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静岡のとみちゃん
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悠々日和キャンピングカーの旅:⑨東北太平洋岸(茨城~岩手)

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 道ですれ違う際には、バイクで言うピースサインに当たる何かしらの合図をすると、相手からの返事が届く。しかしながら、駐車場では離れて停めている。
 隣に停めて、お互いに目が合えば、挨拶から会話、旅談義が始まるものだが、何となく躊躇しているのか、敬遠しているのかは分からないが、離れて停めていることが多い。
 今度、隣に停めてみよう。きっと何かが起きるはずで、それを期待してみよう。

 道の駅のエリア内で、最初に目に入ったのはセスナ機だった。それは、駅舎の前の1階にテーブルと椅子のある鉄骨構造の休憩所の屋上に展示されていた。
 駅舎に入る前に階段を上って、セスナ機を見て回った。ネット情報によると、1969年製のもので、調布飛行場で75年に事故を起こし現役を引退、熊本市立博物館での展示を経て、ここに移管されたとのこと。かなり痛んでおり、もう大空には戻れないだろう。
 それにしても何故、この道の駅に展示されているのか、ここは成田空港に近いためか、もう少し調べてみよう。

 道の駅の新鮮市場で買ったものは、鰯の銚子煮、鮒の甘露煮、椎茸。これから利根川を下るものの、銚子には行かず、途中から鹿島灘に向かう予定なので、敢えて「銚子」の付いたものを選んだ。そして鮒は利根川産だ。椎茸は炒めても煮ても焼いても、美味しく食べることができるので重宝だ。
 コロナ禍の中での旅のため、各地の旨い物はレストラン等で食べず、道の駅やスーパーマーケットでその食材を買って、少し調理して食べることにしている。

 次に、発酵品の店に入った。味噌、しょう油、納豆、酒、甘酒等が所狭しと並んでいる。
 しょう油だけでもかなりの種類があった。味見ができるならば楽しいショッピングになったのだが、しょう油瓶の説明文を読んでも味は分からない。それでも、妻がいたならば、もう少し時間を掛けて、あれこれ購入したことだろう。
 地元民ではない人たちが多く立ち寄る道の駅ならではの何らかの工夫が欲しい。
 ちなみに私の妻は、生まれ故郷の熊本産の濃くて甘いしょう油を取り寄せて使っているため、その味に舌が慣れているため、「ジル」にも、そのしょう油を載せている。

 再び土手の道路(R356)を走り始めると、「歴史的町並み佐原(さわら)」や「水郷(すいごう)佐原」の看板が幾つも立っていた。
 数ヶ月前、水郷で有名な潮来(いたこ)を訪れたのだが、この佐原のことは知らなかった。
 ちょうど、道の駅「水の郷さわら」が見えてきたので立ち寄ることにした。

 そこのインフォメーションコーナーで入手した佐原観光マップから、散策を十分に楽しめそうなことが分かった。まだ昼前だったが、特産品直売所で昼食用の天丼を購入し、「ジル」の中で、観光マップをじっくり見ながら、インスタント味噌汁と一緒に食べた。美味しくてボリューミーな天丼だった。

 佐原の街の中の「伊能忠敬記念館」の裏手にある駐車場に「ジル」を停めた。コロナ禍のためか、空車スペースが多々あり、散策中にすれ違う観光客は多くなさそうで、少し安堵。
 記念館の横を抜けると「柳通り」に出た。そこは佐原の街の中心を流れる小野川沿いの道で、舟遊びする観光客向けの船が着岸していた。
 観光マップの表紙の「小江戸」の表現が気に入り、気分的に、そこにタイムスリップしようとした時、川に架かる橋から大量の水が滝のように流れ落ち始めた。そこは樋橋(とよばし)という橋で、かつては農業用水を送り続けた大樋の名残で、川に流れ落ちる音から「ジャージャー橋」と呼ばれている。

 その橋を渡った正面には、日本で初めて実測による全国地図を製作した伊能忠敬の旧宅があり、玄関から中に入ると広い土間のあるかなり広い家で、手広く商いをやっていた商家のようだ。縁側の下を流れる水路が印象的で、その組み合わせが実に良い雰囲気を醸し出していた。私の自宅では実現できない組み合せであり、自宅の庭の中を流れる水路や小川は憧れの存在だ。

 旧宅を出てからは散策を始めた。小江戸と名付けられるに相応しい風情を残す街並みが続いた。
 川を見下ろすと、本来は、櫓で漕ぐサッパ舟(潮来周辺の呼び名の櫓舟(ろぶね))は船外機で動く船だったが、ゆったりと進んでいた。舟の中にはなんと炬燵があり、それで暖を取っている男女ふたりが川端の柳越しに、小江戸の街並みを見上げていて、そのいい感じの風景の写真を撮った。
 私ひとりの舟遊びは贅沢なため、別の機会とした。その代わりに、船着き場までの数段の石段を下り、サッパ舟に乗ったつもりで、水面に近い高さから小江戸の風景を見上げ、舟運で栄えた往時を偲んだ。
 幾つかある船着き場にはどこも、何やら大きな木箱が置かれており、その中には、お雛様が鎮座していた。
 その理由を「街並み観光中央案内所」で聞いたところ、地元のお母さん方が町おこしの活動の中で、数年前に始めたという。今は、初春の風物詩として、無くてはならない存在になっているのだろう。小江戸の町並みに溶け込んでいた。

 ゆったりと流れる小野川、そのゆったり感が影響したのか、気が付くと、私の小江戸散策にかなりの時間を費やしていた。それは決して嫌いな時間の流れではなかった。そのせいか、伊能忠敬記念館や関東三大山車(だし)祭りの「佐原の大祭」の山車が展示されている「水郷佐原山車会館」に入る時間までは取れず、今回はパスすることに決め、別の機会に妻と行くことに決めた。

 観光マップによると、小野川が利根川に合流するポイントに、先ほど立ち寄った道の駅があり、そこには船着き場やカヌー乗り場もある「川の駅」でもあるようだ。まだ、そのシーズンではなかったためか、カヌーは見当たらなかった。

 この旅の後に見たNHKの番組「ふらっと旅ラン10キロ」で、タレントの福島和可菜さんがこの佐原町を走っていた。映し出されるシーンのひとつひとつに、この「キャンピングカーの旅」を思い出した。残念なことに、彼女が立ち寄った「市街地を一望できる展望台」と旅ランのゴール地点の「香取神宮」は観光マップの端に載っていて気が付かず、立ち寄っていなかった。

 佐原から鹿島灘沿いに北上するR51までは、利根川沿いに走ってからR356を下流側に下り、そのバイパス、県道、そして鹿島バイパス(R124)を走ることになる。
 先ずは、利根川と、霞ケ浦および北浦から流れ出る北利根川(常陸利根川)の二つの大河を渡った。その先の鹿島バイパス(R124)は中央分離帯のある上下4車線道路は鹿島港につながる道路だ。
 その道を走っていると、Yの字の形をした鹿島港の中央の港公園に立っている展望塔が見えた。前回の旅の時に立ち寄った時は、老朽化により構造物の一部が落下した直後で、塔の中に入れず、展望階から鹿島港やその周辺を見渡すことができなかった。その修理はもう終わったのだろうか?
 R51に合流する手前で、鹿島神宮の広大な鎮守の杜の横を走った。ここも、前回の旅で立ち寄った場所で、心の中で、旅の安全をお願いした。