悪魔のオフィスビル
ただ、実際には、喫煙室は元からあったところも多く、問題は、
「本当のヘビースモーカーの連中が、もう来てくれなくなるのではないか?」
ということが大きかったのだ。
しかし、実際に、それ以上の問題は、ちょうど同じ頃に起こった、
「世界的なパンデミック」
だったのだ。
受動喫煙では、それほど問題にならなかったパチンコ屋であったが、
「緊急事態宣言中」
に、店を開けているところがあり、それが世間で、大きな問題となり、
「社会問題」
に発展した。
「自粛警察」
なる連中が出てきて、
「パチンコ屋が、休業要請に逆らって、店を開けているのは、けしからん」
ということであった。
どうして問題になったかというと、ほとんどのパチンコ屋は閉まっているわけだから、
「ギャンブル依存症」
のパチンコ狂いの連中が、開いている店に、殺到したからだ。
そんな店を自粛警察は、かなり攻撃する。さらに民衆に煽られるという形で、マスゴミも攻撃することになる。
そうなると、行政も何とかしなければいけなくなり、
「休業要請にしたがわないと、店名を公表する」
と言い出した。
しかし、これは逆効果だった。
というのも、店名を公開したことで、今度は、
「ギャンブル依存症」
の連中に、
「この店は開いていますよ」
ということを教えることになり、却って、人の集中を招くことになるのだった。
確かに、皆休業しているのに、開けている店は、攻撃されても仕方がないのかも知れないが、実際に、一日店を閉めただけで、休業どころか、廃業に追い込まれるのは分かっているのだ。
支出から考えれば、日々の収入が、数百万から、数千万なければ、やっていけないという自転車操業のようなパチンコ屋は、本当に死活問題であった。
それを果たして、自粛警察のように、頭ごなしに、
「店を開けるのはけしからん」
などと一刀両断とできるだろうか?
それが、大きな問題だったのだ。
それを考えると、受動喫煙防止法は、悪い法律ではないし、緊急事態宣言も、致し方のないことであったのだろうが。
「すべてがうまくいく」
などということはない。
特に、日本という国は、
「平和ボケ」
をしている国の最先端なので、パニックが起こった時、バカげた政策は多いのは仕方がないのかも知れないが、それにしても、あまりにもひどかった。
「○○マスク」
などと言われた、バカげた政策もあった。
しかも、そこに政治家の利権が絡んでいるというのだから、開いた口がふさがらない。
さらには、補償問題として、
「自治体の要請にこたえて、感染対策を徹底している店や、時短営業をきいてくれた店などには、補助金を出す」
ということであったが、実際に補助金が出たのは、半年後だったりと、下手をすれば、
「2,3カ月ともたない」
という店が多い中で、補助金が出ることもなく、廃業に追い込まれた店も相当あっただろう。
さらに、自治体が出すという補助金など、店が抱えた負債から見れば、
「鼻糞にもならない」
と言われるほどしかないのだから、実にひどいものだ。
それを考えると、パチンコ屋のように、
「勇気を出して、営業した方がよかった」
と思って、潰れていく店も多かったことだろう。
もちろん、
「人の命を守る」
という意味でいけば、休業要請も、時短要請も当たり前のことであり、仕方のないことなのかも知れない。
だが、実際に本当にそれが正しかったのであろうか?
いまだに収まることをしらない、
「パンデミック」
ウイルスは、変異に変異を重ね、どんどん、感染者は増えてくる。
本当は受動喫煙どころではないのだろうが、最近は、感染者が増えても、政府も国民もあまり気にしなくなっていた。
「経済も一緒に回さないといけない」
という政府の方針からか、
「諸外国もやっている」
ということで、ただの、
「右倣え」
ではないだろうか。
「表ではマスクもしなくていい」
などという、ふざけたことを言い出して、政府は、
「国民の命を守る」
という仕事を、放棄したかのようだった。
要するに、政府は国民に対して、
「政府は何もしないから、後は、自分の命は自分で守れ」
と言っているのと同じではないだろうか。
実際に、医療はひっ迫し、
「助かる命が助からない」
という現状を見て見ぬふりをしているのか、
「これが政府の本当の姿だ」
ということを思うと、もう、どうしようもないことなのであった。
それを思うと。
「本当に政府は、国民がどうなろうと、自分がよければそれでいい」
ということなのだろう。
「国破れて山河あり」
まさに、敗戦国の姿がそのままではないだろうか?
少し話が大げさになってしまったが、この会社ビルも、受動喫煙と言いながらも、非常階段でタバコを吸っている人が多いというのが実情だった。
だから、どうしても、非常階段を閉め忘れて帰っているところも少なくない。だから、犯人たちも非常階段を使った犯行を考えていたのだ。
犯行は、思わぬ形で露呈した。
泥棒の計画がどのようなものであったか、すぐには分からなかったが、泥棒の計画がどうであったのか分からないが、ロビーで、人が刺されたことで、そお人は、そのまま即死だったようだ。
犯人は、最初から、その人を殺すつもりはなかったのだろう。犯人は気が動転してしまい、その場を急いで立ち去ったようだ。
しかも、被害者は、その場所に倒れこんでしまい、そのまま誰にも発見されずに、一晩が過ぎ、翌朝、最初に出社してきた人間が、そこに倒れている人を見て。
「殺人事件だ」
ということで、すぐに警察に連絡を入れた。
他のビルの人たちは、ほとんどがリモートワークだったこともあって、一部の社員しか出社してこないので、それほど大きな事件として目立ったわけではないが、少なくとも人が殺されているのである。ビルはある意味、しばらくの間、隔離されることになった。
どうしても、出社の必要がある会社があれば、管理会社から警察に依頼し、警察警護の下での出社は許された。
それでも、ほとんどの会社が、一日一度は誰かが来なければいけない状態だったので、
「基本的には、午前中だけは、会社への入室を許可します」
ということを警察が言ってくれたので、出社できるようになった。
だが、鑑識が、捜査を終えるまでは、ロープが張られ、入室は、勝手にできないようになっている。
「殺人事件なので、仕方がないといえば、仕方がない」
ということになるだろう。
そう思うと、警察もなかなか難しい選択に迫られているようだった。
何と言っても、事件の概要がなかなかつかめなかったのだ。
「犯人は、泥棒で、出会い頭に出会ってしまった被害者を、衝動的に刺し殺してしまったのではないか?」
というのが、大方の見方であったのだ。
通報したのは、朝出勤してきて、被害者を見つけた男だった。時間的には、早朝の七時くらいだっただろうか? それから、十数分ほどで、警察がやってきた。
鑑識がせわしなく、そして、冷静沈着に行動する。カメラ班も予断なく、あたりを、パシャパシャ撮影している。