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静岡のとみちゃん
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悠々日和キャンピングカーの旅:⑨東北太平洋岸(茨城~岩手)

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 景色を眺め続けると、吹く風も変わり、太陽光の差す角度も変わり、天気も変わるため、景色が変わってゆく様が分かる。もし、腰を据えて一日中眺めるのならば、日の出から日没までの空の色や影の形の変化も見えるのだろう。更に霧が出れば、風景は別の顔を見せるのだろう。
 「キャンピングカーの旅」ならば、時間を掛けて、じっくりと風景を眺めることができるはず。これからは、旅のスタイルを少し変えて、これまで以上に印象的な風景を味わう旅をしてみよう。
 さらに、少し上空から景色を見ることができるならば、たとえば、大型船が進んだ軌跡を俯瞰でき、リボンのような後白波(あとしらなみ)が見えるはずだ。パラモーターを積み込んだ「キャンピングカーの旅」にギヤをシフトアップさせてみたい。

 県道で北上を続けた。平成の大合併で、旧勝田市と旧那珂湊市が合併して、ひたちなか市が誕生した。
 旧勝田市は日立製作所の城下町、従って、このあたりは日立系の工場が立ち並んでいると思っていたところ、県道の山側に建っていたのは建機の「小松製作所」の工場だった。「日立建機」じゃないの・・・と思いながら走っていると今度は、海側に「日立建機」の工場が。道を挟んで両側に競合メーカーが立地することに興味が湧いた。建機の構成部品の部品会社が共通のためか、そんなことが頭に浮かんだ。

 つい最近、日立建機に勤務している娘婿が出張したのは確か「常陸那珂(ひたちなか)臨港工場」だったことを思い出し、その工場が今、目の前にあり、その入口が見えたので、ハンドルを切ったところ、門の手前で停止するはずが、守衛所の前まで入ってしまった。
 工場にキャンピングカーが入ってくるという尋常ではない状況に驚いたのか、守衛所から3人の警備の人が飛び出してきた。笑顔で頭を下げ、Uターン。せっかくなので、門の外で写真を撮った。

 後日、娘婿に、競合する建機2社の工場が同じ場所にある理由を尋ねたところ、日本から海外への建機を輸出する際の貨物船の共同運行で物流費を削減しているとのこと。納得した。

 「建機通り」のような印象の県道からR245に入った。
 暫く走ると左に「原子力科学館」の建物が、右に「原子力研究所」への入口があった。そうだ、ここは東海村、日本で最初に原子の灯が灯った場所で、原子力発祥の地だったはず。中学校の社会科で教わった内容を思い出した。
 そのまま北上を続けると、道の駅「日立おさかなセンター」が見えてきたので、小休止することとした。

 越谷在住の娘の情報によると、この道の駅は色々な魚が美味いとのこと。期待して駅舎に入ると、殆どの店が魚屋という期待以上の驚きだった。
 刺身を売っているショーケースを覗くと、寿司のネタ用なのか、刺身が二切れずつ入っているパックが並んでおり、そのような売り方を見たのは初めてだった。確かに、個人が食べたい寿司のネタを買うにはちょうど良いのだろう。妻や友人と一緒に旅をしているならば、夕食のおかずをあれこれと買っただろうが、「ジル」の中で今夜、飯を炊いて酢飯を作って、寿司や海鮮丼を作るのは億劫なため、結局、見るだけで終わって、出発することにした。
 その前に、Google Mapで「温泉」を検索すると、幾つか見つかった。20km北上したあたりの温泉が、北上するルートに近かったため、ナビにセットして向かった。

 北上するR245からR6の日立バイパスに入った。このバイパスは海の上を走る道(旭高架橋)で、その突然の意外性に驚いた。
 「ジル」の左の車窓からは海越しに、海食崖の上の陸が見える。長い距離ではなかったが、右の海側の先に国道に沿ったパーキングエリア(浜の宮ロードパーク)があり、そこに入って、改めて、海上高架橋を眺めた。民家が海に近い場所まで立ち並んでいたので、海上にバイパスを作るしかなかったのだろう。

 再び北上を続け、ナビの指示どおり、鵜の岬海岸へと右折した。その道の突き当りが「鵜来来の湯十王(うららのゆ じゅうおう)」で、さあ温泉だ。ところが、休日の今日の入浴料金はちょっと高めだった。しかし、既に午後4時を回っており、その半額の夜間料金が適用された。ラッキー。
 広くて明るい大浴場で、窓からは美しい白砂清松の海岸(伊師浜海水浴場)が見えた。日本の白砂清松100選の海岸だ。大浴場にはカメラを持ち込めないので、風呂上がりにでも、その景色を撮ろうと思っていたが、あまりにも気持ちの良い温泉で、まったりと過ごしてしまい、温泉を出た時は既にあたりは暗くなっていた。

 この旅では、午後3時までに、車中泊の場所を決めることにしていた。ところが、ここから先には道の駅は見当たらず、大袈裟に言うと、多少、途方に暮れていた。
 当てもなくR6を北上しながら思ったのは、先ほどの温泉の受付で、キャンピングカーを駐車できそうな場所を訊いておくべきだったと後悔した。
 夜の帳が下りてからは、気を使いながら運転をしていた時、JR常磐線の高萩駅の案内標識が見えた。駅前には往々にして、駅周辺の観光案内図が立っているので、それを見に行くことにした。多少、天にもすがる思いだったが、ライトに照らされた案内図が見えた時は、天に感謝した。

 これまで、友人や知り合いに、キャンピングカーはどこでも泊ることができると言ってきたが、「ジル」のサイズは大きく、目立つため、実際はそうはいかない。後ろ指を指されない場所での宿泊を心掛けたい。
 その気持ちもあり、案内図を見たところ、この駅の少し北側の海岸に、駐車場のある「高戸前浜海岸(たかどまえはまかいがん)」があり、そこでの車中泊は可能だろうと思い、当てもなく走る不安から幾分解放され、安堵した。
 すぐさま、ナビにその地点をセットし、R6からの脇道に入っていった。ところが道幅は次第に狭くなり、幅の狭い小さな橋を渡り、更に狭くなった川沿いの道を進んだ。安堵の半分くらいが不安に置き換わりつつ、ナビを信じて先に進むと、広い駐車場に出た。公衆トイレもあった。そこには外灯もなく、周囲は良く見えない暗闇だった。不安が募った。
 駐車場の海側には砂浜が広がっているのか、打ち寄せる波の音が聞こえてくる。状況が分からないため、駐車場の中央に「ジル」を停めた。他にクルマはなく、「ジル」が1台の寂しい暗闇の中で、不安のレベルがピークに達した。
 そんな時に限って、周囲に誰かいるのではないか、あたりに家がないことから暴走族が来るのではないかと、悪いことばかりが頭に浮かんだものの、そういうことをあまり気にしないことにして、とは言うものの、エントランスがロックされていることを確認して、夕食のカレーの準備に取り掛かった。

 レンチンしたレトルトパックのカレーに、ウインナーもレンチンしてトッピング、白米もレンチンで暖めた。電子レンジの便利さは無敵だ。ソロの「キャンピングカーの旅」ではたいへん重宝だ。簡単な準備だったが、それでも美味い。サラダはないので、野菜ジュースでビタミンを賄った。