忌み名
ということで、客に対してを考える女の子であってほしいと、スタッフは思っていることだろう。
つむぎの客
姫予約をするようになって、なかなか新規の客がつけなくなってしまったことで、しばらくは、リピーターだけで、毎回完売だった。
しかし、そのうちに、そのリピーターの予約が少しずつ鈍ってきたことを感じた、
というのも、ツイッターのDMで、
「これから、今回のスケジュールをアップします」
と書いて送っても、今まであれば、その日でほぼ完売していたのに、次の日以降の残っていることに気が付いた。
さらに、そのうちに、
「はじめまして」
のお客さんが増えてきたことに気づいたのだ。
「あれ?」
と、客層の流れに若干の変化があることに気づいた。
しかし、相変わらず、当日になれば、完売するペースは変わらない。
「新規が入ってきたんだ」
ということが分かってくると、
「なぜなのか?」
ということを考え、最近のお客さんが誰なのかということを調べ始めた。
お客さんの名前というか、ニックネームをメモに残すようにして確認してみると、DMを送った相手で、1,2人が月に数回利用してくれていたのに、来てくれていないことが分かった。
「どうしたんだろう?」
いろいろな理由があるだろうが、時期的なことを考えると、二人が来なくなったのを思い出すと、ちょうど同じ時期であり、その時期がいつなのかということを考えると、
「ああ、そうか。転勤の時期だったんだ」
ということであった。
そういうことを考えると、つむぎはお客さんのパターンを調べるようになった。
例えば、
「年に二回のいわゆる、
「半期末」
と呼ばれる時期は、普通の会社では、
「転勤の時期」
であるということ。
さらに、5月のGWの時期、そして8月のお盆、10月の、シルバーウイーク、そして、正月と、まとまった休みがある時は、県外の客が旅行などで多いということ。
そして、新規の客で多いのは、出張などで、これも他県からの人が多いということ。
もちろん、そんなパターンを知っていたからといって、それが何になるというわけではないが、会話の糸口にはなるだろう。
今まで、ソープランドにいた時のつむぎは、そういうことを一切考えず、
「ただ客に身体でサービスをすればいいだけだ」
と思っていた。
しかし、実はそうではなく、時間時間の合間の会話が大切であるということを分かっていなかった。
当然、お風呂の用意をしたり、ローションの用意をしたりするのに、客を待たせてしまうことがある。
本当はそういう時の、客に対して会話をすることで、客との間の距離を縮めることをしないと、客を待たせてしまうと、その後の進行もぎこちなくなってしまい、客もどうしていいか分からなくなってしまう。
客に対して、
「えっ? もうこんな時間なの? あっという間だったじゃない?」
というくらいに思わせれば、また客も来てくれるというものだ。
そういうことを、ソープランドにいる頃には分かっていなかったのだ。
だから、つむぎは、リピーターはほとんどおらず、新規の客を、スタッフが気を遣って回してくれるような感じで待機が多かった。そのため、ついつい他の女の子に対して妬みのようなものを持ち、スタッフに愚痴を零していたのだ。
そうなると、そんな話はスタッフを通じて、他の女の子にも伝わるもので、考えてみれば、
「私の相手をしてくれるのだから、スタッフは人気嬢に対しては、もっと気を遣っているに違い合い」
と考えるのも当たり前のことであろう。
そんなスタッフや客に気を遣うのも結構大変であったが、やってみると、結構うまくいくものだった。つむぎは、中には嫌な客もいたが、基本的に常連なので、結構ため口を聴いたりと、楽しい時間を過ごせたのだった。
しかし、逆に仲良くなってしまうと、中には、
「勘違い野郎」
というのもいるもので、一歩間違うと、
「自分が好かれているのではないか?」
と思い込み、毎回の差し入れも、次第にエスカレートしてくる。
最初の頃は、ドリンクやスイーツなどをお店で買ってきてくれていたのだが、そのうちに、贈り物がエスカレートしてくる人もいた。
中には、手作りのスイーツなどを持ってくる人もいて、
「一緒に食べよう」
という人もいる、
まだ、一緒に食べようという人はいいが、
「食べてごらん」
といわれるとゾッとする。
なぜなら、何が入っているか分からないというのがあるからだった。
さらに勘違い野郎の中には、自分の好みの下着を買ってきて、
「これに着替えてプレイしよう」
などという客もいる。
完全に、自分の好みの押しつけであり、それだけ女の子を、まるで、
「自分の奴隷」
のように見ているということだ。
確かに、SMプレイなどでは、
「ご主人様」
「奴隷」
などと言って、プレイすることもあるが、それはあくまでも、絶大な信頼関係を築いた後のことである。
たまにしか来ない客に、奴隷扱いされるなど、とんでもないことで、そんなことを言われると、
「NG客として、次は出禁にしてもらおう」
ということになる。
店に予約を入れる時、最初にネット予約から入る場合、例えばこのお店の場合であるが、まず、登録の際に、電話番号を入力させる。
そして、店側がその番号と見て、連絡を入れるのが、まず最初、その時に予約が確定ということになる。
つまり、本人確認という意味で電話を掛けるというわけだ。
その時に、以前NGになった客であれば、その時点で、お断りをすることになるのだろう。
もちろん、電話対応には、それなりの対応方法があって、人にもよるのかも知れないが
正直にNGになった理由を言って、それでお断りするパターン、あるいは、
「今日は急に体調が悪くなった」
などというパターンがあるだろうが、後者は現実的ではない。その後の時間帯で彼女が予約を受け付けていたりすれば、すぐにばれてしまうからだ。
ただ、もっと難しいのは、
「お客が、近親者」
だった場合である。
この場合は、絶対に本当のことが言えないからだ。本当のことを言えないから、お断りしているのだから、どうすればいいのか、難しいところである。
他の女の子を進めるわけにもいかないし、とにかくその日は、うまくいって帰ってもらうしかないだろう。
ただ、客が粘着だった時が厄介である。
出禁になる人も厄介である。
たぶん、そんな人はここだけではなく、他の店でもNGをやらかして、出禁になっているのだろう。そのうちに行ける店がどんどんなくなってくるわけだが、今では、店ごとの情報交換もSNSなどを使ってできているだろうから、どこかで一か所出禁になったら、もう他では入れないことになるだろう。
また、出禁になる客も頭がよかったりする。最近はスマホも安くなったので、スマホを数台持って、電話番号もいくつかあるので、それで何とか命をつないでいる人もいる。
普通に考えれば、
「そこまでするなら、出禁になるようなことをしなければいいのに」
と誰もが思うだろう。