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蔦が絡まる

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「男というのは、いや、人間というのは、よく言われるような、自分のことを棚に上げてということが言える人が、結構いるのではないだろうか?
 そんな中において、なごみが教えてくれた店の女が、まさかつかさだとは思いもしなかった。
「つかさとなごみは、知り合いなのだろうか?」
 と思ったが、風俗嬢は、結構店を移籍したりすることがあったり、なごみのように主婦で風俗嬢をやっていると、一度引退という形で辞めても、また諸事情でこの業界に戻ってくるということもあるだろう。
 前は、ミスという看板だったが、今度は主婦として戻ってくるということで、違うコンセプトの店に入ることもある。
 歩合制のバック率の問題。さらには、店のスタッフや経営方針などへの不満など、店を辞めたり、移籍する理由は様々であろうが、同じ業界の別の店に移籍するというのは、それほど珍しいことでもない。
 中には、
「引き抜き」
 というのもあるかも知れない。
 そのあたりのことは、女の子にしか分からないことだろう。
 なごみという女、今までに相手をしてもらった女の子の中でも、草薙の中では、結構印象深い女性であった。濃厚な時間を毎回過ごすことができ、若い娘にはない、妖艶さが感じられた。
 それは、自分が童貞を喪失した時に感じた、
「つかさへの思い」
 に似たものがあったかも知れない。
 つかさとの濃密で妖艶な世界を知ったことで、
「飽きてしまった」
 とはいえ、他の女を抱いていても、
「つかさが一番だったな」
 と感じることがあったりした。
 かといって、このまま、すぐにつかさに戻るということはできなかった。
 それだけ、一度飽きてしまった身体の印象が消えるまで、かなりの時間を要する。それだけ、自分の身体が、つかさという女の身体の免疫がついてしまったということで、
「飽きが来る」
 というのは、自分の中で、免疫を作ってしまった証拠なのかも知れない。
 免疫というものが、どんなものなのか、漠然としてしか分からないが、
「罪悪感」
 というものとも違うはずなのに、どこか似ているような気がする。
「逆に、罪悪感を感じたくないという思いが、免疫というものを作っている」
 と、言えるのではないだろうか?
 つまり、罪悪感や飽きが来るという感覚は、どこか、伝染病に似ていて、その裏には、
「免疫という抗体を作る」
 という。ワクチン効果があり、その効果が、人間一人一人備わっていて、
「その作用は、人それぞれだ」
 と言えるのではないだろうか?
 こんなことを、最近になって考えるようになった。
 この考えを教えてくれたのが、なごみだった。
 もちろん、言葉で諭されたりしたわけではなく、話をしていて、感じさせられたことだったのだ。
「淫乱奥様」
 というコンセプトで、その妖艶さと熟した身体を堪能するつもりだったが、意外と、普通に接しているのも悪くなかった。
「この人は、家に帰れば、旦那にも抱かれているんだ」
 という思いが、自分が抱いている時にもこみあげてくる。
 いわゆる、
「嫉妬」
 というものなのだろうが、今までの自分に、
「風俗嬢に対しての嫉妬」
 というものを感じたことはなかった。
「感じても仕方のないこと」
 つまりは、マジ恋などできるはずがないと思っているから、
「嫉妬などしても、まったく無意味なことなのだ」
 と感じた。
 そして、そんな嫉妬心を持たないことが、相手に対して、
「飽きが来る」
 と感じるようになったのだということが分かってきたのは、つかさと離れてから、少ししてのことだった。
 つかさと離れてから、
「彼女のよさが分かった気がした。それから、何人かの女を相手にしてきたが、つかさ以上の女はいない」
 とも思った。
 だが、この思いは、また少し違って、
「次々と、手を変え品を変えているかのように、女の子を変わっていくと、皆、前の子以上の女の子はいないって、思えてくるんだよな」
 と感じるのだった。
 最初は、
「どうして、そんな感覚になるんだろう?」
 と思ったが、考えてみると、分からなくもない気がした。
 というのは、前述の、
「免疫」
「抗体」
 という考え方である。
 きっと飽きが来た時点で、その人の免疫のようなものが自分に身についてしまい、新たな人に対して、新鮮さや素朴さは感じるのだが、前の女性の免疫がどうしても残っていて、飽きが来ているくせに、
「忘れられない」
 という感覚が残ってしまっているかのように感じるのだった。
 実に矛盾した考えであるが、それも無理もないことのように思える。
 そもそも、ワクチンなどを打って、身体に抗体ができるまで、発熱したり、気分が悪くなったりという、
「副反応」
 というのが起こるのも、そのせいではないだろうか?
「副作用」
 という言葉は、今までによく聞いたことがあったが、
「副反応」
 という言葉が、ここ数年で起こった、
「世界的なパンデミック」
 で、ワクチンを打った時に聴いたものだ。
 そもそも、ワクチンという言葉も、それまでは、あまり意識したことがなかった。
「予防接種」
 というのは、結構あるが、
「ワクチン」
 という言葉は知っていても、自分たちの生活に影響してくることはなかったのだ。
 まだ、世界的なパンデミックが収まったわけではない。猛威を振るっているのではあるが、それまでは、政府や専門家委員会が、必死になってその撲滅を考えてくれていたと思ったのだが、実は、
「自分たちのことだけしか考えていなかった」
 というのが分かったのだが、新たな首相になってから、政府はあからさまに政策を打たなくなった。
「自分たちの命は、自分たちで守れ」
 と言わんばかりであった。
 まるで保険の外交員が、契約を結ぶまでは、まるで、
「据え膳上げ膳」
 でもあるかのように。過剰なまでの接待をしてくれていたくせに、いざ契約をしてしまうと、一切連絡を取ってこない。
 契約してから、5,6年も経つのに、連絡の一つもしてこないという、とんでもない保険の外交員もいたものだが、政治家というのも、変わりがない。
 もっと露骨だといってもいいだろう。何しろ、相手は、国民全員なのだからである。
 確かに、重症化しないということではあるが、
「救急車を呼んでも、受け入れ先がない」
 ということで、救急車の中で命を落とす。
 あるいは、救急車も出払っていて来てくれない。そのまま自宅で、死んでしまうというような、
「医療ひっ迫」
 が起こっているのに、政府は何ら対策を取るわけではない。
 もっとも、管轄は各自治体なので、その自治体ごとに方針も違っている。ただ、露骨に何も対策を考えないというのは、また違うと言えるのではないだろうか?
 それを考えると、本当は政権交代もやむなしなのだろうが、そこにとってかわるだけの野党が、輪をかけてひどい状態である。
 これでは、まるで、
「国破れて、山河あり」
 という言葉を思い出させるのだ。
 ワクチンや副反応という言葉、この時にクローズアップされた形になったのだが、ちなみに副反応というのは、
「副作用の一種で、予防接種やワクチンなどの影響で、身体に変調をきたす時のことをいうのだ」
作品名:蔦が絡まる 作家名:森本晃次