターで入手したパンフレットで「黒崎仙峡温泉」を見つけたので、そこに向かっていた途中、「休館中」の看板が出ており、その先の店で尋ねたところ、ボイラーの修理や新型コロナ感染症で、今は休館中とのことだった。“時間ごとに変化する太平洋の雄大な景観をながめながら、ゆったり浸かれる大浴場が自慢”というパンフレットの内容から入りたくなった温泉だったのだが、仕方がない。

 津波で松が1本だけ残った旧高田松原(たかたまつばら)が湾奥にある広田湾が見えて間もなく、道の駅「高田松原」に到着。この一帯は「高田松原津波復興祈念公園」の名称で再整備が進められ、津波で被災した道の駅とは別に、津波伝承館を含む道の駅が新たに建設された。

 今夜はここで車中泊することに決めて、先ずは伝承館に入った。津波発生〜襲来、全てのことをあらゆる角度から、そこで起きたことを克明に残している。その映像も鮮明だ。津波で流された消防車の実物が展示されており、津波の激しさを想像できた。
 そして、防潮堤に行った。その大きさ、高さ、長さで、先ほど見た惨劇を将来に渡って再発させない保証を形にしたものだ。そのはずれに、津波で全壊したままの「陸前高田ユースホステル」があり、その敷地内に奇跡的に残り、復興のシンボルとなったあの「奇跡の一本松」を見た。
 道の駅に戻り、駅舎に行ったが、既に閉店していた。トイレは伝承館内のものが使用できるようで、今夜は問題なし、だ。

 「ジル」に戻ってから、ネットで温泉を探した。
 山間の「霊泉玉乃湯」が良さそうで、念のため電話を掛けるも通じない。コロナ禍で休業中の可能性がある。そこで、もう1件検索できたのは「スーパー銭湯」で、念のため電話を入れると、夜の1時までやっているとのこと。早速、そこに向かった。
 R45で、陸前高田と大船渡の市境の峠のあたりまで行くと、パチンコや色々な店があり、独特な雰囲気の中にスーパー銭湯があった。中に入ると、玄関に靴は脱ぎっぱなし、脱衣所にはロッカーは少なく、棚に脱いだものを置くようなスタイル。でも、ゆっくりと湯に浸かり、疲れが取れ、温まることができた。

 再び、道の駅に戻り、夕食の準備に取り掛かった。この旅で、初めて料理らしい「カキ鍋」を作り、多めのカキで満腹になった。
【本日の走行距離】88km