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双子

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 つまり、何かの欲を抑えれば、それだけ別の欲にその力が発揮され、逆に、何か一つに力が集中すれば、他のことはおろそかになってしまっても仕方がないというように、人間の精神や肉体の構造はそうなっているということであろう。
 それが、
「ホルモンのバランス」
 という、抽象的で、中途半端な表現になるのではないだろうか?
 そんな状況において、
「どういう感情を持つか?」
 あるいは、
「ホルモンのバランスというのが、どういうものだというのか?」
 ということを考えるのであった。
 すると、
「ホルモンのバランス」
 という表現が使い勝手がよく、中途半端で曖昧な表現であることに気づく。
 自分の欲が、
「思春期になれば、すべて日の目を見る」
 ということではないとは思ったが、逆に一概に言われる欲が一つでもないと気になるところであった。
 ただ、欲というものは、たいていの場合、あまりいい意味で用いられない。それはきっと、
「欲を持ちすぎると、犯罪行為に走ったり、自分を見失ったりするからではないだろうか?」
 ということなのではないだろうか?

                 行方不明事件

 そんな欲というものについて考えるようになると、
「俺が太ってきたというのにも、何かわけがあるだろうな」
 と感じた。
 それが、
「性欲のなさ」
 というものであった。
 正直、自分が性欲が少ないと思ったのには、理由があった。
 女の子に興味を持つまでに、しばらくかかったということ。
 これは、普通に、
「晩生だ」
 ということなのだろうが、しかも、異性に興味を持ったのは、性欲からではなかった。
 どちらかというと、
「寂しい」
 という感情に近いものではないかと思ったのだが、その理由としては、
「友達が、女の子と一緒に歩いているのを見て、いいなと感じたからだった」
 というのが理由だった。
 別に性的なことで、女性に興味を持ったわけではない。ただ、一つだけ気になったのが、
「セーラー服」
 のような、女学生の服装であった。
 ブレザーでもいいのだが、制服というものを着ている女の子に、興味があった。同じ子が、私服を着ていても、そこまで感じるものではなかったのだ。
「紺のハイソックスなど履いていれば、もう妄想がハンパない」
 と考えていた。
 つまりは、
「制服フェチ」
 と言ってもいいだろうが、制服を着ている女の子に対しての、自分の中の性欲はかなりのものであった。
 そういう意味で、性欲は極端に少ないわけではない、一部に対してだけ、異常な反応を示すというものだ。
 だから、クラスメイトが女の子を連れているところを見ると、気になるのだ。性欲を抑えきれないところまでは行っていないと思っていたので、
「自分には性欲がない」
 と思っていただけで、ただの、
「フェチ」
 というだけのことだ。
 それが分かってしまうと、本当はまわりに隠したがるものなのだろうが、忠次は、逆にまわりに自分が、フェチだと宣伝したいくらいであった。
「制服というものが、一体どういう魔力を持ったものなのか?」
 ということを、自分では分かっていない。
 しかし、それを極端に最初分かった時は、
「恥ずかしい」
 と感じ、自分が、
「羞恥心の塊ではないか?」
 と感じるのだったが、いつの間にか、羞恥心がなくなっていて。性癖を公表したいと思うようになった。
「一種の露出狂のようあものなのだろうか?」
 と考えるようになったが、どこまでが露出狂なのか正直分からない。
 ただ、人間というものは、
「程度の違いはあれど、誰かに見てもらいたいという思いは、評価を受けたい。自分をもっと知ってもらいたい」
 という思いが重なってきているからであろう。
 それは、男でも女でも同じで、なぜか目立つのが女の方、目立つ方がむしろ、
「いいのではないか?」
 と感じる。
 女の露出狂は、羞恥心との裏返しであり、性的に、
「芸術だ」
 と言えるが、男性の露出は、何か汚らしいものが見えているようで、
「何か犯罪の臭いが感じられるな」
 と思わせるのであった。
 これは、もう芸術などではない。もし、芸術の欠片でもあるとすれば、
「一度は通ったが、通り過ぎただけではないか?」
 ということになるのであろう。
 露出狂も一種のフェチなのだろうが、本当の露出狂と言われる人たちは、
「何か特定のものを見ようとしているのではない」
 のだろう。
 特定のものに興味を示すのが、フェチであり、特定のもの関係なく、ただ、表に見せびらかせたいと思うものが露出狂なのだろう。
 だから露出狂は、
「何に対して興味を持っているのか分からないから、全体を露出し、見せつけることで、自分の目指すものを見つけていこう」
 という考えなのかも知れない。
 それが、露出と、フェチの違いなのではないだろうか?
 とは言いながら、性欲がまったくないというわけではない、
 しかし、女性の前に出ると、完全にシャイになって、何も言えなくなる。ただ、兄貴に手紙を頼まれたあの時は、まだ、異性への感情が何もなく、相手を、
「異性だ」
 という意識もなかったのだった。
 だが、後から思えば、なぜか、嫉妬心が湧いていた。
 この感情はどこから来たというのだろうか?
 ただ、
「異性への興味」
 というものが湧いてきたのは、それからそんなに間もなかった頃だった。
 ということは、
「あの時に感じた嫉妬というものに何か原因があるのではないだろうか?」
 と感じたのだ。
 確かに、
「男に寄ってくる女の子を見て、羨ましいと思ったことから、異性に対して不思議な興味を持ったんだったな」
 と思った。
 正直、忠次は、
「同年代からの性教育」
 というものはすでに、
「受講済み」
 であった、
 クラスには一人くらい、自分が得た性の知識を知ったかぶりして、誰かに話したくてたまらない輩がいるものだ。
 忠次のクラスにもそんな奴はいて、
「教えてほしい」
 などと一言も言っていないのに、勝手に話しかけてくるのだ。
「そんなに勝手に話しかけてきたって、俺は別に興味はない」
 と思うのだが、その割には、身体の一部がムズムズする。
「ああ、小学生の頃にもあったような」
 として思い出すのが、戦隊ものの特撮子供番組を見ていて、女性戦隊のお姉さんが、人げの姿でいる時の、隊員服の以上にミニなスカートを見た時、ムズムズした経験があったからだ。
 今から思えば、思春期の準備段階だったのか、後から聞けば、友達も皆そうだったというではないか。
 テレビ局の策略に見事に嵌り、視聴率アップに彼女たちは貢献しているのであろうが、子供としては、
「なぜ、こんなことになるんだ?」
 と、まったく分かっていないのと同じではないか。
 小学生の間の唯一の思春期であった。
「そういえば、小学生の時、お姉さんに憧れたことがあったな」
 というのは、口に出さないだけで、誰もがあるのではないだろうか。
 大人になってから、戦隊ヒーローものの、
「紅一点」
 と呼ばれる、女性戦隊のお姉さんを追いかけたりするヲタクもいるという。
作品名:双子 作家名:森本晃次