悠々日和キャンピングカーの旅:⑨東北太平洋岸(茨城~岩手)
ここ地点までを、前回の旅も含めて振り返ると、千葉県から茨城県南部(県南・鹿行(ろっこう))にかけては、霞ヶ浦、利根川、軽便鉄道、水郷(潮来・佐原)、鹿島港、鹿島神宮などの観光ポイントがあり、栃木県出身のお笑い芸人のU字工事がライバル視する茨城県は、観光客にとっては訪れるスポットが幾つもある場所で、私のお気に入りの「キャンピングカーの旅」のコースのひとつになった。
R15に合流して北上していると間もなく、道路のすぐ左側に巨大な建造物が見えた。近付くに連れ、それは尋常の大きさではなく、道路標識から「カシマサッカースタジアム」だと知った。スタジアムの横を通り過ぎた先の駐車場に入り、スタジアム全体を見渡した。
嬉しい偶然がまた起きた。この旅の後、鹿島に関するテレビ番組が放映されたことだ。それはNHK番組の「地域発スポヂカラ!」で、カシマスタジアム建設の軌跡の経緯を知ることができた。
「30年前、工場が立ち並ぶこの町で奇跡が起きた。茨城県鹿嶋市は当時“コンビナート砂漠”と呼ばれ活気を失っていた。ここで奇跡を起こしたのは鹿島アントラーズ。砂漠に人々が溢れ熱狂し、町が生き返った」のナレーションで、この番組が始まった。
日本の経済成長を支えてきた鹿島は、工場で働く人は単身赴任者ばかりとなり、昼間は工場にいるため、娯楽施設が殆どない町はシーンとしており「コンビナート砂漠」と呼ばれ、町の再生が必要だった。
そこで市が目を付けたのは2年後に発足する「Jリーグ構想」。鹿島の住友金属にはサッカー部があり、Jリーグに参加できれば起死回生、町は生まれ変わる筈と考え、日本サッカー協会プロリーグ設立準備室を訪ねるも一蹴。その理由は3つあり、Jリーグ参入のための基本的な条件を全くクリアしていないことに気付いたのだった。
?先ずは、住友金属のサッカー部は弱く、問題外のレベルだったこと。
?次に、東京から遠い鹿島では観客動員が見込めないこと。
?ダメ押し的に、1万5千人を収容できる屋根付きスタジアムが無いこと。
その対策として、スタジアムを13ヶ月で建設できる工法を探し出し、その建設費を県が賄う約束を取り付けた。そして住友金属のサッカー部のままでは地域の協力を得られないことから、会社名を外したチーム名に変更し、11の自治体26万人の賛同を得た。
チームの強化策としては、1年前に現役を引退していたサッカーの神様ジーコをブラジルから呼び寄せ、チームメンバーは彼からプロの意識とスキルを学んだ。
以上の結果、Jリーグへの参加ができた。
カシマスタジアムで開催される鹿島アントラーズの試合では、多くの人が年齢に関係なく、皆一丸となった応援が行われ、“鹿島への誇り”が生まれた。その後のアントラーズの成績は、Jリーグ最多の8回優勝、2016年にクラブW杯決勝進出世界2位、2018年にアジアのチャンピオンシリーズ優勝、だった。
以上は、食い入るように見た番組の概要で、地方が実現したJリーグへの参加は、途方もなく巨大な「町おこし」だった。
曇天の今日、駐車場から見えたカシマスタジアムは、試合の開催日ではなく、クルマも人影も見当たらず、淋しいスタジアムだった。しかし、試合の開催日はアントラーズのファンの大歓声は鹿島灘に響くのだろう。
後で知ったのだが、スタジアムの横を走った翌日はJリーグの2021年の開幕戦だった。アントラーズファンで埋まったスタジアムを見たかったし、スタジアムグルメの幾つかを食べてみたかった。残念だった。
R51は海岸段丘の上を走っているため、鹿島灘は遠くに見える。近くに行ってみたくなり、ナビを見ながら、海岸までたどり着く急な坂を下っていった。
防波堤の手前のスペースにはサーファーのものと思われるクルマが数台停まっていた。
防波堤に上ると、そこは砂浜の海岸で、鉛色の鹿島灘が広がっていた。曇天だから仕方がない。
振り返ると、サーファーが住んでいる別荘のような家々が並んでいた。九十九里浜にも多くのサーファーの別荘が立ち並んでいるが、“そこまで沼ってしまうサーフィンの魅力とは”浮遊感や波の上でのターンなのか・・・、想像できないが、さぞ素晴らしいものなのだろう。
R51で北上を続けた。海側に、築山を持つ公園が見え、そこに登れば鹿島灘を見渡せるのではないかと思い、立ち寄ることにした。そこは鹿島灘海浜公園で、「ジル」を停めた駐車場から少し歩き、展望築山に登ったが、海岸側の松林で開けた鹿島灘は見えなかった。
この公園は海岸近くまで広がっており、「ジル」に乗って下っていくと、波打ち際に続く小高い丘に展望デッキがあった。そこに上がると、曇天下ではあったが、念願の広い鹿島灘が見え、暫く眺めていた。天気が良ければ、さぞ気持ちの良い海岸だっただろう。その夜、ネットで、鹿島灘海浜公園の画像検索をしたところ、晴れた日にもう一度、行きたくなった。
既に午後3時を回っており、今日のゴールは北海道に向かうフェリーターミナルのある大洗(おおあらい)に決めた。
戦車の描写が秀逸なアニメ「ガールズ&パンツァー(ガルパン)」の舞台になった町で、それも楽しみだった。ひょっとして、街の中に戦車が停まっているやも、まあそんな訳はないと思いながら向かった。
大洗への道路案内標識があり、R51からそちらに向かうと直ぐ、広い砂浜が見えた。
先ずは、鹿島臨海鉄道の大洗駅に向かい、観光マップを入手した。予想どおりというか、期待どおりで、駅舎内にはガルパンの特大ポスター(約縦3m×長さ7m)が貼られており、あちらこちらにガルパンのキャラクターのポスターも。
アニメのご当地キャラは今、日本中で見掛ける。私見だが、「ガルパン」と「ゆるキャン△」が東西の横綱で、その中央に「スラムダンク」か。
そして、フェリーターミナルに向かうと、ちょうど苫小牧行きフェリーが出船の向きで着岸していた。乗船を待つ自動車が列をなしていて、それと比較すると、フェリーはあまりにも大きかった。
ターミナルビル内で、港の駐車場内での車中泊の可否を伺ったところ、奥のスペースならば問題ないとの回答を頂いた。サンクス。
ターミナルビルの周りの駐車場には多数のトレーラーシャーシが並んでおり、トラクター(牽引車)は見当たらない。その状況から、トレーラーシャーシのみがフェリーで運ばれることを知った。そりゃそうだと納得。
入手した観光マップを見ると、フェリーターミナルの横はヨットハーバー、その南側の海浜公園には広い駐車場がある。
フェリーターミナルの奥はクルマの出入りで騒がしいと思われるため、今夜の車中泊の場所は海浜公園の駐車場に決めた。そこに移動した時、駐車場内の外灯に浮かぶ車は3台。やがて1台は出て行き、残ったのは「ジル」も含めて、2台のキャンピングカーのみになった。
「ジル」が揺れるほどの強い風が吹きつけており、揺れが最小限になるように、「ジル」の向きを変えた。
長い一日が終わろうとしていたが、洗濯ものが溜まっていることを思い出した。
スマホで「コインランドリー」を検索すると幾つか検索され、最も大きなところを選んで、そこに向かった。