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忌み名

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 誰もがルールを守って遊んでいるのに、一部のひどいやつがいると、とんでもないことになるというものだ。
 そういえば、つむぎの店で運転手をしている中年の男性がいるのだが、彼がいうには、
「私がまだ、若かった頃、ヘルスに遊びにいったことがあったんだけど、ちょうどサービスを受けている時、隣の部屋から、ガタガタというすごい物音が聞こえてきたんだよね。そのうちに、男性の罵声が聞こえてきて、客をなじっているようだったんだ。そのうちに、このまま帰ってくれ。そして二度と来るんじゃないって叫んでいたんだ。俺は何が起こったのか分からなかったけど、相手をしてくれた女の子が、きっと、男が無理やりに女の子が嫌がる行為をしようとしたんだろうというんだ。そして枕もとのナースコールのようなボタンを見せてくれた。それを見て、ああ、なるほどってピンと来たんだよな」
 といっていた。
 それが、NG行為で、出禁になることだったのだろう。
「そういえば、ソープにいた時もベッドの横に、緊急ボタンがあったっけ。自分に当たる客に、そんなひどい人はいなかったので、推すようなことはなかったが、人によっては、ボタンを押して、スタッフが対応するつということがあったんだろうな?」
 と思ったのだった。
 つむぎは、デリヘルに移って、ソープに比べて危険などことだということは分かった。何と言っても相手のところにこちらから赴くのだから、それも当たり前のことである。
 それを考えると、
「ヤバイところにきたのかな?」
 と思ったほどだった。
 しかし、移籍してきてから、数か月は問題なく行けたし、客層も比較的よかったので、本当に楽しい毎日だった。
 まるで、自分がアイドルにでもなったかのような気がするくらいで、あまりアイドル業界など知りもしなかったが、店からも客からもちやほやされると、女の子は舞い上がってしまうというのは、本当のことのようだった。
 そんな時、つむぎに、粘着客が静かに近づいていたことを知らなかった。
 その男こそ、完全な勘違い客で、つむぎに対して、ストーキング行為をしているのだが、そのことを悟られないようにすることが天才的だったといってもいい。
 しかも、つむぎの場合は、
「私の客は皆さん常連だから、私に変なことをすることはない。何しろ私はアイドルだから」
 と思っていた。
 つまり、アイドルとは、ファンとの距離は微妙な距離であり、
「触れるか触れないか」
 という距離が微妙であることで、決して、
「犯すことのできない結界」
 が存在するのだと思っていた。
 ただ、それは完全に、つむぎの頭の中の。
「お花畑」
 でしかなかったのだ。
 確かにほとんどのファンは、そうやってルールを守っている。特にファンクラブでは、そういうルールがかっちりしていて、応援するにも彼らなりのルールが存在する。だから、ファンの間でそれぞれに抑止力が働いているので、おかしなことをする人はそんなにいないのだ。
 しかし、それはあくまでも、メジャーアイドルの場合ではないか。
 コンサートと言えば、警備員が至る所にいて、ファンの暴走を防いでいる。しかし、地下アイドルなどはどうだろう?
 狭い会場に、人気がある地下アイドルでは、人がごった返している。そのため、もし、そこで誰かがナイフを取り出せば、それだでまわりはパニックになり、誰かれ構わず、被害者が出ることだろう。
 そんなところに、いちいち警備員はいないだろう。
 いたとしても、アルバイトだったり、点々といるだけで、狭いところで、密集していれば、どうすることもできない。
 下手をすれば、近づくこともできないに違いない。
 風俗業界というのは、そんな地下アイドルに似ているのではないかと思っていた。
 地下アイドルというのは、プロスポーツ界でいうところの、
「二軍」
 のようなものだといってもいいだろう。
 しかし、実際には少し違う。
「今のアイドルは、歌だけではなく、バラエティであったり、リポーターなどの仕事もあったりで、いわゆる、
「マルチタレント」
 のようになっている、
 しかし、地下アイドルというのは、その中でも、
「アイドル本来の、歌やダンスだけを集中的に学んだり披露することで、メジャーを目指す」
 というものである。
 ある意味、それは、
「極める」
 という意味で、
「アイドルよりもアイドルらしい」
 と言えるのではないだろうか?
 しかし、今のマルチタレント化というのも分からなくもない。
 プロスポーツなどでもそうなのだが、アイドルもスポーツ選手も、
「寿命」
 というものがある、
 年を取ってからできるのもではなく、いずれば引退。(アイドル界では、卒業というらしいが)
 それが待っていることを考えなければいけない。そんな時、
「野球しかやってこなかった」
「歌しか歌えない」
 となった時、選手であれば、コーチ監督の道もあるだろうが、それでも、一部の人間だけで、ほとんどは、路頭に迷うといってもいい。
 下手をすればケガでもして、数年で引退ということになれば、それこそ、民間の企業に、
「転職」
 という形しかない、
 アイドルの場合はもっとひといかも知れない。
 テレビ局やプロデューサーなどが使ってくれないと。芸能事務所でも浮いてしまい、仕事が回ってこない。
 アイドルには、コーチも監督もない。もし何かをするとすれば、それだけの資格であったり、放送局に対しての人脈によるコネのようなものがなければ、まったく使ってもらえなくなるだろう。
 それを考えると、アイドルは、プロスポーツとどっこいくらいに、難しいかも知れない。
 だからこそ、アイドル時代に、
「少しでも、いろいろなことをさせて、そこから新しい道を築けるようになっておけば、そこから先は本人たちの問題だ」
 ということである。
 つまりは、
「アイドルを続けながら、新しい道をすでに模索している」
 というわけで、これもある意味画期的だと言えるだろう。
 昔アイドルや汪御所歌手などで、今芸能界に残っている人は、いろいろな才能を持っていたりする。
 たとえば、
「世界的な絵のコンクールに出品できるくらいに絵の才能がある、汪御所演歌歌手」
 であったり、
「政治の勉強をして、政治家になった人」
「アイドルを卒業してから、アナウンサーになる」
 という人も結構多かったりする。
 さらには、「
「実業家になり、自分でプロダクションを立ち上げる人だっているではないか」
 アイドル界だけではなく、水商売などで、キャバクラで稼いでいる人などは、ほとんどのナンバーワンといわれるような人は、
「自分の店を持つ」
 という夢を持っているから、頑張れるのだ。
 そんなことを考えると、
「私は、今のことだけで精一杯だわ」
 とおもうのだった。
 確かに言われてみれば、ソープにいた頃も、
「私には将来やりたいことがある」
 といっている人も結構いた。
 そういう人は、決してへこたれることはなく、いつも前向きで、店から言われたこと以外で、自分独自のキャンペーンのようなことを、自費でやってりしていた。
「そういうことができる人だから、ナンバーワンになれるんだわ」
 と思った。
作品名:忌み名 作家名:森本晃次