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静岡のとみちゃん
静岡のとみちゃん
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悠々日和キャンピングカーの旅:⑨東北太平洋岸(茨城~岩手)

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 被災された時の気持ち、そして10年経った今の気持ちについて、たとえ何回も聞いても、津波の襲来を直接見ていない私は、彼らの痛みについては最後まで分からないのだろう。震災前の心の安らぎに戻ることはないと思うが、その痛みが少しでも軽くなって欲しいと思った。

 被災地を見て回った後、石巻専修大学に向かった。
 10年前、被災地をバイクで走りながら、その日の宿泊地を探していた時、誰かに教えてもらったのが、この大学のキャンパスで、自衛隊の宿泊地であり、ボランティアの人たちのテント村だった。
 その夜は、明日からボランティアを始める若者との会話、ボランティア活動に必要な用具の倉庫内の見学、ボランティア作業で疲れて戻ってくる人たち向けの風呂に湯を運ぶ自衛隊の車などを覚えている。
 この旅では、大学の正門から中には入らなかったが、写真を撮りながら覗き込むと、もちろんテントはないが、左側が自衛隊の人が、右側がボランティアの人がいた当時を懐かしく思い出した。

 軽油を給油した後、「はっとエフエム」のある登米市に向かった。
 車中泊した道の駅「上品の郷」を左に見ながらR45で北上。まもなく北上川を渡り、そこから先は川の左岸を走った。豊富な水量の川はゆったりと流れていた。右の車窓には崖が続いた。その連続を破ったのは驚くほどの巨大な3ヵ所の採石場だった。
 柳津(やないづ)でR45から分かれR342へ。暫く走ると「登米」の標識があり、到着したかと思ったが、それは「とよま」と読むそうだ。そこには「みやぎの明治村」と呼ばれる「旧登米高等尋常小学校(現:登米町教育資料館)」があり、少し興味はあったが、間もなく夕方になるので、先を急いだ。
 登米市の中心は佐沼のようで、やがて登米コミュニティFM放送局の「はっとエフエム」に到着した。周辺には駐車場が見当たらなかったので、隣の店で、キャンピングカーを停めることができる駐車場の場所を訊いたところ、その店の前のスペースに停めても構わないよと言ってくれて、お世話になることにした。サンクス。

 3階建ての建屋の「はっとエフエム」の玄関から2階に案内され、そこは明るい真っ白な事務所で、窓側にはスタッフの方々の机が並んでおり、壁側にはかなりの数の音楽CDの棚や資料が入っているようなキャビネットが並び、奥がスタジオだった。
 手前の応接ブースに座っていると奥から、取材でお世話になったアナウンサーの高橋さんが来られた。お互いにマスクをしているので、顔の輪郭と目だけで相手を認識するも、彼女のヘアスタイルが10年前と変わっており、「歳を取っていないのでは?」が再会の最初の挨拶になった。
 「ラジオ石巻」から高橋さんには、既に連絡が入っていたようで、「誰だったか?」というような確認して思い出すような時間は不要で、まるで旧友との再会のような会話が一気に始まった。10年前の取材やその後のこと、今回の旅の、特に福島県に入ってからの除染と石巻の震災の復興状況の話題が中心だった。

 高橋さんは今、「震災から10年」の番組の準備を進めていて、なんと、その番組向けに、私をインタビューさせて欲しいとの突然の申し出があり、初めてのことだったが、面白そうなので了解した。
 3階の静かな部屋でインタビューが始まった。高橋さんのこれまでの会話口調がいきなりインタビューの口調に変わり、その変わり振りこそ「プロ」なのかと思うや否や、インタビューが始まった。
 震災直後に「ラジオ石巻」を取材したこと、それから10年後の昨日、再訪した石巻の被災地からの復興状況を見て回った感想などで、インタビューに応えた。その内容は目の前のボイスレコーダーに録音され、高橋さんの番組で放送されるとのことだった。
 後日、高橋さんから、放送された私へのインタビューの部分の音声データが届いた。自画自賛になるが、高橋アナからの質問に対してはほぼ的確に応えていたように思えた。

 2階に戻り、スタジオの写真を撮らせて頂き、二人での記念撮影をした後は、高橋さんに、「ジル」の中をお見せすることなった。
 ダイネット内をひととおり紹介した後は、ダイネットに置いている「パラモーターからの空撮写真」を見せながら、静岡県の海岸線の話になった。高橋さんは、太平洋と海岸に迫る山々に挟まれた静岡県の由比で、震災に関する公演をやったとのこと。素晴らしいことだ。素晴らしい人だ。10年振りの再会は楽しかった。

 今夜の宿泊場所の道の駅を探した。この近くには幾つもの道の駅があり、その中での選択になった。
 明日も太平洋沿岸部を更に北上したいので、R346沿いの道の駅「林林館」に決め、ナビをセットした。佐沼からは僅か十数キロの距離だが、既にとっぷりと日が暮れ、辺りは真っ暗、加えて雨も降っているので、慎重に運転した。
 道の駅に到着した時はもう、駅舎は既に閉まっていた。近くには登米市役所の支所もあり、以前は小さな行政区の役場だったのだろう。他のクルマは見当たらず。トイレ近くの場所に「ジル」を停めた。
 この日の夕食は、レンチンで温めればOKの具入りのほうとう、鰯の甘露煮、さつまあげ。ほうとうは、ここまでの道中で購入したものだったが、期待以上の旨さだった。

 夕食後は毎晩やっている「旅のメモ」を書き上げ、テレビを見ようとしたが、この道の駅は山間にあるため、残念ながら電波を受信できず、ビデオを見ることにした。市販の映画のビデオでなく、テレビ番組を録画したものだ。
 私がよく見るテレビ番組は、ドラマ、旅、登山、アウトドア、鉄道、ニュース、アニメ、サイエンス、ビジネスもの等で、バラエティは殆ど見ない。
 このように、よく見る番組を羅列してみると、かなりの本数の番組を見ているような気がする。これら殆どの番組を録画して“CM飛ばし”で見ているので、時間的には効率的だ。なお、倍速再生はしていない。
 今夜見たビデオはアウトドアもので、パラモーターで、北から南に向けて錦秋の日本列島を空撮した多胡光純(たごてるよし)さんの番組だった。彼とは時々メールを交わす関係で、素晴らしい冒険家だ。
 今日はほぼ一日、雨が降っていたが、めちゃくちゃ充実した一日だった。
【本日の走行距離】92km