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殺人前交換の殺人

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 というような話を聞いたことがあったが、それは間違いのないことだったのだろうか?
 それを思うと、背中に刺さったナイフが痛々しくもあるが、
「苦しまなかっただけでも、幸いだったのかも知れない」
 と、少しでもいい方に考えようとするのは、無理もないことだったのかも知れない。
 とりあえず、ただ怯えているだけではどうしようもない。とにかく、警察に電話するしかない。
 即死であるのは間違いなさそうなので救急車の必要はない。スマホの緊急電話で、110番に電話したのだ。
 死体を見てみると、死後硬直が始まっているのか、完全に石のような色になっていた。
「人間って、最後は、モノクロになっていくんだ」
 と感じたほどで、
「血の気が引く」
 というのは、こういうことなのだと感じたのだ。

                 特殊能力

 その時、それまで無臭だと思っていたそのエントランスで、吐き気を催すような臭いがしてきた。
「むっ、これはひどい」
 と思ったその瞬間、ふと何かに気が付いた。
「この臭い。初めて嗅ぐものではないような気がするな」
 ということであった。
 臭いのひどさを思い出すと、それがいつのことだったのか、分かってきたのだ。
「そうだ、あれは、小学生の頃、友達がケガして救急車で運ばれた時に感じた臭いではないか?」
 と思ったのだ。
 確かに、最近まで、あの時の臭いが何だったのか、分かっていなかったはずだ。しかも、最近特に、あの時のことを頻繁に思い出すような気がしていたのだった。
「あれは、何かの虫の知らせだったというのだろうか?」
 と感じたが、
「本当にあの臭いを今思い出したのだろうか?」
 という思いを感じた時、その信憑性を確かにするという意味で、
「最近、よく思い出していたような気がする」
 という、まるで、
「辻褄合わせではないか?」
 と感じるのだった。
 ただ、小学生の低学年で感じたショッキングな感覚は、そう簡単に忘れ去ることができるものではなく、しばらくは、
「時々、夢に出てきたりしたものだ」
 と思うくらいであった。
 それが出てこなくなり、あまり意識しなくなったのはいつ頃だったのだろう?
 最近になって、また思い出すようになって、そのことを感じるようになってきたのだった。
 小学生の6年間は、長いようで短かった。
 中学、高校の三年間ずつは、短いようで、長かった気がする。
 それでも、三年というのは、本当にあっという間で、どんどん記憶が薄れていけばいくほど、どんどん短く感じるのだった。
 ただ、それと反比例で、小学生の6年間は、遠ざかっていくほどに、
「長かったような気がする」
 という感情が強くあり、それはやっぱり、トラウマとなっているあの事件が大きく影響しているように思えてならなかったのである。
 そんなことを考えているうちに、警察がやってくる。パトランプをつけて、サイレンは鳴らしてはいなかった。
「サイレンというのは、追跡する相手がある時だけ鳴らすのかな?」
 と、配達員は感じたのだった。
 警察が入ってくるところだったので、ロックを解除すると、中に2人の刑事と、警官が数名。そして、
「F県警」
 という腕章をつけ、七つ道具のようなバッグを持っていることから、
「鑑識員なんだろうな」
 ということは、容易に想像がつくというものだった。
 無言で入ってきた警察は、ルーティンなのか、その手際の良さは、それこそ、
「さすが、捜査のプロだ」
 ということを思わせたのだった。
 まずは、捜査のための、
「縄張り」
 が出来上がっていくのを見ると、やはり鮮やか。
 無言のままで行われる雰囲気は、静寂を破るものが何もないことを証明しているかのようだった。捜査がこれからどのように進むのかまったくわからなかったが、この手際の良さから、
「さすが、日本の警察」
 ということを思わせたが、元々比較対象がないので、何とも言えないのであった。
 警察の手際よさに戸惑っているのは、その作業中、こちらをみる人が誰もいなかったということであった。
 見つめられるというのも、少し辛い気がするが、逆に見つめられないというのも、
「何を考えているんだろう?」
 と思うと、無視された感覚で、心細さが浮き彫りになるのであった。
 時間的には、2,3分ほどだったはずなのに、本人にとっては、
「30分近くは経っていたのではないか?」
 と思い知らされたのだった。
 経過した時間と、感覚的な時間に差があればあるほど、
「時系列への錯覚がはげしいのではないか?」
 と感じるのだった。
 このビルに入ってきた時の方が、先ほど警察は入ってきたよりも、最近に感じる。
 それは、意識の中で、
「この事件をなかったことにしたい」
 という思いが強いからではないかと感じるのだった。
「警察というものは、昔見た、テレビドラマでしか知らない」
 という人がほとんどだろう。
 しかも、テレビドラマで見ていても、
「まったく自分とは生きる世界の違う人たちの出来事だ」
 という気持ちで見ていたはずだ。
 まさか、自分がいずれ何かの犯罪の容疑者にされるなどということを、想像するような人はいないことだろう。
 取調室に呼ばれて、昭和の頃の刑事ドラマのように、
「お前がやったんだろう?」
 と言われ、髪を引っ張られ、ライトを当てられ、座っている椅子を蹴とばされるかのような捜査を、誰が想像するというのだろうか?
 今の時代は、警察の取り調べなども、コンプライアンスの問題か、それとも、後の裁判での、
「行き過ぎた捜査」
 ということから、弁護士に検察側がいくら何をいおうとも、操作方法に行き過ぎがあれば、弁護側有利になるのは、無理もないことだ。
 それだけ、警察というところの、
「冤罪」
 という問題が昔からあって、そういう意味では、
「警察側の自業自得だ」
 ということになるに違いないだろう。
 それを思うと。¥、
「確かに、開かれた取り調べは必要なのだろうが、甘い状態で、犯人が容易に自覚したあとで、敏腕な弁護士のやり方で、裁判がひっくり返ることも、あり得ることだといえるのではないだろうか?」
 ということになるのであった。
 警察というものが、戦争中をピークに、どんどん弱い立場になっていっているということは否めないだろう。
 昔の、特高警察などは、ほとんどが拷問である。
「反社会主義による、国家の転覆」
 昔でいえば、
「国家反逆罪」
 と言われることによって、死刑に相当するという時代があったのだ。
 何しろ、
「国を売る」
 のだから、それも当然のことであり、スパイ行為がバレると、本国はその人物の存在を否定することで、国家に保証されることはない。
 もっとも、それが、スパイの運命だと言えばそれまでである。
 警察もいろいろ調べていたが、ある程度分かったことがあったのか、鑑識が一人の刑事に説明をしていた。
「うんうん」
 と頷いていたが、聴きながらメモを取っていて、ある程度内容が分かってきたのか、
「ところで、第一発見者というのは誰なのかね?」
作品名:殺人前交換の殺人 作家名:森本晃次