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一人勝ち

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「感覚が薄れているのではないか?」
 と思えてきた。
 まずは、やつらに会う前に、どうしてターゲットを勉にしたのかということを、調べられる範囲で調べようと思ったのだ。
 脅しを掛けて吐かせることもできるだろうが、もしウソをつかれたり、警戒されると、結果分からなくなってしまうこともありえそうだ。
 それを考えると、実際に聴くということはしない方がいいように思えたのだ。
 小平独自の情報網は、その変の警察ややくざよりもしっかりしている。
 何しろ、金は唸るほどあるのだ。
 しかも、ここの社長は、先々代からの教訓で、
「お金の使い方さえ間違っていなければ、いくら使っても構わない」
 ということであった。
 ただ、それを間違えて、家を壊すようなことがないように、参謀という地位ができたようなものだったのだ。
 そんな山中家の代々の伝承に、いかにうまくまとめていくかが、小平の手腕だった。
 しかも小平は、世襲ではなかった。
「世襲は、参謀ではあってはいけないことだ」
 というもので、
「もし、主家が世襲を辞めない限り、自分たちが世襲を行うことはできない」
 つまりは、
「参謀か主家、どちらかが世襲でなければいけない。それはどちらであったもいいのだが、どちらも世襲、あるいは、どちらも違うというのはありえない」
 ということであった。
 ただ、今のところ主家が世襲を行っているのだから、ある意味、一番うまくいっている。
 参謀が世襲を降りなければいけないのであれば、主家が世襲をしなければならない。
 どうやら、このあたりのいきさつは、
「山中家と、小平家の関係にあったようだ」
 というのも、明治時代までは、小平家が主家で、参謀は山中家だったという。
 戦後から、今の体制に変わったのだが、小平家が、
「世襲ではいけない」

 というのは、修平が子供の頃にいわれていたことであり、ちょうど山中家が世襲でうまくいっていた時期だったのだ。
 戦後の動乱なのだから、
「うまくいっている」
 といっても知れている。
 小平も先代も、ハッキリとは分かっていないようだった。
 そんな過去の話は、小平は少しは聞いたことがあったが、息子は知らないだろう。
 もちろん、勉も知っているわけはないと思うのだが、以前、幸隆が何か知っているようなことを言っていたのを思い出した。
「長男も知らないようなことを、よく次男が知っていたな」
 と思ったのだが、普通に考えれば、
「父親が教えた」
 と考えるのが、一番無難ではないだろうか?
 ただ、それを長男が知らないというのもおかしなもので、
「世襲であれば、嫡男が存命であれば、嫡男が一番偉いのだ」
 ということは当たり前のことだ。
 というのは、先々代からの決まり事だったはずである。
 先代、つまり今の会長も、そのことを小平には何も言わない。
 小平とは、今まで、
「一蓮托生」
 として、ずっと歩んできた仲間だったではないか。
 小平にとっては、先代と、子供たちの仲に、何か不都合があったようには思えなかった。
 ただ、今回の、
「美人局事件」
 であるが、これにしても、
「どうして、勉が選ばれたのだろう?」
 と思うのだった。
 確かに、大きな、金を持っている会社の社長ということになれば、
「守りたいものがある」
 ということで、金を出すと考えるのは普通なのかも知れないが、山中家というと、その変の会社と違い、全国的にも大手で、いろいろな産業にも手を出しているところだったのだ。
 しかも、その社長である勉が、いくら何でも、美人局にやられるなど、ちょっと信じられなかった。
「誰か信用できる人でも仲介に入っていなければ」
 ということで、まだ表に出ていない、その人物がどのようなことをもたらしたのかということが気になるのだった。
 父親の考えもよく分からない。これまで一蓮托生だと思っていた先代も分からなくなりかかっていたのだった。
 ただ、彼らに対しての制裁は決まっていた。その前に、
「いかにして、少しでも、裏で暗躍している連中の尻尾を、掴むことができないだろうか?」
 ということを、小平は考えていたのだった。
 だから、本来なら、地ならしができれば、すぐにでも行動に移るであろう小平が、躊躇しているのを見て、部隊を形成している連隊長のような人たちは、不思議に感じていたのだ。
 今まで、いろいろなトラブルを裏に回って、処理をしてきた。江戸幕府でいえば、
「御庭番衆」
 であったり、
「新選組」
 のような浪士であったりしたのだろう。
 そんな彼らに、小平本人は、
「まさか、自分が、そんn弱気な姿勢を見せているなど、想像もしていない」
 と思っているに違いない。
 バカップルに遭う前に、まずは、やつらの素性を確認しておいた。
 やはりどこかの組織と表立っては関係していないようだが、小平の部隊に掛かれば、簡単に分かってしまう。まるで忍者のごとく、相手が振る舞っているので、バカップルとの連絡も、普通では信じられないような方法で行っていた。
 それが、逆に味方も欺くような形になり、二重三重に幕が張られている。
「バカップル」
 のような連中を使ったのも、そのためだったのだ。
 根気よく探ってみたが、なかなか見つからない。そして、それでも自分独自の捜査網を駆使して捜すと、ある点から見付けることができた。
 これはある意味、小平だから見つけることができたのだ。警察のように、
「組織的な動きをするところ」
 では無理だっただろう。
 それだけではなく、小平という人間。いや、山中家というものに関わっていることでしか分からないことが原因だったのだが、正直、小平のような百戦錬磨の男でも、
「ウソだろ?」
 と感じたほどだった。
 そこで、次に考えたのは、
「じゃあ、今度はあのバカップルから、責めるか?」
 ということであった。
 組織を使って二人を拉致してきた。これは、実に簡単なことで、二人は無防備、自由に行動していた。事が済めば、後はもう組織とは関係のないということで、逆にあのバカップルとは、もはや関係ないということにしておく方が組織としても、後味が悪くなくて済んだのだ。
 ただ、真犯人は少し気になっていたかも知れない。
 実行犯とすれば、
「もう自分たちには関係のないことで、こんなクソみたいな犯罪はすぐにでも忘れてしまいたいのだ」
 と思っているに違いない。
 だから、犯行グループは、今はバカップルとは関係のないところにいるが、犯人側は、そうもいかない。一応、バカップルと面会もしているからだ。
 小平は、捕まえてきたバカップルを尋問した。
「お前たちは、何が目的で、こんな美人局のようなことをしたんだ?」
 と聞くと、
「俺たちは、元々自分たちだけでやってたんだ。そこへ組織がやってきて、最初は大目に見てたけど、もう見過ごすわけにはいかない。だから最後に一つ仕事をして、それで終わりにしろと言われたんだ」
 というではないか。
「その仕事というのが、山中勉を陥れることだったんだな?」
 と言われて、
作品名:一人勝ち 作家名:森本晃次