タマゴが先か……
しかし、話が絞られてくるようになると、キーパーソンになってくるのだった。そのことを誰が知っているというのか、そのことを、今後の展開でどのようになるか、楽しみである。
「無関係の人間がどんどん関わってくる」
あるいは、
「終わってみれば、あの男は、今回の事件にまったく関係はない人だった」
ということが、重要な手掛かりになったのだと分かると、まんまと作者の計略に引っかかったようで、
「うまくやられた」
と言って、舌を巻くことになるだろう。
鹿之助
ただ、この話も、他にもいろいろな伏線や細かいトリックが、施されていて、その状態をしっかりと見ていかないと、話しにおいていかれることになる。
それを思うと、どうしても、話が先に進むにつれて、
「話についていけない」
ということになり、最初の頃に出てきた相手が、どんどんクローズアップされてくると、読者もそれにつられるように、その男の動向を追ってみるというのも、無理もないことである。
それは、ミステリーなどでよくある、作者が読者をミスリードするという意味においての、
「トラップ」
と言われるものではないだろうか?
今回のこのゲームは、
「というよりも、ゲームというもの自体が」
といえばいいのか、
「大体において、匿名性があり、ハンドルネームを使うことで、誰が誰か分からない」
と言えるのではないだろうか。
すなわち、
「仮面舞踏会」
に参加しているようなものだ。
仮面舞踏会といえば聞こえはいいが、
「秘密クラブ」
のような、少し怪しい、反社会的組織が資金稼ぎのために運営している、カジノのような、特殊賭博のような臭いがする。
あるいは、
「秘密クラブ」
という言葉そのもののように、売春目的の怪しげな金持ちを対象にした、パーティのような臭いを感じさせるのは、昔の、特に戦前戦後の探偵小説を読んだりしているからではないだろうか。
さすがにそこまでは大げさではあるが、顔が見えないことで、最近は、ネットを使っての詐欺などが横行していて、さらに手口も悪質化している。
昔であれば、対象者は、ある程度、絞られていたが、今では全国、いや、全世界のネット民であれば、子供から老人まで、それこそ、老若男女、すべてがターゲットになりうるのであった。
ただ、昔から狙われるのが、老人が多いというのと、
「老人をターゲットにする詐欺が過去の事件でひどかった」
というのが、大きいので、どうしても、老人がクローズアップされてくる。
しかも、それらの犯罪には、反社会的勢力であったり、カルト宗教といった、
「組織として、金が必要だ」
という連中が、
「手っ取り早く金儲けをする」
というには、パターンはあるだろうが、目的とターゲットは、自然と絞られてくるのだった。
ただ、若い連中にも、その詐欺大将は多く、例えば、携帯電話会社を名乗って、銀行に振り込みをさせたり。最近では、国税庁を名乗る輩もいる。
しかも、
「普通なら、騙されないだろう」
と思うような手口に引っかかるのだ。
「本日中に振り込め」
といって、ダイレクトメッセージで、コンビニからしか振り込めない時間に送り付けてきたり、
「税金の滞納と言っているのに、ジャスト40000円など」
ちょっと考えれば、
「そんなのおかしい」
と思われるような手口に、パニクってしまうと、コロッと騙されるのだった。
このゲームにおいて、関係がある3人のハンドルネームの由来は前述のとおりであったが、後の二人というのも、戦国時代のものであった。
一人は、前述にて、嫌というほど、名前を出してきたが、それが、裏切り者の代名詞とでも言っていいだろう、
「光秀」
であった。
そしてもう一人は、歴史に詳しい人間でなければ、なかなか名前が出てこないであろう、
「鹿之助」
という名前であった。
もちろん、このゲームに参加している3人は、歴史には相当造詣が深いことで、
「鹿之助」
というと、山中幸盛であることは分かっていた。
山中鹿之助という人物、彼は、元々、山陰地方の大名であった、尼子氏の武将であった。尼子氏は、中国地方の覇者であった毛利氏から攻められ、滅亡の危機にあったのだ。
その際、あくまでも、主君である尼子晴久に付き従い、裏切ることなく尽くしたのが、この男、山中鹿之助であった。
彼には、数々の武功があった。
特に一騎打ちに関しては、その名を遺すだけの人物で、武功の数々は、後世にもその名をとどろかせている。
さらに、彼は部下に対しても気遣いのできる人間で、まさに自分の死が近いことを悟った時、配下の兵たちに対して、労いの手紙を送っている。
さらに、彼を有名にした決定的な話としては、
「我に七難八苦を与えたまえ」
と、月に向かって祈ったという逸話が残っている。
その趣旨に関しては、諸説残っているが、これらのことから、後世の偉人たちも、
「尊敬する人物は、山中鹿之助」
と、評価を高く認められているのだった。
そういう意味で、この名前を使ったということで、この場に出てきた意気込みのようなものもあることだろう。
この三人。つまりは、景虎、景勝、帰蝶も、それぞれに、この鹿之助と名乗る人物に対して、
「さぞや、尊敬に値する、評価の高い人物なのだろう」
と考えているのだった。
このゲームをやっている時、オープンチャットでの会話をしながら、それぞれの人間性を推理していくものだということで、
「他の人にも見られてしまう」
という会話の他に、実は、プライベートメッセージのやり取りができる機能がついていた。
これは、昔からあるパソコンなどにあるような、
「メッセンジャー」
のようなものであったり、スマホなどの代表的なアプリ昨日としての、
「LINE」
などとほぼ同じものだったのだ。
だから、2人だけの本当のプライベートメッセージのやり取りだけではなく、任意に形成した、
「グループLINE」
のような機能もある。
プライベートメッセージを送った相手とそれぞれ、複数のLINEで繋がっているところに、
「他のユーザーを招待する」
と言った形で、自然と出来上がるのが、
「グループLINE機能」
なのであった。
そんな機能を使って、仲間である3人は、独自で会話していた。
これは元々仲間である3人のことなので、当たり前のことだろう。
「この、鹿之助って人、当然、あの山中鹿之助を意識してつけている名前なんでしょうね?」
と言い出したのは、帰蝶だった。
帰蝶という女、こういう義理堅い人間には、とても弱いところがある。気が強いことで、まわりから、
「帰蝶にすればいい」
と言われてつけた名前だったが、そもそも、昔から、三人の間で言われてきた言葉だったではないか。
帰蝶とすれば、
「気が強いということでつけられたハンドルネームなんだろうな」
と漠然と感じていたが、実際には、気が強いというよりも、彼女の中に、何かの覚悟のようなものを感じ、
「覚悟を示す時期がくれば、潔く自分の気持ちに忠実に生きるタイプの人間だ」