小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

蔦が絡まる

INDEX|10ページ/22ページ|

次のページ前のページ
 

 ただ、元々、風俗というのは、ある意味、感情が籠っているのかいないのか、微妙に感じることがあった。
 だが、結論としては、
「彼女とつき合うよりも、俺にとっては、感情移入があるのかも知れないな」
 と感じた。
「後腐れがない」
 というのが、本音なのかも知れない。
「女性を好きになるというのがどういうことなのか?」
 と、考えるが、やはり、
「気持ちと肉体とは、切り離して考えてしまう」
 というところがある。
 しかし、気持ちからであっても、身体からであっても、求め合ってしまうと、もう一つも欲したくなるのが、男というもので、それが欲なのだろうと感じるのだった。
 ただ、それは、男性側だけではなく、むしろ、女性の方が強いのではないかと感じた。
 それは、つき合った彼女たちと、風俗嬢との間に感じる、
「温度差」
 があったからだ。
 正直、草薙は、
「風俗嬢の方が暖かく感じられる」
 と思っていた。
 結婚適齢期に、女性と付き合うと、口には出さないが、どこか、
「結婚」
 という二文字が後ろで蠢いているような気がする。
 無言の圧力のようなものを感じ、それを感じると、とたんに冷めてしまい、こちらから、別れを告げるか、相手に嫌気をささせて、相手に、別れを切り出させるという、姑息な手段を使ったこともあった。
 そもそも、二人だけの関係なので、どちらから別れを切り出そうと、まわりには関係ないのだ。それでも相手に別れを切り出させるというのは、二人目の女が、そのような露骨な手段を使ったことで、
「俺がやってもいいんだ」
 と感じるようになったのだった。
 草薙という男は、女性に対して、別にフェミニストというわけでもないが、女性に気を遣うということは、結構考えている方だと思う。
 その感情は、風俗嬢を相手にしているから感じることで、
「やっぱり、彼女たちって、アイドルなんだよな」
 と思うと、
「彼女たちを応援したくなるよな」
 と感じた。
 時々、風俗サイトの中で、年に一度くらい、都道府県内対抗で、お店からエントリーをさせて、ソープ部門、デリヘル部門などと言った部門別にランキングをつけるという、一種のイベントがあったりするが、普段のそういうことには興味を一切示さない草薙だったが、風俗ランキングに関しては。結構意識していたりする。
 それだけ、風俗嬢をアイドルのように見ていたということであろう。
 だが、その時も、写真だけだからなのかも知れないが、つかさを見つけることはできなかったのだ。
 もちろん、他の客全員が、彼女たちを、そんなアイドルのように見ているわけではないだろう。しかし、かなりの数が彼女たちをアイドルとして見ているかということは、コンテストへの応募者で分かるというものだ。
 もっとも、応募者の中から、1時間無料券などの抽選があるのだから、何も損をすることのない客が、応募しようと思うのは当然のことであろう。
 人気のある嬢は結構いて、特に店では、
「推している」
 という嬢がいたりするので、本当に人気がある嬢と、店が推す嬢で違っていたりするので、結果が発表されて、意外に思う客もいるだろう、
 そういう意味で、こういうコンクールは、
「客側の目」
 というのも見れるので、ある意味、客にとってもありがたいのではないだろうか。
 特に、店が決めたランカーの順位によって、指名料が変わってきたりするので、客には切実な問題だったりする。
 これはもちろん、一部の店であるが、さすがにそういう露骨な店は少ないだろう。
 それでも、指名料が高くても、それでも客が予約するのが、ランカーたるゆえんであろう。
 人気がある女の子がいいか、それとも、自分の第一印象を信じるか、それも客それぞれであった。
 つかさは、名前を、
「りな」
 と改めていた。
 しかし、草薙にとっては、つかさであったので、普段は、りなという名で本でいたが、小部屋で二人きりになった時は、つかさと呼ぶようにしたのだった。
「僕はそうしたいんだけど、それでいいかい?」
 というと、つかさの方も、
「もちろん、いいわよ」
 といってくれた。
 本当は、名前が違うということを理由に、
「どうして店を変わったんだい?」
 と聞きたかったのだが、それを聞いてしまうと、
「どうして自分が、急につかさに入らなくなったか?」
 という理由を話さなければいけない。
「聞きたい」
 という思いよりも、
「言いたくない」
 という思いの方が強かったので、草薙としては、聴くわけにはいかなかったのだ。
 草薙が
「どうしてつかさのところに行かなくなったのか?」
 それは、前述もしておいたが、正直なところ、
「飽きがきた」
 からだった。
 その飽きは身体に対してであった。
 最初あれだけ、
「身体の相性はバッチリだ」
 と思っていたはずなのに、どこがどうして、飽きてしまうということになったのか、自分でもハッキリと分からなかった。
 だが、来てしまった飽きはどうすることもできない。
「同じ店で他の子に入ろうか?」
 とも思ったが、ネット予約をする以上、店側に
「今まで、ずっとつかさを指名してきた男だ」
 ということが分かってしまう。
 もっとも、電話予約をする場合も同じで、結局、ケイタイ番号が相手に登録されているので、同じことだった。
 しかも、この店では、ネット予約をすると、まず店から電話がかかってくることになっている。そこで本人確認が行われ、予約がようやく確定することになる。さらには、その日のドタキャンがないように、予約時間の1時間くらい前に電話を入れなければいけないシステムになっているのだ。
 正直、女の子の
「当欠」
 など、日常茶飯事の、
「風俗あるある」
 なくせに、店側からは、客の予約管理されるというのは、客側からすれば、納得がいかない。
「金を払っているのは、こっちなんだぞ。しかも、はした金ではない。サラリーマンとしては、1カ月のお小遣いに匹敵するくらいの額になるのは当たり前」
 といってもいいだろう。
 そういう意味で、草薙が店を変えるということには、かなりの勇気がいった。
 というのも、この店は先輩から教えてもらったお店であるということ、正直、先輩からの繋がりがあって、スタッフの対応もよかった。
 それだけ先輩が、この店でいい態度をとってきたということなのだろう。
 つかさの評価もかなりよかった。さらにつかさがいうには、
「あの先輩は、結構他の女の子にも入っていて、その女の子たちの評判も上々なのよ。だから、評判もよくて、女の子に評判のいい客というのは、同じくらいにスタッフからも人気があるみたいなのよね。要するに、逆に言えば、嬢に人気のない客はスタッフからも嫌われているというわけで、下手をすると、社会的にも嫌われものじゃないかとも思ったりしているわ」
 といっていたのだ。
 その先輩というのは、実はその店以外にも数軒、馴染みの店があるようだった。
 これは、自分から話してくれたことであり、
「最初に風俗遊びをするようになった時、馴染みの店を見つけたいと思って、結構たくさんの店に行ったものだよ。その中で総合的に考えて、今通っている店に絞った感じかな?」
作品名:蔦が絡まる 作家名:森本晃次