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蔦が絡まる

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「一人の人を好きになってはいけない」
 という、何か自分の中に不思議な、
「免罪符」
 のようなものを持っていたということではないだろうか?
 そんなことを考えていると、
「ひょっとすると、性風俗で知り合うような女性が、ひょっとすると、一番自分を魅了することになるのではないか?」
 と漠然と感じた。
 そして、風俗に通っているうちに、そんな彼女たちが、まるで、アイドルのような存在に感じてくると、自分の気持ちに間違いがないように思えたのだ。
 それは、まるで、
「アイドルに群がるオタク」
 のような感覚で、自分はその中でも、
「地下アイドル」
 に陶酔しているファンに近いものがあると感じた。
 それは、熱血さという意味で、きっと、それだけ、相手に近い存在であるということを認識しているからではないだろうか?
 アイドルというと、どうしても、自分を過大評価しようとする人も多いのだろうが、それはあくまでも、
「人に負けたくない」
 という意識が強いのは、逆に、
「ファンを大切にする」
 ということの裏返しではないかとおもうのは、贔屓目に見ているからだろうか?
 風俗嬢というのも、アイドルと同じで、いや、それ以上にランキングは給料や指名の数に影響してくるので、もっと切実なのかも知れない。
 ただ、風俗嬢だからと言っても、普通の女の子、どんな事情で風俗嬢になったのかというのは、それぞれなのだろうが、今では昔と違って、
「借金のため」
 などというよりも、
「お店を持ちたい」
 などという目標を持って、その目標金額を少しでも稼ぐために、若いうちにお金を貯めるということで働いている人も多いのではないだろうか。
 だから、一番困るのは、
「身バレ」
 ではないかと思う。
 もっと切実な問題もあるのだろうが、
「身バレの場合の方が、とりあえずの問題としては大きいだろう」
 と言えるのではないだろうか。
 お客さんとして入ってくれた人と、お店の中だけでの疑似恋愛を楽しむというのは、男としても、満足のいくもので、正直、
「料金が高い」
 と思っている人は多いだろうが、それでも、
「お金を払ってでも、疑似恋愛をするのがいい」
 と思う客も少なくない。
 だからと言って、その客が、
「まったくモテない」
 というわけではない。
 奥さんがいたりしても、お気に入りの女の子がいたりすれば、男性は行ってしまう。
 逆に、一人に嵌る客もいれば、いろいろ変える客もいる。
 女の子は自分をアイドルと思っているとすれば、たくさんのお客さんと触れ合うことを望んでいるかも知れない。
 もちろん一人の、人が何度も来てくれるのは嬉しいだろう、しかし、
「たくさんの人が、自分を求めている」
 と感じたいとすれば、それこそ、アイドル気質のようなものなのかも知れない。
 その時、草薙は、つかさのことをどう思っただろう。
 確かに、彼女は童貞の筆おろしに、それなりの貢献があるのだとすれば、それだけ、たくさんの童貞を相手にしたことになるので、
「本指名よりも、新規の客の方が多いかも知れない」
 と思うかも知れないが、草薙は、最初に相手にしてくれた、つかさが、
「柄にもなく、忘れられなくなったんだよな」
 ということであった。
 確かに、最初に相手にしてくれた人に嵌ってしまうというのは、よくあることであったが、
「確かに、彼女のテクニックに中毒性になったというのは、否定しないが。それよりも、一緒にいることで癒されるという思いが強いんだよな」
 と思っていた。
 それを感じると、
「今、風俗に嵌ってしまう男性は、女性のテクニックというよりも、非日常な癒しを、いかに与えられるかということが大切だ」
 ということを感じているのではないかと思うのだった。
 草薙は、その日から、一か月に一度の割合くらいで、つかさに通うようになった。もちろん、彼の給料では、それ以上短くすることは不可能だった。
 それでも、つかさは、そんな彼に健気さを感じたのか、草薙は知らなかったが、つかさの中では、
「特上の客」
 というランクを、彼女の中でだけ、与えられていたのだった。
 半年くらい通ったであろうか?
 最初の数か月は1カ月が待ち遠しく感じられ、しかも、彼女の方も、
「会いたかった」
 といつも言ってくれて、それだけで、嬉しかったくらいだ。
 もちろん、お客さん相手のリップサービスなのかも知れないが。それでも嬉しいのは、自分がつかさに嵌った証拠なのか、それとも、風俗に嵌ってしまったからなのか、最初は分からなかった。
 元々、自分でも、普通の性欲ではないと思っていた。
 性欲が強いとか弱いというよりも、
「異常性癖ではないか?」
 という感覚であった。
 高校時代から、制服が好きで、
「フェチ」
 という感覚ではないかと思っていたが、先輩に連れられてこの店に来るようになってからは、
「お姉さんのような人に、癒しを与えてもらうのがいい」
 と思うようになった。
 そういう意味で、最初に相手をしてくれた、つかさに嵌ったからそうなったのか、それとも、こういう性癖であることに、つかさが気づかせてくれたのか、そのどちらであっても、少なくとも、風俗というよりも、最初は、
「つかさに嵌った」
 といってもいいだろう。
 つかさという女性が、自分に合うと思った先輩の目利きは、結果的に間違っていなかったということであろう。
 そういう意味で、先輩は自分がつかさに嵌っていることも分かっていて、今はそのことについて何も言わない。
 もし、何かまずいことにでもなりそうなら、先輩だったら、きっと何かをいうに違いないと思うのだった。
 しかし、先輩からは何かを言ってくることはなかった。
 見舞っているというわけでもなく、こちらを大人だということで、詮索もしなければ、気にもしていないということであろうか。
 あのお店には、
「先輩に連れて行ってもらった」
 ということでもあるので、
「先輩の顔に泥を塗るわけにもいかない」
 という意識はあるが、自分だって、社会人として、自分が働いた給料できているので、必要以上に気を遣う必要もない。
 先輩は、とにかく、レールを敷いてくれただけだったのだ。
「つかさという女性以外に、他の女性を知らないから、他の女性に入るのは怖い」
 という気持ちがないわけではなかった。
 また、相手が風俗ではない、
「他の女性がいいのではないか?」
 という思いもないわけではない。
 だが、今のところ、
「俺はつかさがいいのだ」
 と信じて疑わない自分がいた。
 少々大げさだが、それほど、つかさにも、風俗というものにも染まっているのかも知れない。そういう意味では、
「風俗遊び」
 という言葉は、あまり好きではなかった。
 本人とすれば、
「これは遊びではない。真剣になってはいけないのだろうが、決して遊びのような気持ちでもないのだ」
 と言いたかったのだ。
 確かに、真剣でなければ、遊びなのかも知れないが、真剣でなければ、絶対に遊びだという考えは嫌いだった。
 その間にある、
「ニュートラルのような気持ち」
 そんなものがあってもいいのではないかと考えるのだった。
作品名:蔦が絡まる 作家名:森本晃次