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忌み名

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「この財閥のように、トロイカ体制を気づいてきたからではないか?」
 といわれているが、本当にその通りであろう。
 政治体制も同じことで、
「親の基盤を息子に受け継がせる」
 ということを、平気でやっているのは、地元民としても、
「その方が都合がいい」
 と思っているからではないだろうか?
 誘拐事件は、その間、進展することはなかった。
 せっかく警察が介入し、犯人からの連絡を待っているというのに、身代金の要求はおろか、犯人から何も言ってこないのだ。
「やっぱり狂言誘拐なのか?」
 とも思えたが、その割に、肝心の娘の行方もまったく分からない。
 警察も、誘拐犯からの連絡を待っているだけではなく、被害者と目される女の子の捜索を怠らなかったことも言うまでもないだろう。
 何しろ、被害者は大財閥の一人娘、警察関係にも顔の利く、財閥の令嬢なのだ。警察の威信もあるし、
「できるだけのことを全力で行う」
 というのが、当たり前のことだった。
 しかし、捜査は秘密裡に行われていたし、緘口令も敷かれていることもあり、そんなに大っぴらにはできない。さらに、捜査は、警察でもVIP向けともいわれる、特殊部隊、他の国でいえば、
「大統領親衛隊」
 とでもいえるような、最新鋭の部隊で行うようになっていた。
 そのせいで、警察内部で、少しだけ不協和音のようなものがあった。
 陰で特殊部隊が動いているとなると、他の一般の仕事にも支障をきたす。しかも、絶対的な秘密裡ということであれば、それもさらに拍車をかけるというもので、捜査も少しぎこちなくなっていた。
 だが、いくら特殊部隊とは言いながら、法治国家においては限界がある。
 警察ならではの、通り一遍の捜査方法では、なかなかうまく捜査が進むはずもなく、状況が好転するということもなかった。
 捜査をすればするほど、暗礁に乗り上げるというか、行き詰ってしまうのだった。
 それを考えると、
「警察というのは、探偵のようにはいかないんだな」
 ということであり、それを感じたのは、執権職、その人であった。
 だが、なぜか、相手の術中に嵌っているように感じられた。
 それは、執権が考えるに、
「この俺の考え方を見透かされているかのように感じる」
 ということであった。
 今回の捜査は、民間人でありながら、執権職の男が、特例として、
「捜査に口を出してもいい」
 ということであった。
 警察としても、彼がどれほど優秀であるかということも分かっていて、有識者として、今までも敬意を表していたという側面のあった。
 だから、ある程度の捜査方針には、彼の意見も多大に含まれていた。
 その意見に反対の人間もおらず、むしろ、
「さすが、有識者」
 ということで、警察が感心するくらいだったのだ。
 それなのに、犯人たちは、そんな執権のやり方の裏を綺麗にかいていたのだ。
「どうして、こんなに裏目裏目に出るんだろう?」
 と、紙一重であったが、どうやら、相手が証拠をもみ消しているのが分かるようで、相手も、
「相手にとって不足なし」
 というくらいに、途中から、まるで、
「怪人二十面相」
 のごとく、行き着いた先において、
「また二の足を踏んだね? 警察諸君」
 という手紙を置いて、あざ笑っているのだった。
「ちっくしょう。こいつは一体どういうつもりなんだ。まるでこちらの手口がすべて分かっているかのようではないか?」
 ということで、相手が頭のいい連中であるということは、明白のようだった。
 ここまでくれば、
「さすがに狂言誘拐というのはないだろう?」
 と思った。
 誘拐のリスクの高さや、わりに合わないということに関しては、犯人が一番分かっているだろう。それでも敢えて警察に挑戦してくるということは、
「愉快犯であったり、狂言誘拐の類ではないだろう」
 と言えるのではないだろうか?
 もちろn狂言でも、愉快犯でもないとすれば、
「犯人がいて、被害者がいる」
 という、普通の事件となるはずなのだが、犯人も、被害者も、その姿も、気配すらも感じられない。
 つまりは、
「犯人がいたとして、その目的は何なのか? 恨みだとすれば、誰に対しての恨みなのか? もちろん、あるとすれば社長なのだろうが、社長を苦しめるためとはいえ、娘を誘拐するということに、罪悪感を感じないという極悪非道な犯人なのだろうか?」
 ということである。
 しかも、誘拐されたということであるのに、
「いったい、いつ、どこで誘拐されたというのか?」
 というほど、誘拐の影が見えてこないのだ。
 被害者は、忽然と姿を消し、犯人も何も言ってこない。普通であれば、犯罪を効果的ならしめるためであれば、一旦計画を実行すれば、電光石火のごとくことを勧めるだろう。
 周到に計画されたことであれば、迅速に行えば行うほど、警察の裏を掻いて、うまく逃げきれることもできるだろう。
 しかし、最初の誘拐をしたという連絡だけど、その後まったくの小康状態だというのは解せないというものだ。
 時間を掛ければ掛けるほど、事件は、荒くなってくる。
 相手に余裕も与え、警察の追及も厳しくなるだろう。
 彼らとしても、そうなってくると、今度は人質が、足手まといということになる。
 そうであれば、何のための誘拐だったのか? ということになるわけだが、
「相手を長い間苦しめる」
 ということくらいしか思いつかない。
 もし、それが目的だとすれば、他にもやりようがあったのではないか。何も誘拐に絞る必要はないだろう。それを思うと納得がいかなかった。
 そもそも、こうなってくると、犯人たちが、本当に最後逃げようと考えていたのかどうかということも怪しいものだ。
 つまりは、
「だからこそ、犯人のプロファイルがまったく見えてこない。どういう人間で、何を考えているのか?」
 ということである。
 そうなると、捜査の範囲も限られてくる。いわゆる、
「通り一遍の捜査」
 しかできないということであり、相手も、警察のぐずぐずさをあざ笑っているとしか思えない。
 そのためだけに犯行を犯すなどということは考えられない。
 すると、
「やつらは一体何が目的なのだおる?」
 というところに戻ってくるわけだ。
「身代金なのか、復讐なのか? 復讐だったとすれば、他にもやりようがあったのではないだろうか?」
 と、そんなことを考えていると、次第に、大きな輪の中で、考えが、グルグル回っているだけになってしまう。
 しかも、その輪が次第に小さくなっていくようなのだが、それは、焦点が絞られてきたというわけではなく、
「まったくとらえどころがないので、しょうがなく、捜査を狭めるしかない」
 ということだった。
 分かってきての、捜査縮小ではないだけに、やっている方も理不尽さを感じていた。
「このままどう捜査すればいいのか?」
 と、警察は完全にお手上げだった。
 これが、もし、財閥の絡む犯罪ということでなければ、
「警察としては、捜査本部を解散するしかない」
 ということで、被害者の捜索だけは続けるであろうが、犯人逮捕の目的である捜査本部は解散せざるを得ないだろう。
 警察というのは、そもそもが公務員、いわゆる、
作品名:忌み名 作家名:森本晃次