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黒電話の恐怖

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 と思っている。
 男子生徒は結構分かる。真正面から見ることができるからだろう、
 女生徒に対しては、どうしても正面から見ることができない。知らない人が聞けば、
「女性から、自分の肉体的な欠陥でも指摘されて、それがプレッシャーにでもなってるんじゃないか?」
 と思うに違いない。
 実際に、35歳になるまで独身で、彼女もいるようには見えない本郷に、
「何か、あるのかも知れないわね」
 と、女性陣は、一歩下がったところから実際には見ていた。
 それに比べて男性陣は、同情票が多い。
「男にだって、人に言いたくないことの一つや二つはあるもんさ」
 と言って、どこか傷を舐め合っているようなところがあった。
 そんな本郷だったが、最近、寝つきが悪かった。眠ったと思っても、気が付けば深夜に飛び起きることが多く、
「何か、怖い夢でも見たんだろうか?」
 と思うのだが、あまりにもビックリして飛び起きたことで、夢を見ていたことすら意識にないほどとなっていた。
 そんなことが何度かあるうちに、飛び起きることに慣れてきたのか、冷静に考えると、
「どうして飛び起きたのか?」
 ということが分かったような気がした。
「あの音は何だったんだろう? 聞き覚えがあるような気がするのだが」
 と、考えていたが、ちょうど、有料放送で昔の刑事ドラマをやっていて、そこに出てきたワンシーンで、気付いたのだ。
「ジリリリーン」
 という音である。
「そうだ、これは、昔の黒電話の音ではないか、正直聞いた記憶はないが、ドラマなどで聞いたような気がしたんだ。だけど、実際に静寂の中であんな音がすれば、俺じゃなくても、ビックリして飛び起きるというものだ」
 と感じた。
「やっぱり夢だったんだよな」
 とその時はそう思った。
 なぜなら、いまさら黒電話など、どこにもないからだ。スマホなどで、効果音をダウンロードができるアプリがあったとしても、誰かが故意にやらなければ、音を聴けるはずもないだろう。
 それに夜中にあれだけの音が鳴り響くのだから、他の部屋からも苦情が出るはずなのに、誰も何も言わないではないか?
 というのが、その理由だった。
 しかし、最初に意識して二十日ほどしてから、急に、2軒隣の部屋の住人から、
「夜中に、黒電話の音がして、たたき起こされた夢を見た」
 と隣人に話しているのを聞いた。
 それを聴いて。本郷は、自分の耳を疑ったのと同時に、どこか安心している自分を感じたのだった。

                 神経質と勧善懲悪

 本郷は、その日から、電話のことが気になって気になって仕方がなかった。
 最初は、自分がまわりから言われるだけで、言われたことが自分だけなので、
「気持ち悪い」
 とは思ったが、他の人にも聞こえるというのは、ちょっとおかしな気がしてきた。
 聞こえたのが、自分だけだというのであれば、
「どうせ錯覚なだけなんだ」
 ということで、人から何と言われようと、すぐに忘れてくれるということで、それ以上は何もないと思っていた。
 しかし、他の人も聞こえたとなると、話は変わってくる。
 もちろん、錯覚ということがまったくないとは言えないが、
「限りなくゼロに近い」
 といえるだろう。
 しかも、自分が言い出したことで、他の人が騒ぎ出したというのであれば、話は別なのだが、
「どこかからか、電話の音が聞こえる」
 ということは話していない。
 なぜなら、これが今の電子音の電話の音であれば分からなくもないが、これが、黒電話という、普通であれば、存在しないはずのものが聞こえてくるというのは、いかにもウソっぽいと思われるか、オカルト話のようで、気持ち悪がられるだろう。
 どちらにしても、このことを口外するということは、完全に、自分に不利になることであって、まったく意味のないことを口にするようなことはしない。それをするくらいなら、
「人のウワサも七十五日」
 とばかりに、何も言わないのが、かしこいに違いないのだ。
 本郷は、だから、他の人が、騒ぎ出したのを聴いて、自分から、
「ああ、それは私も感じたことがあります」
 などということは言わない。
 下手に煽ることになるし、最初から、やり過ごすという目的だっただけに、余計なことをいうと、意味がないと思ったからだ。
 だが、一人で抱えているのも少しきつい気がした。
 だから、気になって仕方がないというのも、無理もないことであり、
「俺は誰にも話していないのに、どうして、黒電話という話が出てくるんだ?」
 と考えたのは、黒電話という意識をその人が持っているから、黒電話を意識している自分が無意識に、気になってしまうということになる。
 しかし、人が、何の脈絡もなく、
「黒電話」
 という言葉を言い出すのだとすれば、これはもはや錯覚ではない。誰かが悪戯していると考えるのが、一番考えやすいだろう。
 しかし、何の目的で、であろうか?
 一番考えられるのは、
「住民にその部屋から退去してほしいために、怖いウワサを流し、出て行ってもらうように仕向ける」
 というものだ。
 しかも、これが、普通の電話ではなく、昔の黒電話ということになると、何か曰くがあるのではないかと思うだろう。
 昔という言葉がキーワードであって、それこそ、きもだめしなどの仮面をかぶった幽霊であっても、その効果音であったり、光の具合などで、恐ろしく見せるという演出がある。
 ただ、この場合は、幽霊のようなものを見せてしまうと、それこそ、信憑性はない。とにかく、怖がらせるのが目的であれば、
「正体は決して明かさない」
 というのが、鉄則なのではないだろうか?
 そう思うと、
「幽霊というものは、姿を見せない方が効果的だ」
 といえるだろう。
 妖怪も、本当は姿を現すよりも、
「見えないが、何かがいる」
 と思わせる方がよほど恐ろしい。
 小説のジャンルでいうところの、
「ホラーとオカルトの違い」
 と言ってもいいだろう。
 ホラーというと、そのものズバリの、
「恐怖小説」
 と言ってもいいだろう。
 妖怪や幽霊や、ゾンビなどが出てくるもので、それが、劇中で暴れまくってみたりするいわゆる、
「サイコホラー」
 と呼ばれるもの。
 そして、オカルトというのは、超常現象や、都市伝説などのように、
「昔から言われていた、その土地に纏わる話であったり、人に話しても信じられないような話も、実はその土地の人にとっては、語り継がれてきたこととして、周知のことであったりというようなものが、オカルトと呼ばれるものではないだろうか?」
 と思っている。
 黒電話が、
「ジリリリーン」
 と鳴り響いた音が、しばらくは、耳に残って離れなかった。
「実際の音は、テレビなどでしか聴いたことがなかったはずなのに、これだけ深く残っているのは、それまでに聞いたことがあったからだろうか?」
 と思っていた。
 そこで、思い出したのが、子供の頃の記憶だった。
 あれは、どこかの工事現場風のところだったような気がする。
 そもそも、なぜ、自分がそんなところにいるのか正直覚えていないが、小さな頭に、大きな黄色いヘルメットをかぶせられていたのを思い出した。
作品名:黒電話の恐怖 作家名:森本晃次