小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

タマゴが先か……

INDEX|13ページ/21ページ|

次のページ前のページ
 

「これで、いつ話しかければいいのかが分からなくなったな」
 とも思えた。
 その時に感じたのは、
「彼が孤独だと思っていたから、つき合っていけたんだ」
 という感情もあった。
「あいつは孤独という性格があるから、受け入れることができたんだ」
 という思いだったのだ。
 つまり、
「彼の最大の特徴であり、だからこそ、分かる部分もたくさんあった」
 と思っている。
 それが、孤独ではなくなってしまうと、
「孤独しか知らない相手と、これからどう接していけばいいのか>-?」
 と考えてしまう。
 実際に、孤独でなくなった彼と距離を置くことが、一番無難であるということも理屈としては分かったことであり、実際に距離を置いてみると、別に変わったところはないことから、
「距離を置くことが一番自然なんだ」
 と思い、実際に距離を置いた。
 そういう意味では、東京に出てくれたことは必然であり、
「遅かれ早かれ、こうなる運命だったんだろうな」
 と感じた二人だった。
 景勝が、
「元々は距離のある存在だったんだ」
 と思うと、本当にどうしていいのか分からなくなり、
「やはり、距離を置くのが一番ではないか?」
 と一周回って、戻ってきたことが結論となったのだった。
 そんな二人の間で、実は最初は、
「付き合ってみようか?」
 と言い出したのは、景虎の方だった。
 普段とは、まったく違う雰囲気の景虎に、帰郷は、少し戸惑っていた。
「うん、いいけど」
 という曖昧な返事しかできなかったのだが、それは、別に、
「景勝を意識していた」
 というわけではなかった。
 景勝のことを好きだと思ったこともないし、遠慮する必要もないのに、景勝がいないのをいいことに、景虎と付き合うというのは、何か違うと思ったのだった。
 それがどこか、
「義を重んじる」
 という景勝のようで、嫌だった。
 帰蝶は、本当は、
「義を重んじる」
 などということは大嫌いだった。
 なぜなら、
「まるで、偽善者のようじゃない」
 と思っていた。
 帰蝶は、
「私は偽善者なんか、大っ嫌い」
 と、景虎の前でたまに零していた。
 景虎なら、黙って、自分の胸の中に収めてくれているだろうと思ったからだ。
 景虎という男は、自分から進んで、輪を乱すようなことは決してしまい人だと思っている。
 三人の中で、
「無難に済ませよう」
 と思っているのは、景虎なのだろうと思っていたので、景虎に波風を立てるようなことはしないに違いない。
 その思いがあったことで、景虎には、恩義は感じていた。
 自分の気持ちを汲んでくれることや、気を遣ってくれることには感謝していた。
 しかし、
「鬼のいぬまの盗人のようなことをするのは、何か違うんじゃないか?」
 と考えたのだ。
 それも、景虎にそんなことをさせるのは、忍びない気がした。
 しかし、それを差し引いても、帰郷の中に、
「景虎と付き合ってみたい。もしつき合ったとすれば、どんな気持ちになるだろうな?」
 と思うに違いない。
 それを考えると、曖昧な態度しか取れなかった帰郷の気持ちは、それこそ、本音だったに違いない。
 それでも、何度も告白されて、そして季節が秋に変わってくると、帰郷の気持ちは少しずつ、景虎に傾いてきた。
「じゃあ、よろしくお願いします」
 と言った時の、景虎の嬉しそうな顔は忘れない。
 本当に無邪気で子供のようなその雰囲気は、
「私が思った通りの人なんだわ」
 と、帰郷にも納得のいく顔をしてくれたことに対して、お礼をいいたい気分になっていたのだ。
「これからも、よろしくな」
 といって付き合い始めたのだが、まさか、あんなに早くボロが出るなんて、思ってもみなかった。
 だが、逆にいえば、早く知れたのはよかったのかも知れない。
「もっと遅くなっていれば、嫌いな気持ちが中途半端になって、逃げるに逃げられない、底なし沼に嵌ったことを自覚することだろう」
 と感じるに違いない。
 底なし沼に足を取られて、出ることができないということは心中と言ってもいいのだろうが、その時は、
「景虎とだけは、ごめんだ」
 と考えたに違いなかった。
 そんなことをしているうちに、東京で彼女を作った景勝だったが、彼は彼で、すぐに別れてしまったようだ。
 それは、景虎と帰蝶が別れるようになる、さらに前であった。
 要するに、
「帰蝶と景虎が迷っている分、二人の方が別れるのが遅かった」
 というだけで、つき合っている期間はほぼ変わりはなかった。
 そして、お互いに、
「俺たちのようなすぐに別れるカップルなんて、珍しいだろうな」
 と思っていただけに、その思いはひとしおだったことだろう。
 そして、そんな三人に共通しているのが、
「こんなはずではなかった」
 という思いである。
 景虎と帰蝶の場合は、先に帰蝶が違和感を感じ、感じてしまうと、どうしようもなくなり、別れを告げることになったのだが、景勝の場合は、違和感を感じたのは、景勝の方だったのだ。
「こんな人だとは思わなかった」
 と、気付いてしまうと、さらに嫌いになる方で、まったく相手にしないという感覚になってくる。
 何が嫌いになったのか、最初のきっかけは、
「相手のことを嫌いだ」
 と思っている間は気づかない。
 しかし、別れた後で、少しだけ後悔のようなものがあるのだが、それは寂しさからくるものに違いないのに、冷静になると、何が嫌いだったのか分かってくるようになる。そして、
「今度はこのことで嫌いになるような相手を選ばないようにしよう」
 と思うのだが、また選んだ人は同じなのだ。
 ということは、
「自分が好きになる相手はパターンが決まっていて、しかもそれが嫌いな部分のごく近くにあるのだろうな」
 ということに気づいてくる。
「長所と短所は紙一重」
 と感じるのだろうが、まさにその通りなのであろう。
 そのことは、帰郷も、景虎も思っていることだった。
 お互いに関係のないことであったが、三人はそれぞれ、知らないところで結びつくということが、結構あるという証拠なのだろう。
 さて、そんな三人が参加したこのゲーム。
 ここには、5人という定員がある。
 いや、
「五人でなければできないゲーム」
 ということで、まるで、将棋や囲碁のように、決まった人数でしかできないゲームと考えると、
「ガチで勝負系のゲームということになるのだろう」
 と考えた。
 戦争で考えれば、
「兵が多いから有利だというわけではない。いくら数的有利にあったとしても、それをまとめる才覚がなければ、ただの無用の長物ということになり、戦争ではまったく役に立たない」
 と言っても過言ではないであろう。
 今回のこのゲームで五人のうち三人が、ガチの知り合いで、後の二人は分からない。
 しかし、もう一人は、ある意味、
「この中の誰かと関係がある人だ」
 ということであるが、実はもう一人というのは、この中で、いや、このお話の中で、
「まったく関係のない人間だ」
 と言えるであろう。
作品名:タマゴが先か…… 作家名:森本晃次