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双子

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「それにしいぇも、この檻というのは何なんだろう?」
 ということを考えさせられる。
 普通に考えれば、監獄であり、広さは独房であろうか?
 もちろん、監獄など入ったこともないし、ドラマなどで、監獄のシーンがあったとしても、あくまでもイメージで、どれほどの広さなのか、入ってみなければ分からないということは分かりそうなものだった。
 監獄というところは、
「何か悪いことをした」
 あるいは、
「人質になってしまったか?」
 でなければ、入るものではない。
 となると、考えられるのは、
「誘拐」
 ということであった。
 ただ、誘拐をするのに、こんな独房のようなところを用意するだろうか? こんなにも手間のかかる場所を抑えるにしても、誘拐なら、後から足がつくということも考えられなくもないはずだ。
 それを思うと、コスパという意味でも、ムダではないだろうか。
 しかも、檻の中に入れられていて、さらに、手足の自由が利かない。しかも、猿ぐつわもされていて、声を出すこともできない。
 冷静に考えれば、
「声を立ててはいけない。だから、猿ぐつわを外されるわけにはいかない。当然、手足の自由は奪わなければいけない」
 というわけなので、手足を縛っているのは当たり前だということだ。
 だから、下手に暴れるのは得策ではない。
 猿ぐつわをされているということは、それだけで、呼吸困難なのだ。そうなると、もがけばもがくほど、体力を消耗することになる。
 しかも、これは自分だけなのかも知れないが、思春期になると急に身体が固くなった気がした。
 それが、肥満になってきたことと、どういう関係になるのか分からないが、あまり暴れるのは、一気に体力を消耗するということと、痛いだけで、身体中に縄の痕がついてしまう。それはあまりいいことではないだろう。
 当然のことながら、表は見えないが、声を立てたところっで、誰もまわりにはいないようなところであろう。
 手足を縛って、猿ぐつわまでしているのだから、ひょっとすると、子供が迷い込んでくるくらいのことはあるかも知れない。
 ということは、きっと、まわりは、
「おおらかな田舎なのではないか?」
 と思えた。
 考えれば考えるほど、憂鬱になってくる。つまりは、そこにあるのは、
「限りなく、絶望に近い、希望」
 とでもいうべきであろうか?
 実際にどこまで犯人がもくろんでいるのか分からないが、精神的には、
「もう、助からない」
 という思いにさせられるものであった。
 しかも、壁を見ると、どこからともなく、水が漏れているようで、壁に面した床は、もう完全に、ドロドロであった。
 まるで苔が生えているかのような緑色の水が、まるで、
「毒薬ではないか?」
 と思えるほどのどす黒さを醸し出している。
「俺はこのままどうなってしまうのだろう?」
 という思いと、
「夢なら早く覚めてくれ」
 という正反対ではあるが、その実、
「どうせ助からない」
 と思わせるものなのであろう。
「正直、頭の中が、混乱していた」
 というものであった。

                 現状打破

 何でもかんでも、ネガティブに考える忠次は、自分のこの考え方を、
「負のスパイラルだ」
 と思っていた。
 最近、覚えた言葉が、完全に自分に嵌ったことで、そう感じるようになったのだが、確かにその言葉にウソはなかった。
 今のように、
「どうすれば助かるか?」
 ということよりも、
「どうせ助からないんだ」
 ということを証明するかのように、頭を巡らせていた。
 最初は、
「何かの悪い冗談か?」
 と思った。
 さすがに最初からすべてを悪い方に考えるようなことはしない。せめて、
「悪い夢なら、早く覚めてくれ」
 と思うのだった。
 誰だって、最初は、
「ウソだろう? ウソだと言ってくれよ」
 と思うはずだ。
 もちろん、忠次も一緒だったのだ。
 だが、最初は、
「冗談だ」
 と思ってみても、それが、どうにもならないことを悟ると、後は悪い方にしか考えられなくなる。
 しかも、理論的に考えてしまうので、たちが悪い。
 考え方に隙がないのだ。
「もし、この部屋から出られても、向こうには門番があるだろう。門番を超えても、さらには、警官隊のような部隊に囲まれて、相手は複数で武器を持っている。こっちは、一人で丸腰。完全に、袋のネズミではないか?」
 と思ってしまうと、
「二度と出られない、棺桶に閉じ込められ、しかも、開かない棺桶をそのまま、火葬場で一気に焼き殺そうとするようなものだ」
 と思った。
 ただ、彼はさらに残酷なことを考える。
「推理小説の読みすぎか?」
 と言われることであるが、一番怖いのは、
「棺桶に閉じ込められ、食事も水もなく、そのまま土葬にされる」
 という感覚である。
 しかも、すぐに窒息してしまわないように、棺桶には小さな空気穴が、複数空いている状態である。
 こうなってしまうと、
「間違いなく訪れる死に向かって、絶対に助かることはないのに、すぐに死ぬことができないという苦しみを味わいながら死ぬことになる」
 というのだ。
 これは、水責めにおいて、自分よりも、自分が大切にしている家族を少し低いところにしておいて、
「お前の家族が苦しみもがいて死んでいくのを、見届けながら、いずれ、お前も死んでいくんだ」
 という恐ろしいことが、復讐鬼によって、復讐計画が実行されるというのを読んだことがあったが、まさに、背筋も凍るという話であった。
 これが、昔の探偵小説であり、スリルとサスペンスを味わう復讐内容だったりするのであった。
 今のミステリーには、そういうものはないかも知れない。あまり読んだ経験はないが、最近のものよりも、戦後間もない時代の探偵小説などを、好んで読んだりした。
 最近は、本屋も少なくなって、古本屋ですら手に入らないものが多いが、それでも、本屋を梯子して見て回ったりしたこともあった。
 何事も、最悪なことをまず考えてしまう。
 それは、いいことの時でもそうだった。
「いいことを考える時くらい、楽しいことを考えようぜ」
 と友達に言われたことがあったが、
「それはそうだと思うんだけど、それができないんだよな」
 というと、
「お前、兄貴に、楽天的な性格を皆持っていかれたんじゃないか?」
 というのだった。
 最初は、そういわれてもピンとくるものではなかったが、
「そうなのかな? 俺には自覚のようなものはないんだけどな」
 というと、
「俺が聞いた話によると、双子の兄弟というのは、似たように見えるが、それぞれ、極端な違う面を持っているという。まるで、陰と陽の関係のようななんだが、あくまでも、聞いた話だというだけで、信憑性はないんだけどな」
 というのを聞いて、
「それは俺も感じているんだよ。確かに言われてみれば、そんな感じがしてきた」
 というと、
「双子の場合は、二人を足して、一人の人間を表しているのかも知れないな。だから、ある意味でいくと、お互いに裏がないように思うんだ」
 という話を聞くと、
「本当にそうなのだろうか? 自分には裏があるという自覚もあるし、兄に対しては、何か裏があるように思うんだ」
作品名:双子 作家名:森本晃次