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二人二役

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「中で、鑑識の人と話をしているようです」
 というので、
「そうか、じゃあ、中に行きましょうかね」
 といって、秘書を伴って、事務所に入った。
「ああ、市長の平松さんですね。私は。F署の桜井というものです」
 といって、警察手帳を提示した。
 そういえば、今では珍しくも何ともないが、昔は写真などなくて、胸から半分手帳を出すことで、警察だと訴えていたような気がしたが、たぶん、普通の黒い手帳だけでは、本当の警察官なのか分からないということで、警察になりすませて、極秘と言えるような情報を引き出そうとしている輩がいるか何かの理由で、写真付きの手帳を、しっかり相手に見せて、警察だということをしっかり認識させたうえで話をさせるということになったに違いない。
 そんなことを、管理人の奥川が思っていると、
「ところで、白骨死体って、誰が発見したんです?」
 と市長が聞くと、
「犬ですよ」
 と答えた。
「犬? 犬が死体を掘り起こしたと?」
 と聞くと、
「正確にいえば、この間の台風の影響が大きいんです。この間の大きな台風の影響で、公園もかなりの被害が出たでしょう? 管理人さんに聞くと、整備をお願いはしているらしいのですが、何しろ住宅に被害が優先なので、公園の整備には少し時間がかかるということで、荒れた部分が散見されるらしいのですが、その中でも、分かりにくい部分も被害に遭っていて、実はそこに埋まっていた白骨を犬が掘り起こしたようなんです」
 と桜井警部補は言った。
「そうなんですね」
 というと、
「そこで、普段は気にもしていなかったんですが、犬がゴソゴソと蠢いているところに、目がちょうどいったんですよ。その場所は本当に目立たない場所でもあるので、犬も立ち寄らないにも関わらず、何かゴソゴソしていると思って見ていると、急に飼い主の人が悲鳴を挙げるではないですか。どうしたのかと寄ってみると、そこに白い、石膏にも似たものがあったので、よく見ると、骨だったんですよ」
 と言ったのは、管理人の奥川だった。
「なるほど、それは、納得のいくことかも知れませんね。犬には何か臭いのようなものがあったのか。白く見えたものが光ったように見えたのか、何しろ犬の視線というのは、人間と違って、正面の高さですからね。掘り返してみるのも分かる気がします」
 と桜井警部補が言った。
「ところで、その白骨というのは、キレイな形で埋まっていたんですかね」
 と市長が聞いたので。
「ええ、ほぼ普通に埋まっていましたね。身体を切り離して一部だということはなさそうです。ただ、殺人事件であることに間違いはないので、我々の捜査になることに違いはないです」
 と警部補が言った。
「ちなみに、死後どれくらいなんでしょうか?」
 と市長が聞くと、
「正確には科捜研で調査をしないと分かりませんが、1年から2年の間くらいではないかと思われます。このあたりの土は城が建設されるだけあって、他とは違いますので、意外とすぐに白骨化するのではないかというのが、鑑識に見解でした」
「ということは、もう白骨以外のものは、他には身元を示すものはなかったということですか?」
「ええ、あの様子で行くと、服は着ているようですが、他に身につけているものはないようです。財布や身分を証明するようなものは、犯人が持ち去ったとみるのが一番なのかも知れないですね」
 と桜井警部補はいうのだった。

                 怪しい人物

「1、2年というと、この公園がある程度整備されてから、少し時間が経っていましたね。それを思うと、犯人が死体を埋めるにはちょうどよかったのかも知れませんね」
 と、平松市長はいった。
「なるほど、確かにこのあたりは、公園になっているので、わざわざ、公園の誰も立ち入らない場所には入ろうとしませんよね、そういう意味では、何か他に計画がなければ、捜索することはありませんからね」
 と桜井警部補は言った。
「でも、市の事業として、まったく何もしないというわけではないので、その情報がないとすぐに見つかるかも知れないですね」
 と市長がいうと、
「でも、その情報を掴むことができれば、一番安全なのかも知れないですね」
 というと、
「市の職員であれば、皆知ることができるんですか?」
 と聞かれて、
「全員に情報が流れるということはないですが、まずは、公園の管理をしている、環境関係であったり、史跡保護関係の部署などは、知っていますね。でも、別に緘口令を敷いているわけではないので、市役所にいれば、普通に機関紙や部内回覧なあどで、情報は普通に共有しています」
 と、市長は言った。
「なるほど、だったら、犯人にとって、今のところ、一番安全なのかも知れないですね」
 と警部補がいうと、
「そうかも知れませんね。今回のも、この間の台風の影響で少し露出したところを、犬が見つけたということなんでしょう? まあ、それはある意味仕方がないことですね」
 と市長が言った。
「白骨になった人が誰なのかって、すぐに分かるものなんですか?」
 と、市長が続けて聞いたが、
「そうは簡単にはいきませんよ。複顔をしたとしても、ハッキリと分かるものではない。ここまで白骨化していると、DNAも難しいのではないかと思いますね。できるとすれば、歯型や、治療による部分くらいしかないでしょうね。何しろ内臓もないので、病気も血液型も分からない。何をどこから調べていのか、正直困ります」
 と桜井警部補は言った。
「じゃあ、行方不明者の中で該当しそうな人を探すしかないのかな?」
 と聞くと。
「なんといっても年齢も分からないし、性別もハッキリとしない。肉の部分はほどんど残っていあいわけなので、本当にどうしようもないですよ」
 ということだった。
「警察の科捜研がどれほどの解明力があるかということでしょうね。さすがに、白骨化してしまっていると、人間の特定にまでは難しいでしょうね?」
「私も警察にいながら、科捜研のことまでは分かりませんね。さっき鑑識に聴いたところでは、性別はもちろん、年齢というのも判別が難しいということでした。だから、行方不明者といっても。今のところむやみやたらに調べなければいけないでしょうね。しかも、死体を確認してもらおうにも、これでは、確認してくれという方が無理です」
 というものだった。
「ということは、犯人とすれば、被害者が白骨化してしまった時点で、ある程度は勝ちだといってもいいじゃないですかね?」
 と市長がいうと、
「そうかも知れないですね、結果的に被害者の身元が分からなければ困るという人間でないと、ちょっと判明しないかも知れない。しかも、この状態であれば、自殺なのか、ただの死体遺棄なのか分からないということもあるので、そこまで考えると、今のところ、これが殺人であれば、犯人の思うつぼというところでしょう?」
 ということであった。
「なるほど、警察も今の時点では、お手上げ状態ということでしょうか?」
 と聞くと、
作品名:二人二役 作家名:森本晃次