パンデミック禍での犯罪
いわゆる繁華街と言われるところ、K市ではそれほど、賑やかなところはないが、賑やかというよりも、
「一か所に、固まっている」
ということであった。
これは、K市に限ったことではなく、似たような規模の市だけではなく、県庁所在地のような場所でもそうだ。
都会では、
「繁華街」
などと表現するが、中途半端な都会や田舎では、
「横丁」
と言ったりするのだ。
つまり、赤ちょうちんなどの、炉端焼きであったり、スナックであったりが、密集しているようなところ、
「雑居している」
といってもいいだろう。
そういうところは、それこそ、昭和の名残の残るところが多く、正直、
「老朽化」
ということでの、行政干渉が入らない限り、少々であれば、建て替えなどはしない。
故障したところを直したり、クーラーが壊れたら、買い替えるという程度であろう。
したがって、お客も、
「まるで、昭和レトロだよな」
という人が多く、逆にそれを楽しみにしている人もいるので、店側も、結局何もしないのだった。
とは言いながら、スナックなどでは、女の子の入れ替えはさすがにあり、若い子も、おじさんに人気だったり、若い女の子も、おじさんが相手しやすいと思っていたりするようだ。
女の子も、結構昭和のレトロが好きな子もいたりする。
レトロが好きだというよりも、おじさんの、
「レトロな話」
が好きなようだった。
というのも、女の子というのは、結構知らない話が好きなようだ。
相手に合わせているということでも、おじさんの話は聞いているだけで面白かったりする。
特に今の時代にない考え方などを口にされると、女の子は、相手のことを、
「賢い」
と思うようだ。
女の子の中には、
「劣等感を抱かされるから嫌だ」
という人もいるが、最近んお女の子は楽天的で、しかも、勉強熱心である。
相手の話に合わせるために、一生懸命に勉強している女の子もいる。
それだけに、相手の男性も、
「この子は俺の話を分かっているんだ」
であったり、
「一生懸命に聞こうとしてくれているんだ」
ということを考えたりすると、女の子は感激して、サービスもよくなるというものだ。
男の方も、
「この子は勉強熱心だ」
と感じると、好感度を持つ。
特に中年以降であれば、そういう努力家の女の子は手放しに喜ぶのが昭和世代だといえるだろう。
特に、仕事で気を遣って疲れて帰っているのに、女の子から優しくされると、嬉しいものだ。
そんなスナックというのは、実にありがたい。男にとっては、オアシスであり、女の子にとっては、仕事場の中でのちょっとした休息のように感じるのかも知れない。
特に、ファザコンだったりすると、イチコロだといえるのではないだろうか?
それが、
「横丁」
の醍醐味というものではないだろうか?
横丁でなくとも、そういう関係はあるのだろうが、都会の雑踏の中よりも、家の近くの方が親近感が湧く。そういう意味で、
「繁華街」
よりも、
「横丁」
の方がいいのかも知れない。
今回は、
「横丁」
でも問題ではあったが、大きな問題となっているのは、
「繁華街」
の方であった。
というのも、
「横丁では、お店の奥が住居になっていたり、民家であったりしていたりするが、都会の繁華街では、雑居ビルの中に入っている」
ということだった。
昔の雑居ビルだったりすると、防犯カメラも申し訳程度にしかついていなかったりする。
そもそも、ここまで休業が長引くと、防犯カメラがあっても、あまり意味がないのだ。
そんなにしょっちゅう、店長も顔出せるわけではない。それを狙って、犯人は、忍び寄ってくるのだ。
そう、いわゆる、
「空き巣被害」
であった。
なかなか、古いビルでは、最新式の防犯設備がついているということはない。
ワンフロア、一つの会社などというオフィスビルなどでは、エントランス部分に集中型の、警備を掛ける装置があり、そこを使って警備を掛けると、
「その階には、エレベータのランプはつかない」
ということで、エレベータでの移動はできなかったりする。
だから、非常階段での移動になるのだろうが、非常階段もカギが掛かっていれば中に入れないのである。
しかし、飲み屋が入っているようなビルは、エントランスが吹き抜けで、扉も何もなく、ロビーに入れるようなところがほとんどだろう。
特に、地階に降りていくような雑居ビルだったりすれば、エレベータもなく、一歩間違えれば、老朽化で引っかかりそうなところも、いまだに結構残っていたりするだろう。
そんなビルは、空き巣の恰好のターゲットになるのだった。
特に緊急事態宣言なので店を開くことができないので、たまに、様子を見に来るくらいだ。
飲み屋ともなると、現金は持って帰れるが、商品はというと、そういうわけにはいかない。
中には、仕入れに結構なお金が掛かっているものもあり、空き巣としても当分、来ないと見れば、腰を据えて、盗みに入るだろう。
それに、組織で動いていて、しかも、販売ルートも最初から確保されていて、警察が動き始めた時には、すでに、現物はないということになる。
そもそも、警察が、空き巣を見つけることすらできないだろう。
防犯カメラも、古いものだったり、相手も、カメラの位置なども計算しているだろうから、分からないように動くだろう。
そういう意味で、空き巣の被害は、結構なもので、緊急事態宣言中でも、少しずつ被害が明らかになっていたのだが、開けてみると、
「いたるところでやられている」
ということになるのだろう。
実際に被害を警察もどこまで把握できているのかということも、分からないくらいだった。
警察というところは、被害を、
「十把一絡げ」
ということで、ビル全体で、被害を見ていた。
ということは、たくさん盗まれたところも、ちょっとしか盗まれなかったところも、似たような目でしか見ていない。被害総額でいえば、まったく違うのに、皆同じに見られると、
「理不尽だ」
と言われかねないだろう。
そんな日が、どれほど続いたことだろう?
警察も社会問題として、警備を増やしたりもしたし、
「緊急事態宣言が、再度発令された時のために」
ということで、繁華街の有志が集まって、警備隊のようなものを組織しているところも多かった。
深夜になっての見回りなどの強化であった。
実際に緊急事態宣言のようなものは、その後も何度か発令された。最初の頃のように、何でもかんでも、
「休業要請」
「学校閉鎖」
ということはなかったが、店舗の営業は、
「時短対策」
さらには、
「アルコール類の提供を禁止」
というものであった。
特に飲み屋関係は大きかった。
営業時間を、
「午後八時まで」
などにされては、午後五時に回転する居酒屋などは、まったく仕事にならない。
店を開けるだけで赤字も同然ということになる。
さらには、これがスナックなどになると、まったく商売にならない。基本、店は午後7時くらいからのところが多く、実際の客入りは午後九時くらいからなのだから、客は、
「スナックになど行っている時間はない」
作品名:パンデミック禍での犯罪 作家名:森本晃次