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黒電話の恐怖

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 という作戦しかないのではないか?
 それを思うと、
「相手が生徒で、先生が手を出すことはできないというという弱点」
 それをつくのであれば、こちらにも考えがある。
「皆の、内申書、覚悟しとけよ」
 と言えば、少しは効果があるかも知れないが、それは脅迫であり、本当に通用すればいいが、相手のプライドというものにある堪忍袋を切ってしまうと、もう収拾がつかないだろう。
 堪忍袋というのは、人にはいくつもあって、その結界を超えることは、たくさんあるのかも知れない。しかも、人それぞれで違っているのだから、一人を相手にするだけで大変なのに、複数名を相手にするということが、どれほど難しいというのか、本郷にも、先生になって、このような屈辱を受けることで、やっとわかったのだった。
 しかも、この場合の堪忍袋は、
「暴力」
 を相手にするものだった。
 相手は複数、そういう意味では、ここで、立場を利用しての脅迫は、暴力による喧嘩において、
「先に手を出してしまった」
 ということになるのだろう。
 最初の頃の夢は、そんな生徒との葛藤が辛かった時期だった。
 しかし、そんな連中が卒業していくと、今度は、まったく挑戦的な生徒はいなくなって、授業も真面目に聞いてくれる生徒ばかりだった。
 と言っても、その代わり、不登校の生徒が数人いるので、教室は、若干寂しい、
 さすがに、
「騒いでくれ:
 などと、以前のことを考えても、口が裂けても言えるわけのないことであるが、それでも、空気が抜けたような雰囲気は、いつ突風に変わるか分からないという静寂に思え、
「嵐の前の静けさ」
 を感じさせ、自分の中で、不安ばかりが募るという感覚であったのだ。
 だからであろうか、自分の中で、
「気を抜いてはいけない」
 という気持ちがあったのも事実だった。
 「神経質」
 と言われるのも、
「石橋を叩いて渡る」
 という性格がもたらしたものだということを自覚しているからであろう。
 だが、一つ自分の中で懸念があった。
「あまり気合ばかり入れていると、ふとした油断が、この時とばかりに、自分に襲い掛かってくるのが怖い」
 というのもあったのだ。
「急に襲ってくる突風は、普段から、用心深い性格であるだけに、想定外であれば、何をどうしていいのか、分からない。分からないからこそ、普段から緊張している。それをまわりは、神経質だと見るのだろう」
 と思っていた。
 この思いは、緊張というものや、神経質というものを自分の中で納得させようとしているものなのだろう。
 弁論大会への出場の時も感じたのだが、
「俺はとにかく、自分に納得したい」
 という思いがたぶん、人よりも強いのだろう。
 この思いがあるからこそ、教師になってから、今まで、紆余曲折はあったが、
「たぶん、負のスパイラルを起こすことはなかったんだろうな?」
 と、ポールダンスをしているかのように、らせん状に落ちてくる様子を想像したが、その顔が自分ではない別人であることを認識したのだった。
 だが、それでは、
「あの夢に出てきた、自習のような光景は何だったのだろう?」
 と感じた。
 つい最近のことのように思えたのだが、冷静になって思い出すと、あんなこと、今までの授業ではなかったような気がした。
 それなのに、その生徒が卒業すると、平和が戻ってきたかのような、取って付けたストーリーが、リアルな思い出のようによみがえってきたのは、錯覚だったのだろうか?
 そんなことを考えていると、本郷は、夢というものが、
「どこまでリアルなんだろう?」
 と感じるようになったが、その次に見た夢で、
「ああ、やっぱり、夢というものは、リアルな思い出が、基盤となっているのだろう。しかも、トラウマになるようなことであったとすれば、なおさらだ」
 と感じたのだった。
 相変わらず、
「あれは、いつのことだっただろう?」
 という疑問から、夢は始まる。
 そして出てきた場面は、通学路に位置する、
「坂の中腹にある、神社だった」
 ということであった。
 そこで起こった事故、それが、本郷の運命を変え、それまで、ほとんど何もなかったという伝説とまでなっていた街に、センセーショナルな話題をもたらした事故が起こったのだ。
 他の街では、毎日どこかで起きているような、言い方は悪いが、
「些細なことだ」
 といえることだけに、それまで何もなかったこの街が、
「本当に幸せなのだろうか?」
 といえるかということであった。

                 夢の正体

 その夢に出てきたことが、事実だったのかどうかは分からない。しかし、最終的な事実は変わりようのない事実であり、その事実から、警察の鑑識が割り出した、その過程を聞かされて、
「ほぼ、間違いのない事実なんだでしょうね」
 と、警察から言われ、
「これは、しょうがない事故ではありましが、学校側としても、こんなことが二度と起こらないような再発防止に向けて、対策を取ってくださいね」
 ということで、完全な事故として片付けられた。
 しかし、学校側は、とりあえずの処置として、当時の担任だった。本郷を、他の学校に赴任させることにしたのは、一見、ひどいことのように思うが、実は水面下で、納得がいかない父兄たちが、
「本郷先生を糾弾する」
 という動きに出ているというウワサが立ったことで、
「本郷先生を守るという意味」
 もあって、早々に転属を決めたのであった。
 これが、学校側の英断だったのか、それとも、父兄の圧力に負けたということなのか、正直分からなかった。
 だが、学校側としては、
「臭い物には蓋を」
 という考えだったのだろう。
 煩わしいことは、最初から排除という考えが、保守的な連中の根底にあり、今回も、そういう意味での、
「トカゲの尻尾斬り」
 だったのかも知れない。
 その日の夢は、本郷のまったく知らないところであって、
 目線がかなり低い状態なのは、自分が中学生目線になっていることに素早く気づいたからで、そのおかげで、
「これが夢だ」
 ということに早く気づけたのだろう。
 夢の中だと思うと、次第に大胆な気分になれた。普段は、公務員という意識が、先生という聖職者という意識よりも強かった。
 それは、あくまでも、法律を重視しているという意識があるからか。
「自分に不利であったり、責任という二文字が絡むことになった場合。先生というだけでなく、公務員という立場が、最期には決めてとなるだろう」
 という思いがあったのだ。
 これは、保守的というよりも、先生になった時、
「あなたたちは、公務員であるということを肝に銘じてください。先生であったり、警察官というのは、その表に見えている立場よりも、最終的に、公務員という社会的立場で判断され、責任の二文字がのしかかってきた時、嫌というほど、その言葉の意味を知ることになる」
 というようなことを言われたのを思い出していた。
 学校において、授業をしていても、生徒が下校後であっても、さらには夏休みなどであっても、気が抜けないのだ。
 会社の上司であれば、
「会社を一歩出れば、その人のプライバシーを尊重しないといけない」
作品名:黒電話の恐怖 作家名:森本晃次