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一人勝ち

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「ああ、そうさ、あいつは本当にチョロかったせ。今までの連中よりもな。ただ、それなりに教育を受けているからなのか、最初はコロッと騙されていたが、次第に怪しむようになってきたのさ。それには俺たちもビックリしたけどな。だから、上の人に、やめた方がいいかもって言ったんだが、ここまで来てやめられないって言われたんだ。だからしょうがなくやるしかなかったんだ」
 というではないか。
「じゃあ、お前たちを操っている連中って誰なんだ?」
 と聞くと、二人は黙りこんでしまった。
「お前たちが黙り込んでいるなら、それでもかまわないのだが、お前たちはそれで本当に安全なんだって思っているのか?」
 と聞かれて、さらに黙っていると、
「お前たちは組織から、こちらとは一切関係ないから、余計なことを喋るなと言われているんだな」
 というと、バカップルも、少し反応したようだ。
「なるほど、お前たちはそれを信じたようだが、組織は、自分たちが手を下さなくても、お前たちはもう終わりだと思っているようだ」
 と小平がいうと、二人は急にビビッてしまうと、
「どういうことだ?」
 と聞いてくるので、
「お前たちは、今までいろいろ美人局をやってきたのだろうが、それは、相手が金持ちを狙ったわけだろう? しかも、有名人、著名人などをターゲットにしてな。それは警察に訴え出ないということだけを考えてのことだったのかも知れない、なぜなら、彼らには、守るべきものがあるからさ。特に世間に知られることは致命的だ。だったら、少々の金で解決できるのであれば、と思うのは当然さ」
 と小平がいうと、
「それがどうしたっていうんだ?」
 ときくと、
「お前たちは、自分のことしか考えないから分からないのだろうが、彼らは、守るべきものがあるから、警察には言わなかったんだ。つまりは、彼らとすれば、守るべきもののためには、どんなに金を使ってでも、災いを排除しようとするはずさ。しかも、彼らにも組織のようなものがバックにはいるということさ。それも、元々の大きな組織というわけではない、いわゆる親衛隊による警察のような組織といえばいいのかな? そういう意味では、本当に何をするか分からない連中で、それこそ、人の命なんか、どうでもいいと思っているかも知れないな」
 というのであった。
 それを聞いたバカップルは、完全にビビっているようで、急に体を震わせた。
「そんな……。じゃあ、俺たちはどうなるっていうんだ?」
 と、やっと自分たちの立場に気づいたのか?
「だから、お前たちに依頼した連中は、お前たちを野に放ったのさ。自分たちが手を下さなくても、どこかの誰かが、お前たちを葬ってくれるってな」
 というと、もう完全にべそを掻いて、
「助けてくれ。俺たちは、死にたくない」
 という。
「じゃあ、黒幕の正体をいうんだな。そうすれば、俺たちの組織で守ってやる。というか、組織に入れてやらないまでもない」
 というと、二人は、
「ああ、そうしてください。相手の組織というか首領は、実はここの、帝王学の先生として君臨している茨木先生という人と、次男の幸隆という男です」
 と白状した。
 そのことは、自分の組織の調査で分かっていたことだったので、もう、これで疑いようのない事実になった。
 これで、勉を始め、幸隆までもが失脚させることは容易になった。先代に話をすると、
「しょうがない」
 ということで、山中家の天下もここまでだということを悟ったようであった。
 小平は、他の会社に勤めさせていた自分の息子をこっちに引っ張ってきて、社長に据えた。
 元々、参謀となるべく帝王学は学んでいたので、融通の利く息子は、すぐに順応したのだった。
 そして、小平家が山中家を引き継ぐ形で、立場は逆転した。
 幸隆の組織は、そのまま小平に吸収され、もう勉も幸隆も力を持っていない。
 茨木先生は、やくざの組織に入れられることになり、それが制裁となった。完全に、小平家の
「一人勝ち」
 だったのだ。
 それを思うと、この事件というのが、本当に偶然だったのかと、客観的な人間にしか感じることができないほど、実に巧妙だったといえるのではないだろうか?
 真相は分からない。ただ、小平修平が、ほくそえんでいるというのは、事実だったのである……。

                 (  完  )
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作品名:一人勝ち 作家名:森本晃次