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蔦が絡まる

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 しかも、ソープの歴史を考えれば、他の性風俗などよりも、歴史は古い。遊郭などから考えれば、江戸時代からのモノである。
 もっといえば、似たようなものは、もっと昔からあったのかも知れない。そもそも、
「性欲というものを、汚らしいものだ」
 と考えること自体、
「人間の創造主である神に対しての冒涜だ」
 と、別に、宗教信者というわけではないが、歴史を勉強していると、そのように感じたくなるのも不思議はないと思っている。
 先輩と日にちを合わせて、初めての性風俗の店へと突入である。
「こういうお店では、下手に恥ずかしがって遠慮することはないが、女の子に対しての敬意の気持ちさえ忘れなければ、天国に連れていってもらえるぞ」
 という言葉を聞いて、最初は、それほどの興奮を覚えたわけではなかったが、実際に決まった日程のその日がくると、さすがに身体は敏感だった。
 ちょっと触られただけでも、俎板の鯉のように、ビクッと飛び跳ねることだろう。
 それを思うと、身体が反応しないわけがない。
 最初に身体が反応し、頭がそれに追いついてくる。それが本当の本能なのだろうが、今まで自分が本能だと思ってきたことが、
「最初に、頭が回転してしまっている」
 と思っていた。
 だから、逆に、
「俺に、本能として、動くことが本当にできるのdろうか?」
 と考えた。
 本能とは若干違うと思える、
「条件反射」
 と結び付けて考えようとするから、ハッキリとした感覚が浮かんでこないのではないかとおもうのだった。
 その考えがあったからこそ、先輩から、
「今度、ソープに連れていってやる」
 と言われて、素直に従ったのだ。
「最初はどんな子がいい? 自分の好みから決めてもいいんだぞ」
 と言われたが、実際に考えてみると、
「最初に一番の好みに行ってしまうと、楽しみがなくなるのではないか?」
 と思った。
 本当は、そうではなく、自分としては、
「お気に入りの女の子ができたら、その子にずっと通い続ける」
 というのが当たり前だと思っていたが、それは、どこか妄想のようなものを抱いているようであり、
「意外とそうではないのかも知れない」
 感じるのだった。
 何しろ初体験ということで、相手の女の子は、先輩に任せることにした。
 先輩は自分でも、
「風俗大王という名前で登録してあって、いろいろな店で、この名前で名が通っているんだ」
 といって自慢していたが、それをそのまま信じてみることにした。
 もし、それで、相手が合わないタイプの人であれば、今度は自分が選びなおせばいいだけであるし、まずは経験、それが第一目的だった。
 先輩が選んでくれたのは、
「つかさ」
 という女の子で、年齢は、25歳と表記してあった。こういうお店では、少し年齢が高めではないかと思った。
 それを聞いてみると、
「風俗というところは、それぞれにコンセプトがあって、設定というのがあるんだよ。若い子が好きに人には、セーラー服やメイドなどのコスプレだったり、癒されたい人には、若妻設定の30歳くらいまでのミセスという感じだったり、テクニックを味わいたい人は、30歳以上の、いわゆる、熟女系というのを好む人もいる。人それぞれなんだけど、このお店は、どちらかというと若い子が多くて、その中でも、高校を卒業したくらいの男の子が、風俗童貞を捨てるのによく利用しているんだ。今のお前のようにな。だから、ここでは安心していていいぞ。特につかさという女は、童貞斬りに関しては、結構なものだということだからな」
 と言われた。
 ただ、草薙は内心、
「そんなに最初にハードルを上げないで下さいよ」
 と言いたかった。
「そうなんですね。じゃあ、任せてみようかな?」
 と殊勝な態度に草薙は出るのだった。
 先輩も鬱状態の時は、声をかけるのも憚るような感じだが、こうやって、立ち直ってみると、実に頼もしい人であることは間違いない。
 そういう意味でも、
「お互いに、持ちつ持たれつだな」
 と先輩に言われたが、
「まさにその通りだな」
 と感じたのだ。
 正直、大衆店という雰囲気のところを選んだのは、
「もし、俺が今度から一人で来るようになった時を考えて、いきなりの高級店だと、お金が続かないと思ったのか、それとも、ソープというものが、皆高級店のような、至れり尽くせりであると思わないようにするためなのか、そのどちらもなんだろうな」
 と、後になって感じたのだ。
 実際に、待合室に入ると、まるでオタクのような連中が、一人で、スマホの画面を見て、暗さが溢れてくるようで、
「俺も一人だったら、こんな目で見られるのかな?」
 と思ったが。
「俺だけは別だ」
 という思いはいくらでも持つことができる。
 それだけ、
「お前たちとは違うんだ」
 という自信があったのだ。
 どこからくるのか、根拠があるわけではないが、そう思うことが大切だと感じたのだった。
 番号札を渡され、待っていたが、先に呼ばれたのは、先輩だった。
「じゃあ、俺はお先にいかせてもらうぞ。せっかくだから、待合室の時間を楽しめばいい。お前ならできそうだ」
 といって、ニコニコしながら、先に待合室を出て行った。
 普通であれば、
「何を勝手なこと言って」
 とおもうのだろうが、
「初めてということで、緊張をほぐす意味で、先輩に騙されたと思って、待合室を楽しむことにするか」
 と感じたのだった。

                 つかさとの出会い

 昔は今と違って、待合室でタバコも吸えた。基本的には、世間では、飲食店などは、ほぼ禁煙になっていたが、風俗店、飲み屋、パチンコ屋などは、まだまだ分煙どころか、客席の前などに、堂々と灰皿が置いてあるのだった。
 そもそも、タバコなるもの、
「百害あって一利なしだ」
 と思っている草薙にとって、タバコを吸っている連中は、
「下等動物の類」
 にしか見えなかった。
 そんな連中と一緒にされるのは迷惑だとばかりに、待合室でも、タバコを吸わない人たちの方に寄っていた。
 タバコを吸う連中からすれば、
「飲食店などで迫害を受けているんだから、吸っていい場所では、堂々と吸ったっていいじゃないか」
 というのが言い分だ。
 パチンコ屋などでも、隣の台でタバコをふかしながら台に向かっているやつに限って、まわりにきつい思いをさせるタバコを吸っているもので、もし、煙たいというようなそぶりを見せようものなら、
「なんじゃ、お前、ここではタバコを吸ってもいいところやぞ。嫌なら他行け」
 と、堂々と自分の意見を主張しながら、恫喝してくるのだ。
 普通は、
「人に迷惑をかけてはいけないから、禁煙にする」
 という理屈が分かっていないのだ。
 自分たちが迫害を受けているということだけを免罪符にしようとしても、そんなのが、今の禁煙への波に、たった一人抗っても、どうなるものでもない。
 そんなことは、本人が一番分かっているだろう。
 だから、パチンコ屋で、虚勢を張るしかないのだ。
 そんな連中を見ていると、何と情けないことか、
 そして、そんな連中に一番迷惑を掛けられているのは、本当の喫煙者である。
「本当の喫煙者」
 というのは、
作品名:蔦が絡まる 作家名:森本晃次