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忌み名

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 で踏みにじられるのであった。
「そんな時代を、一体何度繰り返そうというのだろうか?」
 と言えるのではないだろうか?
 国家というのは、
「国民を守るという義務があり、そのために税金を取っているのではないか? 言い方は悪いが、封建制度の、「ご恩と奉公」ということと同じではないだろうか?」
 どちらからだけでも、うまくいかない。それぞれがお互いを思いやって、相手との共存を考える。それができずに、何が、
「民主国家」
「法治国家」
 と言えるのだろうか?
 そんな中、あるホテルで、一人の女性がこん睡状態で発見された。
 その女性がデリヘル嬢であることはすぐに分かった。なぜなら、そのお部屋に、数時間前、
「連れです」
 といって、女性がその部屋の番号を指定し、フロントを通して部屋に入ったからだった。
 デリヘルというところは、表で待ち合わせをして、男女一緒にホテルに入るということはあまりない。
 最初からそれをコンセプトにして、システムが作られている店というのもあるが、基本は、男性がホテルの部屋に入っていて、女性がそこに入るというのが、基本となっている。
 だから、ホテル側も、男性一人の客は普通に当たり前のことであり、後から女性の連れがくるというのも当たり前だと思っている。そして、その場合のほとんどが、デリヘル利用であるということも分かるであろう。
 実際に昼間のラブホの利用は、そのほとんどが、デリヘルではないだろうか?
 昔であれば、旦那が昼働いている間に、奥さんが別の男と不倫をするということに使っているというイメージだった。
 夕方近くになると、
「夕飯の買い物」
 あるいは、
「保育所に子供を迎えにいかないといけない」
 などと言って、そそくさと帰っていく奥さんがいただろう。
 ホテルを一緒に出るかどうかは、カップルによって違うだろう。これはデリヘルでも同じことで、一緒に出る場合も、女性だけが先に出るというパターンもある。どちらにしても、女性はホテルの前で待機している送迎ワゴンに乗って帰るのだから、一緒に出ても、すぐに男性が一人になるわけだ。だから、ある意味、一緒に出る必然性はないといってもいいだろう。
 どこかで待ち合わせて一緒にホテルに入る場合は、最期、最初に待ち合わせた場所で別れるということが多いだろうから、必然的に、一緒に出ることになるが、そうなると、その日の宿舎をそのホテルと考えている人は、最初から、待ち合わせ系のシステムの店は利用しないだろう。
 今回は、スタンダードの男性が先に入っていて、そこに連れがくるという形だった。だから、誰にも怪しまれることはなかった。
 だが、このホテルは前金だったので、延長がなければ、
「帰ります」
 といって、部屋の自動ロックを開けてしまうと、後は、管理人も気にしているわけではないようだ。
 もちろん、二人ともが出てしまったかどうかを確認はするだろう。そうしないと、部屋の清掃に入れないし、延長料金の問題もあるからだ。
 その時は、確かに女が先に出たかのように見えた。
 後から警察が来て、通路の防犯カメラにも、外套を着て、女物の帽子をかぶった女性が部屋から出てきているではないか。
 ただ、よく見ると、少し大柄にも見えた。
 さらに女が連れだといって入ってきた時の防犯カメラを見ると、外套も、帽子もなかった。
 ということは、あらかじめ犯人、つまり、最初に部屋を借りていた男が、自分が先に出るために、外套と帽子を用意していたということだろうか?
 女性の方は、病院に運ばれたが、命には別条ないということだった。
 大量の睡眠薬を服用してのこん睡状態。普通なら自殺も考えられるが、男が変装して先に出ているということが分かる以上、殺人未遂の線がかなり濃厚だということになり、捜査が行われることになったのだ。
 女性の方の身元はすぐに分かった。
 その女性は、
「つむぎ」
 であり、彼女は、命を取り留めたとはいえ、意識が完全に戻ったわけでもないので、事情を聴けるようになるまで、まだまだ時間が掛かりそうだということであった。
 その時の状況がどうだったのかということよりも、話が実は大きく展開していったのだった。
 というのも、警察がその問題の部屋の部屋を、鑑識を入れて捜索を行った中で、気になる指紋を発見した。
 それは、弘前財閥の令嬢誘拐事件で、令嬢の絞殺死体が発見されたその場所に残っていた指紋と同じものが、その部屋から発見されたことだった。

                 大団円

 普通であれば、
「その指紋は、今回の二人とは関係のない、その前に利用した人の指紋が残っていたのではないか?」
 とも考えられたが、いくつかの場所から、その指紋が検出されたのだが、一つは歯ブラシから検出されたというのだ。
 ホテルの清掃員に聴けば、
「ホテルの歯ブラシや歯磨き粉などの消耗品は、前の人が使用しようが使用していまいが、毎回新しいのに変えていますので、少なくとも、直前に部屋を利用した人のものでないとおかしいことになります」
 ということであった。
 もっとも、これはラブホテルに限ったことではないだろうと、刑事も思い、その言葉をもっともだと思ったのだった。
 今回の事件が、普通であれば、ただの殺人未遂ということで、それほど大げさにはならないはずだったが、前の誘拐殺人事件に絡んでくると話は変わってくる。
「令嬢を誘拐し、さらに殺害した場所に残っていた指紋が、また風俗嬢への殺人未遂の場所にあったということは、一種の連続殺人ということなのか?」
 ということで、被害者二人の関係が、注目された。
 発見された風俗嬢、彼女は、源氏名をつむぎというのは、前述のとおりで分かっていることだったが、警察が初めてその名前を聞いた時、
「つむぎ? 被害者令嬢の名前は、つぐみだったよな? これってただの偶然なんだろうか?」
 ということであった。
 ただ、この時、刑事の一人は、今回のラブホテルでの事件を、
「本当に殺人未遂なのだろうか?」
 とも考えていた。
 というのも、
「被害者を殺すつもりがあるのであれば、睡眠薬という中途半端なことをせずに、一思いに刺し殺すなどできなかったのか?」
 ということであった。
「自殺に見せかけようとしたのでは?」
 ということも言われたが、
「自殺に見せかけようというのは、最初から無理があるだろう? それだったら、何もデリヘルとして呼び出すことをせずに、彼女が一人のところを密かに一緒にいるかのような方法の方がいくらでもありそうな気がするんだ。しかも、防犯カメラに映ることを分かっているからこそ、女物の外套や帽子を用意してここから逃げたわけだろう? だったら、何かの犯行を計画していたことは間違いない。だとすると、彼女が死ななかったということに何か秘密があるような気がするんだ」
 というのだった。
「なるほど、そういわれてみると、単純な殺人未遂だとは思えないな」
 ともう一人がいうと、
作品名:忌み名 作家名:森本晃次