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殺人前交換の殺人

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 ということを、警官に言っていた。話しかけられた警官とは、先ほど話をして、自分の身元の話だけはしておいて、
「後で刑事さんからお話があると思いますので、すみませんが、少しこちらでお待ちください」
 ということであった。
 その刑事というのは、今のところ、現状を確認しているだけだった。鑑識との話を聞くことで、分かっていることと、証言とのすり合わせで、証言の信ぴょう性を図ろうとでもいうのであろうか。
「すみません。お待たせしました。あなたが、通報者ということでよろしいのでしょうか?」
 と、刑事が利くので、
「ええ、私が発見しました」
 というと、刑事は警察手帳を出して、
「私はこういうものですが」
 ということで見せられた手帳には、
「桜井」
 と書かれていて、その肩書は、
「警部補」
 となっていた。
 年齢的には、40歳近くであろうか、自分よりも少し年が行っているくらいであろうか?
 と考えたのだ。
「すみません。少しお話を伺いたいのですが、あなたは、ここに新聞配達でやってきたということでしたが、このマンションには、どうやって入ったんですか? 自動ロックのマンションのようですが」
 と聞かれた。
「ええ、僕たち新聞屋、郵便配達の人間は、配達ができるように、自分たちだけの入り口とポストがあるんですよ。だから、あの男性が倒れているのが見えたですが、実際には近寄ってはいません」
 ということであった。
「じゃあ、あなたが、警察が呼んだ時は、事件現場には入れなかったということですね? だったら、どうして我々が入れたんですか?」
 ということを言われ、
「あそこの入り口にある非常電話で、管理人さんのところに連絡し、ロックを先ほど解除してもらったんです。自分もさすがにあの現場に入るのは気持ち悪いし、警察の許しのましに、入るのは怖いと思ったんですよ」
 というのだった。
「4じゃあ、あなたが、解除してもらってから、我々が来るまでというのは、どれくらいだったんですかね?」
 と聞くと、
「ものの。5分もなかったと思いますが」
 というと、刑事は急に表情を変え、
「それは本当ですね?」
 と聞くので、さすがに新聞配達員もムッとして、
「何を疑っているんですか、私はウソなんか言いませんよ」
 というのだった。
 「これは失礼」
 と刑事がいうと、
「そんなに疑うようでしたら、ここの警備会社にロック状況でも確認してみればいいじゃないですか? こういうロックをリモートでできるくらいなので、状態などというのは、ログのようなものを取っているはずですよ。防犯カメラだってそうじゃないですか?」
 と配達員がいうと、
「これは失礼。確かにその通りだね」
 と変に冷静にいうのだった。
 そこで、配達員は閃いた。
「なるほど、警察は、こちらをわざと怒らせて、何かを引き出そうとでもしているのではないだろうか?」
 と感じたのだった。
 だが、そのあたりのことは、この新聞配達委は少し分かっていた。
 最初こそ、普段見ることのない事件を目撃してしまったことで、精神が混乱をきしてしまったが、冷静になると、それほど、気になることでもなかった。
 何しろ、自分は、この事件とは関係がない。まず、あちらにいって、いろいろ触ったわけでもないので、指紋が付着しているということもない。
 しかも、防犯カメラがあるだろうから、それくらいのことはカメラが見ているので、一番安心だということ、ただ気になったのが、
「被害者が誰だか分からない」
 ということだった。
 もし、被害者が、自分とかかわりのある人であれば、第一発見者が自分であるということは、警察としては、
「ただの偶然」
 として見てくれるようなことはないだろう。
 だから、一番配達員が気になったのは、
「被害者が誰なのか?」
 ということだった。
 だからと言って、警察に、
「被害者は誰なんですか?」
 ということを聞くというのも危険だ。
 分かっていて聞いているのであるが、警察が別の見方をして、
「こいつは。事件のことを根掘り葉掘り気になっているようだ」
 と思うと、
「本当に事件に無関係なのか?」
 と考えることだろう。
 だから、彼は、
「ここは警察を刺激することはない。逆に身元を警察が分かれば、警察の方から聞いてくることだろう」
 と思って待っていると。警察は、そのことに触れる感じはない。
 あくまでも、時系列にともなった説明を聞きたいだけで、彼は、実際の事実を、時系列に沿って話をするだけだった。
 そんなことをしているうちに、マンションの玄関が開き、誰かが入ってきた。配達員には見覚えがあり、その人はmこのビルの管理会社の人であった。
「私が呼んだんですよ」
 と、桜井警部補が言った。
「すみません、防犯カメラの映像をお借りしたいんですが、よろしいでしょうか?」
 と刑事がいうと、
「いいですよ。それにしても、まさか殺人事件が起こるなど、思ってもみませんでしたよ」
 ということであった。
「犯人が映っているかも知れないということでしょうか?」
 と管理人が聞くと。
「ええ、それもありますが、今鑑識で疑いのあることがあって、そちらの検証の必要があって、それを検証するために、映像が必要になるですよ」
 ということであった。
 そこで管理人は、
「いつ、殺されたのか分かりませんが、こんな不特定多数の人が出入りすることができるこの場所で、カメラも設置してあるだろうに、よく殺人なんか行えたと、私は思っているんですよ」
 というではないか。
 それを聞いた桜井警部補は、身体をビクッと震わせたかと思うと、
「そうですね。私もそれは思いました。だから余計に防犯カメラを一番に確認しないといけないと思ったんですよ」
 ということであった。
 それを聞いて、配送員も、何か、興奮気味になっていた。
 彼は、数年前から、ミステリー小説を読むのが好きで、最近では、自分でもストーリーを考えることが好きになった。
「今回の事件は、ミステリーファンとしては、見逃せないものになってきたかのように思います」
 もちろん、そんな不謹慎なことを刑事の前でいうわけにもいかない。
 仮にも、人が一人殺されているわけで、警察が乗り出してくるきっかけを作ったのは自分で、第一発見者として、当然調書にも乗ることであろう。
 警察が話をしているのがかすかだが、聞こえてきた。
 配達員は、
「珍しい特徴」
 を持っていた。
 というのも、
「自分は、人が聞こえないようなヒソヒソ話が、集中力を高めれば、聞こえるんだ」
 というものであった。
 もちろん、集中力を要するので、それだけ神経を使うので、かなり疲れる。だから、この能力は、
「いざという時」
「タイミングを合わせて」
 使う必要があるというわけである。
 彼の能力を知っている人はごく一部の親友くらいであった。
 それほどの仲の人間ではないと、
「やつの前で話したことは全部筒抜けになる」
 と言われるに違いない。
 だから、ほとんどの人は知らない。知っているとしても、彼らであれば、
「他の人に話すようなことはしないだろう」
 という思いがあったのだ。
作品名:殺人前交換の殺人 作家名:森本晃次