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パンデミック禍での犯罪

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「はい、そうですね。ここでも、一週間くらいだったはずです。残っていても10日ほどなので、1か月近く前となると、絶望ですね」
 と言ったのだ。
「ところで一か月くらい前というのは、どんな感じでした。全校生徒や先生は皆、通学されていましたか?」
 と聞かれて、
「その頃はまだ全員が一斉にということはなかったですね。夏休みが終わって、徐々に投稿数の生徒を増やすようなことを、段階的にやりましたので、それで、少しずつ活気が出てきた感じですね。本当はそれまでに、裏庭の整備を行いたかったんですが、何しろ、このご時世、なかなか業者が捕まりませんでした」
 ということを聞いて、
「じゃあ、犯人もそれくらいのことも計算してのことだったのかも知れませんね。いずれは見つかっても構わない。あるいは見つからなければ困るが、そんなに早くても困る。そこに思惑があっての、この場所だったんでしょうかね?」
 と刑事は言った。
 それを聞いて、
「そうですね。そうかも知れないですね」
 と校長がいうと、
「しょうがないので、証言だけを頼りに捜査しましょう。校長先生も何か思い出したら、ご報告ください」
 と刑事は言った。
 だが、刑事は何かを思い出したように、
「ところで、この学校では、庭の整備の業者を呼ぶのは初めてあんですか?」
 と聞いたので、
「ええ、私が知っている限りでは、呼んだことはありません」
 と校長が答えたが、
「じゃあ、誰が今まで整備していたんですか?」
 と聞かれて、
「用務員の鮫島さんです。それも用務員の仕事の一つですからね」
 と校長が答えると。
「なるほど、分かりました。ありがとうございます」
 と、刑事は何か、含み笑いのようなモノを浮かべ、自分が何かのヒントのようなものを手に入れたという感覚を持っていることに気づいたのだった。
 校長も、刑事の含み笑いが分かったが、それが何を意味しているのか、その時には分からなかったのだった。

                 女生徒の訪問

 校長先生の話を一通り聞いた刑事は、そのまま鑑識のところへ行った。
「何か目新しいことでもありましたか?」
 と、刑事が聞くと、
「ああ、いいえ、今のところは詳しい発見はありませんね。先ほども申しました通り、ここに埋められて、約一か月というところでしょうか? 死因は刺殺。ナイフのようなものだと思われます」
 ということだった。
「日にちが経っているので、判別は難しいかも知れないが、殺害現場というのは、ここなんでしょうか?」
 と、刑事が聞くと、
「さすが、桜井刑事。犯行現場は、たぶん、ここではないでしょうね。もし、ここで争ったとすれば、いくら、雑木林の中だとはいえ、争った跡が、ずっと残っていて、素人目には分からなくとも、ちょっとした科学捜査では分かるものですからね。犯行現場はここではないといえるでしょうね」
 と鑑識がいった。
 この刑事の名前は、この鑑識官の言葉にあるように、
「桜井刑事」
 というのだった。
 桜井刑事は、K警察署では、ベテランと呼ばれる刑事で、今までにもいくつかの事件を解決に導いた、
「敏腕刑事」
 と呼ばれていたのだった。
 今回の事件でも、桜井刑事の出番とあって、鑑識官は、
「事件は結構早く解決するな。俺もちゃんと仕事をまっとうして、桜井刑事の役に立たないとな」
 と、考えていたのだった。
 桜井刑事はどちらかというと、推理力の優れた刑事であった。ただ、考えていることを、あまり人に話すタイプではないので、一緒に捜査している刑事も、
「相変わらず、桜井刑事は自分の考えを話そうとしないんだな」
 と、あまり考えないようにしていたのだ。
 もちろん、そんな時は、聴いても話をしてくれるわけもない。それどころか、
「いまさらそんなことを聞くなんて、私を知らないわけでもあるまい」
 とばかりに、それ以上、こちらから言葉を掛ける隙を与えないように振る舞っているのであった。
 そういう意味では、
「気難しいところがある」
 と言われるゆえんなのだが。それだけではないだろう。
「自分の考えていることが間違っていたら恥ずかしい」
 などという、新米刑事が考えるような発想を持つはずがない。
 それが、桜井刑事という人の性格だったのだ。
「ああ、そうそう。この死体の衣服のポケットの中から、香水の瓶のようなものがでてきました」
 と鑑識が言った。
「香水? 女にプレゼントするものだったのか?」
 と言われた鑑識は、
「いえ、男物でした。それも、おしゃれ用ではなく、どちらかというと、臭い消しの要素の強いものだったようですね」
 というではないか?
「用務員って、そんなに臭いを気にするものなのか?」
 と感じたが、
「いやいや、そもそも、彼は用務員を辞めていたはずでは?」
 と考えたのだ。
 さて、校長への尋問を終え、他の教員からも聞き取りが終わったのか、警察が一時撤収することになった。もちろん、現場は立ち入り禁止。現場周辺の業者が入っての裏庭整備も途中で中断となった。警察の捜査の解けた時から再度日程調整ということで業者とは話がついていた。この中途半端な状態では、支払いも請求もできないからだった。
 警察が帰った後、校長が、校長室で執務を行っていたが、仕事をしながらでも、何か気が付けば考えているというような状態になっていて、集中することができない。
 無理もないことで、この学校。いや、この地域で、こんな事件が起こるなど、初めてのことだったからだ。
 しかも用務員の鮫島というと、自分が辞めさせた相手ではないか?
「そういえば、鮫島さんは、辞める時、かなり悔しそうにしていたな。言葉では、しょうがないと言いながら、辞めなければいけないということに、かなりのショックを感じていたようだった」
 と感じた。
 校長が思うに、
「たぶん、用務員という仕事を辞めなければいけないというだけではない、何かがあったようにも思えるんだよな」
 というのは、今から考えるからである。
「もしあのまま何もなければ、今頃は、彼の存在そのものを忘れていたかも知れないな」
 と感じるのも、とにかく、この、
「世界的なパンデミック」
 というものが、どれほどひどいものなのかということを、いまさらながらに、思い知らされているからであっただろう。
 そんなことを考えていると、校長室の扉を、
「コンコン」
 とノックする音が聞こえた。
「はい」
 といって、校長がその扉を開くと、そこに立っていたのは、一人の女生徒であった。
「あれ? 君は」
 その生徒には見覚えがあった。
 そう、先ほど鮫島さんの死体が発見された時、鮫島氏の死体を見て、
「きゃっ」
 という感じで、明らかに他の生徒とは違った反応を示したあの時の女生徒ではないか。
 他の生徒のリアクションと明らかに違っていたので、
「何か知っているのではないか?」
 と、思ったが、リアクションも人それぞれであり、しかも、
「リアクションの取り方に、正解などというものって、果たして存在するものなのであろうか?」
 ということを考えても、彼女のその時のリアクションには、
「何かある」
 と思わせるに十分なものであった。