悪魔のオフィスビル
そうなってくると、まだ完成していない都心部のビル群であるが、何に利用しようというのだろうか?
ひょっとすると、
「このままパンデミックが収まらない」
と考えた時、野戦病院として、
「伝染病病棟」
を急遽作ることになるだろう。
もし、市長がそこまで考えていたのだとすればいいのだが、まずそんなことを考えているはずなどない。これはあくまでも、
「ケガの功名」
というだけで、やろうとしていることは、
「税金の無駄遣い」
であり、
「税金泥棒」
の汚名を着せられることになるに違いない。
そんな時代を誰が想像するというのか、
「きっと、それを想像できることができる人は、他の人の意見にはことごとく逆らう発想を持っている、天邪鬼ではないか」
といえるだろう。
K市会社ビル
こんな世の中において、F市が、無謀な、
「ダイナマイト計画」
を進めているのを見て、K市の市長は、
「あいつは反面教師だ」
ということで、自分たちの考え方を優先するというやり方に徹するようになってきた。
元々、F市との間の確執は、戦後くらいからあり、ある意味、
「ライバル関係にある」
と言ってもいいだろう。
元々、K市も、一度県庁所在地としての名が挙がったことがあった。ただそれは、隣の、D市との合併が条件であったが、これに対しては、K市の方も、D市の方も、声を揃える形で、
「それは嫌だ」
ということで、お蔵入りになったのだった。
また、
「平成の市町合併」
でも、D市との合併の話があったが、これもなしになった、
ただこの時は、D市側の反対が強かった。
「お互いにせっかく市として成り立っているのに、合併することはない」
というのが、D市の理屈で、K市の方も、結構独自の政治を行っているところがあったので、他との合併は避けたかったのだ。
「県庁所在地である、F市に吸収合併される」
などという、根も葉もないうわさが立ったが、K市の住民は、K市が、F市に並々ならぬ対抗心を持っていることは分かっているので、
「合併など、天地がひっくり返らなければ、ありえない」
と思っていた。
そもそも、もし不況などで倒れるとすれば、他の市の方が先で、最期までK市は生き残るとほとんどの皆が思っていた。
実際に、ここは市県民税も他に比べれば高かったのだが、それでも、
「他の市に住むよりは、ここにいた方が絶対にいい」
ということで、転出する人はほとんどいなかった。
さすがに、今では飽和状態になっているので、転入を受け入れられる状況で会ないが、そのおかげで、市の懐は潤っている。
市が誘致する会社も、しっかりしたところが多く、安定していた。
そんなK市というところは、実にいいところで、環境面、教育、実に行き届いているところだったのだ。
もっとも、K市が、全国的にも、
「モデル都市」
だといわれるようになったのは、最近のことで、それこそ、
「パンデミックのおかげ」
ともいえるかも知れない。
ここでは、病院が充実していて、医療も充実していた。
他の地区で患者が多発しても、ここでは、結果、医療崩壊を起こすことはなかった。
市の方針を、企業も家庭も一致岩傑して守ったのだ。
国の体制からいえば、逆らっているところもあったが、市長が、立ちはだかってくれて、市民全員が、盾になる形で、うまく回していた。
「逆に、中央政府に逆らう自治体だったから、余計に、団結した」
といえるのではないだろうか。
この土地の人間は、そもそも、そういう人が多いのか、中央政府に不満を持っている人が比較的多かった。
だから、市の方針が、
「政府に逆らう」
というやり方で、貫いてこれたのだろう。
市の方としても、国家に逆らう市民を後ろ盾にすれば、
「中央に逆らうことができる」
と思っているのだろう。
他の自治体でも、
「市民が逆らってくれたら、自分たちが矢面に立つくらいの覚悟はある」
という自治体も、全国にはあるに違いない。
実際に、水面下では、他の県でも似たような考えを持っている市とは、連携を取っていて、
「どちらかが、活動を起こせば、その後方支援は、水面下で行う」
というような考え方を持って、体勢を築いていたのだった。
だからこそ、今回のようなパンデミックが発生した時、自治体によって、
「被害のひどいところ」
または、
「比較的被害の少ないところ」
と、明らかに分かるところが多かった。
自治体は自治体で、政府のいうことばかり聞いているわけではなく、自分たちで自主的に行動できる体制を、最初から築いているところは、少なくないのだった。
そんな中の一つにK市があり、K市が、
「モデル都市だ」
と言われるようになったのも、K市をプロパガンダとして、国政に逆らう体制を築いているのだった、
そういう意味で、K市というところは、結構破天荒なところがあるのではないだろうか?
政府に逆らうという意味では、そういえば、ここの市長は、元々作家で、政府批判の矢面になっている人だったと聞いたことがあった。
政府や、官僚などの話題を、結構早くから掘り下げる作家で、トレンディドラマが流行った頃からこっち、官僚における。
「キャリア、ノンキャリ」
などと言った階層への挑戦を描く作品が主流となってきたが、その先駆けのような作品を書いていたのが、ここの市長だった。
それだけに、中央政府や官僚についても詳しいだろう。どこまで取材ができたのか、官僚や政治家が、どこまで話をしてくれたのか分からないが、ある意味、ある程度のことは話しておかないと、
「何を書かれるか分からない」
ということである。
中途半端な知識から、
「読者に面白おかしく伝える」
ということを主体として書かれると、もし、それが本当のことでも、書かれては困ることを暴かれるのは困るだろう。
下手にニアミスになるようなつもりで作家としては書いていても、それが真実であれば、普通であれば、
「名誉棄損」
といえるのだろうが、下手にここでごねると、
「痛くもない腹を探られた」
とでも言わんばかりの自体になりかねないと言えるであろう。
特に、自分が書き始めた作風がウケて、二番煎じで、どんどん新しい作品が生まれてくると、
「自分が本当の生みの親なのに」
と思いながらも、人に取られたことで、自分は、別の道を模索するようになる。
「どうせ、まわりが追いかけてくるのだろうが、先駆者が自分であるということを、世間が認めてさえくれれば、それでいい」
と考えていた。
彼は、
「他の人に踏み荒らされたものを悔やむよりも、また新たな世界を開拓する」
ということに生きがいを感じ、
「とにかく、先を見ること」
ということをモットーに感じ、いつの間にか市長選に立候補し、圧倒的多数で、当選したのだった。
そこから先は、今が3期目で、結構長期政権なのだが、それでも、いまだに新たな開拓を模索している。隣の、F市の市長と比較すればするほど、
「月とスッポンだ」
といえるだろう。