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忌み名

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 今の時代における凶悪犯、たとえば殺人などは、今でこそ、時効というものは存在しないが、昔は15年で時効が成立していたのd。
 ちなみにこの時効というのは、
「被疑者が海外に滞在していた時期は、その時効の失効は停止する」
 と言われている。
 つまり、一年間海外にいたことが証明されれば、時効は全体で、15年ではなく、16年ということになるのだ。
 そのことを知らずに、15年経ったからといって、ノコノコ出てくると、逮捕されることになるのだ。
「せっかく、15年間、逃げ通したのに。
 といっても後の祭りなのだ。
 そもそも、犯行を犯して、よく言われるのが、
「海外に高飛び」
 ということを言われるが、それはあくまでも、捜査が一番厳しい状態で日本にいれば、逮捕される可能性が高いからである。
 海外には、日本の警察力は通用しない。よほどの国際テロ組織でもない限り、国際的な操作はできないのだ。だから、警察が手を出せない間に、日本でもほとぼりが冷めて、捜査本部は解散し、
「迷宮入り」
 ということになり、一段落する。
 そこで日本に戻ってこれるというわけだが、実は時効というのは、ここから始まるのだった。
 この海外にいた時間を計算していないと、サッカーなどでいう、
「ロスタイムで、得点を入れられてしまう」
 ということになる。
 さすがに、犯罪を行おうとして、海外逃亡というところまで根回しができる人が、そんな時効の盲点を知らないというのもおかしな話ではないだろうか?
 それを思うと。
「事実は小説より奇なり」
 と言われるのも、無理もないかも知れない。
 そういえば、なるほど、今の時代は、さすがに、昭和末期のような、二つのセンセーショナルな事件に近いものは出てきていない。
 それは、ネットの普及であったり、手口がいたちごっこをしたりする中で、犯人も、
「あまり犯行を目立たせないように」
 ということをもくろんでいるからではないだろうか?
 ただ、営利誘拐というのは、
「割に合う犯罪」
 なのだろうか?
 犯罪というものを、
「割が合う」
 という物差しで測っていいものかどうなのかであるが、難しいところではないだろうか?
 誘拐というのは、殺人までいかないまでも、
「人を拘束し、自由を奪う」
 という罪、さらには、
「脅迫された人の精神的な迫害」
 という罪、さらに、
「金銭を要求するという脅迫罪」
 それらが、まずは基本である。
 さらに、これが会社社長などであれば、業務妨害的な犯罪にもなりかねない。
 そういえば、ある大学の刑事訴訟法のテストで、
「ひき逃げの罪状について述べよ」
 という試験があった。
 これも、複数の罪が並走する。
 一つは、
「業務上過失致傷罪」
 である。
 これは通常の傷害罪よりも、
「免許を持っている人間が、運転するという業務の上で行う事故なので、それだけ罪は重い」
 というものだ。
 もう一つは、逃げているわけので、
「放置した」
 という罪である。
「救護義務違反」
 さらには、
「事故報告義務違反」
 などがある。
 さらには、
「危険防止措置違反」
「現場に留まる義務違反」
 などの罪が、重複することになる。
 つまり、ひき逃げをしてもすぐに自首しないと、これだけの罪により、免許取り消し処分、さらには、懲役刑などという問題になってくるだろう。
 さらに、事故が原因、あるいは、放置したことが原因で死亡したとすれば、
「人生が終わった」
 といってもいいだろう。
 基本的にひき逃げをする人のほとんどは、
「飲酒運手をしたから」
 ということが多いのだろうが、その場で警察に通報していれば、
「飲酒運転」
 だけの罪になり、他の付随した罪がついてくるわけではない。
 それを考えると、
「ひき逃げは、割に合わない」
 と言えるだろう。
 ただ、ひき逃げは、とっさのことなので、判断が鈍るのはしょうがないかも知れないが、誘拐は、少なくとも、念入りな計画が必要である。当然のことながら、
「誘拐というのも、切羽詰まって行うことだ」
 といえるが、リスクがどれほどのことかを考える必要がある。
「大金が必要でそのためには、犯罪も辞さない」
 ということであれば、その金額にもよるが、高額であればあるほど、選択肢は狭まってくるのである。
 誘拐を計画し、実際に誘拐に成功したとしても、どこから漏れるか分からない。
 しかも、誰が見ているか分からないし、今の時代であれば、いたるところに防犯カメラがあるので、昔のように、
「誘拐する」
 という、第一段階でも、相当に難しいと言えるだろう。
 下手をすれば、
「誘拐未遂」
 という中途半端な状態で捕まってしまい、結局お金を取ることもできず、それどころか、起訴されてしまう可能性もある。それを考えると、実際に割に合わないといってもいい。
 昔だったら、数人で車に押し込むというような乱暴なこともあったが、目撃者は防犯カメラの存在、さらに、共犯者が必要になってくる。
 もし、誘拐に成功したとして、今度は身代金の受け渡しが問題だ。いかに警察に逮捕されるにお金を取ることができるかである。
 それに成功したとして、では、人質はどうするか? まさか、殺してしまったりすれば、
誘拐殺人ということになり、情状酌量の余地はなくなってしまう。しかし、まともに返してしまうと、脚がつく可能性は大きいではないか。それを考えると、正直、
「割が合わない」
 と思えて仕方がないのだった。
 そんな営利誘拐であったが、
「今時、営利誘拐だなんてね」
 と言われるかも知れないが、実際に起こったのだ。
 弘前家というある富豪の館に住んでいる、令嬢である、
「つぐみ」
 という女の子が誘拐されたのだった。

                 弘前家

 弘前家というのは、昔からの旧家の流れを受け継いでいる家だった。
「うちの先祖は、明治の元勲の一人で、長州藩では有名な、維新志士だった」
 という。
 歴史的には、さすがに教科書に出てくるほどの有名な人ではないということであったが、いわゆる、
「裏の世界」
 では、その力は有名だったという。
 特に維新、新政府というと、
「尊王攘夷のためには、少々の荒っぽいこともしてきている。暗殺などもその一つで、決して表に出せないこともたくさんある」
 ということで、そういう、
「裏の仕事を請け負っている仕事人」
 というような集団があったようで、その集団を束ねていたのが、弘前家の先祖だったという。
 だから、歴史上、決して表に出ることはなかった。表に出てしまうと、明治政府の正当性ところか、その存在すら否定されかねないことになり、歴史がひっくり返ることにならないとも限らない。
 いくら、
「暴力を権力がものをいう時代」
 だとはいえ、何でもありというわけではない。
 それだけに、裏であっても、正当性を重視する以上は、秘密にしなければいけないことは、必死で守るということだ。
 そのため、新しい世になって、そんな、
「裏の仕事を請け負っていた」
 という連中が、粛清されたりしたものだ。
 そんな粛清に加わった連中も、実はその後、抹殺されたりしている。
作品名:忌み名 作家名:森本晃次