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悪魔のオフィスビル

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「世界的なパンデミック」
 の時代を迎えた。
 公道自粛の時代になって、
「緊急事態宣言」
 が発令され、会社によっては、最初からテレワークの体制ができているところもあったが、ほとんどは、体勢どころか、何をどうしていいのか分からないところも多かっただろう。
 何しろ、
「会社に来ないと仕事ができない」
 という人も大多数で、テレワークができるのは、ごく限られた人たちだけではないかと思われた。
 そんな状態が続いていたが、ある時、会社ビルに泥棒が入ったのだ。
 ただ、それが泥棒だけで終わることなく、殺人事件に発展したことで、話は大きくなり、しばらく、事務所に赴くことも難しくなった。
 ちょうどテレワーク推進ということもあり、ほとんどの会社がテレワークを行うようになったが、そのせいで却って、事件の捜査は時間が掛かることになった。
 犯行があったのが、ビルのロビーがある三階だった。
 というのも、このビルはちょうど川の土手に位置していて、ロビーがある正面玄関はと手部分にあることで、三階がロビーになっていた。そして、土手の下側が、歯医者と、駐車場になっているという一種不可思議な構造になっていて、地上五階の建物に見えるが、実際には、七階建てだといってもいいだろう。
 このビルは他のビルと同じように、土地面積が狭く、ワンフロアで一事務所というところになっていた。だから、一つの階に一つの会社しか入っていないので、その会社が全員退社すれば、ロビーで警備を掛け、その階には、基本的に入ることができない。
 ただし、非常階段があり、非常階段側のカギが開いていれば、非常階段は、基本的に出入り自由で、警備もないので、簡単に入ることができる。もちろん、警備が掛かっていれば、事務所のカギを開けた瞬間に、警備会社に信号が行き、十分ほどで、警備員が駆け付けるということになっている。
 また、三階のロビーにて、警備を掛けておくと、エレベーターは、その階を押しても反応しない。つまり、エレベーターでの移動は不可能なのだ。
 本当であれば、非常階段の扉にも警備を掛けるべきなのだろう。
 つまり、非常階段のカギを閉めなければ、ロビーで警備が掛からないというような形にするべきなのだろうが、そんなことはなかった。
 実際に、このビルに入ったテナントの会社のほとんどは、最初の頃、非常階段側のカギを閉めるという習慣はなかったという。
 そもそも、非常階段は、本来なら、ずっと閉め切っていてもいいはずである。そうすれば、開け閉めを気にすることはないからだ。
 しかし、非常階段で、喫煙者がタバコを吸うという時期が結構あったので、どうしても、非常階段には、ひっきりなしに人が出入りしているので、誰かが会社にいる時は、非常階段を閉めるということはなかった。
 下手に締めると、締め出してしまうことになるからだ。
 もちろん、一階まで非常階段を使って下りれば、カギが掛かっていても、表に出ることはできるので、そこからまた正面玄関から回って、エレベーターで事務所に戻ってこようと思えばできないわけではない。
 しかし、そんなバカなことは、愚の骨頂である。
 だから、最期に帰る人間が、戸締りと一緒に非常口の扉を施錠するというのが日課になったわけだが、それでも、最初は施錠していなかったところが多かった。
 最後に帰る人間がいい加減だったりしたせいもあり、今でも、締める会社、締めない会社とさまざまなようだ。
 ただ、さすがに、
「受動喫煙防止法」
 というものができて、基本的には、
「非常階段であっても、タバコを吸ってはいけない」
 という法律ができたのだが、なかなか実際に守られているところがどれだけあるのか、正直、疑問である。
 中には、客がいない時は、オーナーが、店でタバコを吸っていたりするという話も聞いたことがある、
 それを思うと、
「法律なんて、あってないようなものだ」
 としか思えなかった。
 実際に、法律制定後は、
「室内がダメなら、表で吸うしかないじゃないか?」
 という、ルールを守らない喫煙者の勝手な理屈で、公園などで、大っぴらにタバコを吸っている。
 歩きながらの、咥えタバコも多いくらいだ。
 そんな光景を見ていると、
「本当に、日本という国は、腐ってるな」
 と思わざるをえない。
 もし、
「日本だけじゃなく、外国だってそうだ。もっとひどい国もある」
 などといって、言い訳でもしようものなら、これほど愚の骨頂はない。
「他がしているから、法律違反でも、許される」
 と言っているのと同じで、それこそ、
「自分はバカだ」
 と言っているようなものではないか?
 それを正当化しようという考えが、それこそバカなのだとしか思えないのだった。

                 初動捜査

 受動喫煙防止法が制定されて、すでに2年が経っていた。
 ちょうど同じ頃に、第一回目の、
「世界的なパンデミック」
 によっての、
「緊急事態宣言」
 が発令された時期でもあった。
 もし、これがなければ、児童喫煙防止法が大いに話題になっていたことだろう。そして、これを話題にするのは、パチンコ屋などではないかということは、容易に想像できたのであった。
 というのも、受動喫煙防止法によって、一番影響を受けるのが、
「禁煙対策を取っていなかったところ」
 だと言えるだろう。
 この法律ができるまでも、結構禁煙という風潮は起こってきていて、飲食店などのほとんどは、禁煙のところが多く、もし、禁煙でなくとも、喫煙室を作って、禁煙車とは、一線を画していたのだ。
 だから、そんなお店は、法律が制定されようが、
「今までと、一切変わらない」
 ということで、意識すらしていないかも知れない。
 しかし、分煙対策をまったくしていないところ、例えば、パチンコ屋であったり、居酒屋などというところは、かなりの影響を受ける。
 ただ、禁煙者にとってはありがたいことだった。それまでは、タバコの煙を煙たそうにすると、タバコを吸っているやつが、我が者顔で、
「ここではタバコが吸えるんだ」
 と言って、却って、禁煙者を恫喝してくる。
 こんなことがあっていいものか?
 昭和の時代じゃあるまいし、何をいまさら、時代を30年以上も遡らなければいけないというのか、実に嘆かわしいことである。
 しかし、法律ができると、もちろん、パチンコ台の前で吸うことは許されない。喫煙所というスペースを設けて、国で定めた基準に合格した換気を伴っていなければ、その場所を、
「喫煙所」
 として認識することはできず。そこではいくら喫煙所と書いてあっても、そこでは吸ってはいけないということになる。
 そういう意味で、パチンコ屋も居酒屋も、喫煙者を客としてこれからも来てもらいたいと思うのであれば、かなりの設備投資をして、喫煙室を作る必要があるのだ。
 だから、法律が決まってから、施行までの間に、喫煙室を作るか、あるいは、
「喫煙者、お断り」
 ということにしてしまうかのどちらかを迫られることになる。
 個人商店の居酒屋などは、設備投資できなくても仕方がないだろうが、パチンコ屋は、設備投資をしてでも、何とかと思うだろう。
作品名:悪魔のオフィスビル 作家名:森本晃次