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双子

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 まずは、例の電化製品などの粗大ごみともいえる廃棄場。ここを一か所として、そこからすぐ近く。隣接しているといってもいいその場所には、鎮守様のような神社があった。
 その神社は、境内から、奥に森もあるので、そこまで含めてしまうと、とてもじゃないが、かくれんぼとしては、フォローできるわけもない。
 だから、神社だけでかくれんぼをする時も、
「境内まわり」
 あるいは、
「奥の森だけ」
 ということで分けていた。
 しかし、奥の森を範囲にすると、境内の裏にある井戸が、子供には危ないということで、境内まわりの時も奥の森の時も、
「境内の裏庭」
 だけは、その範囲から外すようにしていたのだった。
 その日は、境内を無視して、廃品回収の場所だけに限られた。
 隠れる場所は結構あった。ただ、下敷きになってはいけないので、これも、見える範囲だけという制限が掛けられた。
 もし、今回の事件がなくとも、ある理由で、この廃品回収での遊びをやめようと言われていた。
 その理由は、
「空気が悪く、気分が悪くなる人間がたまに出るようになったからだ」
 ということだった。
 しかし、そんな秒読み状態だったリサイクル場でのかくれんぼも、他の理由で、危険であることが露呈するとは、子供たちも、想像もしていないことだったに違いない。
 というのは、その日は、晴れていて、季節は晩秋であったが、朝晩の涼しさに比べて。昼間は、真夏に近いくらいの温度差によって、暑さを感じていた。
 いつものようにかくれんぼをしていたのだが、始めたのが、ちょうど一番暑かった時間帯の午後3時くらいだっただろうか?
 最初は皆みつかり、今度は鬼が変わることになった。
 皆、いつものように各々隠れたのだが、実際に鬼が探しにいくと、一人だけ、どうしても見つからなかったのだ。
「おーい、どこ行った?」
 といって、皆が探し回ったが、どこからも声は返ってこずに、気配すら感じられなかった。
「まさか、神社の方に行ったのでは?」
 ということで、神社の捜索隊が出た。
 そして、しばらくしてから、
「いや、見つからないな、やっぱり気配もしない」
 というではないか。
 空はいよいよ日が傾き始めて、いわゆる、夕凪から、
「逢魔が時」
 と言われるような、カラッと晴れた日であっても、この時間になると、理由も分からずに、空気に湿気を帯びている感覚を覚えるのであった。
「家に帰ったんじゃないか?」
 と誰かが言い出した。
 これは、本当に最後の手段だった。
 一人の家に、
「帰ってきていますか?」
 などと聞くと、この時間だから、
「うちの子供がいなくなったということ?」
 と、大人はすぐに悪い方に考えてしまうくせがあるようなので、すぐにそう来ることだろう。
 そんなことは分かっている。
 だから、もし、自分がそれを通報するようなことになると、大人はきっと、
「私たちが言った通りでしょう? あんなところで遊ぶのは危ないって」
 と言い出すに違いない。
 最初からそんなことを言っていたわけではないのは、百も承知だが、結果がそうなら、それを
「違う」
 ということは不可能だった。
 だから、親に知られるということは、
「最後の手段」
 でしかないのだった。
 それでも、このまま放っておくわけにもいかない。正直に言って、探してもらうしかない。
 駐在所にも報告され、所轄から警官も駆けつけてくる。
「とにかく、捜索をしてみないと」
 ということで。子供たちから話を聞くだけ聴いて、捜索隊が組織され、大人だけで、捜索が行われた。
「子供たちは、心配しなくてもいいから、家に帰っていなさい」
 ということで、
「心配するな」
 と言われて、そうもいかないと思いながら、次第に、
「もっと早く言い出せばよかったのでは?」
 という後悔が、急に上り詰めてきた。
 もちろん、その感情は、後の祭りであったが、とにかく、
「無事に見つかること」
 それだけが大切だったのだ。
 捜索が深夜まで続けられ、早朝を待たずに、
「子供が見つかったぞ」
 ということで、救急車が来て、病院に搬送されることとなった。
 救急隊員によると、
「衰弱はしていますが、大丈夫だと思います」
 ということで。とりあえずは安心した捜索隊員たちだったが、まだ、そう簡単に緊張の糸を切るわけにはいかなかった。
 子供たちには、
「とりあえず無事だから」
 ということだけを伝えて、それ以外の余計なことに関しては、緘口令が敷かれた。
 というのも、まだ本人が意識不明ということで、見つかりはしたが、
「どうしてこういうことになったのか?」
 ということは、分かるところまでは、まったくいっていなかったのだ。
 子供たちの心配をよそに、
「命に別状はない」
 ということであったが、その子は、2日くらい眠り続けていた。
 さすがに、先生から、
「命に別状はない」
 と言われても、
「このまま目を覚まさないなどということ、あったらどうしよう」
 という思いは皆にあった。
 悪い方にばかり考えるのは、こういうことが起こった時は、しょうがないことだろう。心配は、
「負のスパイラルしか生まないからだ」
 ということだったのだ。
 それでも、三日目になると、少年は目を覚ました。
 そして、その時の事情が少しだけ分かってきた。
「どうして君はあんなところにいたんだね?」
 と警察から聞かれたが、
「ハッキリとは覚えていません」
 と答えた。
 その少年が見つかった場所は、冷蔵庫の中だった。
 一度閉まってしまうと、中から開けることは無理な機械。人がスッポリ入れるくらいの大きさはあるが、身動きは一切取れないことだろう。
 そんな状態で、きっと少年は、いろいろ抗ってみたのだろう。体力の続く限りである。
 その時、少年には、
「このまま出られなかったらどうしよう?」
 という不安があったのか、それとも、
「必ず誰かが助けてくれる」
 と思っていたのか、ハッキリとは分からない。
 少年にそのあと、刑事はいろいろ聞いてみたが、
「覚えていない」
 の一点張り。
 さすがに刑事も、犯人を相手にしているわけでもなく、しかも、少年である。きつくいうこともできなかった。
「少し時間を取るしかないな」
 ということで、その日は、医者に促されながら、帰ることにした。
 それから数日、警察が聞きこみを行い、子供たちにも聞いていたが、これといった情報は得られなかった。
「しょうがない。もう一度。少年のところに行ってみるか」
 ということで、病院にやってきた刑事は、医者から、面会を断られたことで、ビックリしたのだった。
「先生、それはないでしょう。こっちだって、時間をおいてきたんですから」
 というと、
「いや、それに関しては申し訳ない。しかし、今尋問させるわけにはいかないんだ。というよりも、尋問しても、同じだといってもいい」
 と医者はいった。
「どういうことですか?」
 と刑事が聞くと、
「どうやら、あの時のことだけ、記憶がポッカリ抜けているようなんですよ」
 と医者はいうのだった。
 記憶がなくなっていたことで、警察もどうすることもできなかった。
作品名:双子 作家名:森本晃次