小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

自分の道の葛藤

INDEX|18ページ/23ページ|

次のページ前のページ
 

「どうせ、私に無断で応募させ、私のことだから、他人が応募したなんてことを言わないので、すぐに落選すれば、誰も知らないままで、この私が、まわりに知られたらどうしようという怯えた気持ちで過ごすというのを見て、楽しもうとでも思ったのかも知れない」
 と感じたが、
「当てが外れたわね」
 と思うと、ちあきは、逆に、はるかを追い詰めることを考えていた。
 今までは、はるかが勧めてくれたということを誰にも話していなかったが、
「それを合格したことで、公表するというのも面白い」
 と感じたのだ。
「私の合格は、はるかのおかげ」
 と宣伝する。
 もちろん、そんなことを微塵も思っていないが、宣伝することによって、はるかは、
「そっか、はるかさんがちあきさんの才能を見抜いたんだ」
 ということになり、それを、自分の実力として、素直に認めるだろうか?
 もし、それを自分の実力として認めるくらいであったら、黙って、応募などということはしないだろう。
「どんな方法であっても、私を陥れる」
 ということに集中しているのだと思うと、はるかを、
「いかにして、今度は追い詰めようか?」
 と考える。
 自分が合格したことによって、その方法はいくらにでも増え、無限の可能性すら感じるほとであった。
 しかし、それを叶えることはできなかった。
 合格したことで、ちあきは、自分の道が見つかった気がしたのだ。
 それまでは、
「将来何になる?」
 と言われて、漠然としたものを抱いているだけだったが、今は、
「アイドルとして、一定の地位を、芸能界の中で築くぞ」
 という思いがあり、その先を見つめているのだった。
 それは、高校になって趣味として始めた、
「作曲」
 だった。
 アイドルをやりながら、新たな道を模索するというのは、今のアイドルの常套ではないか。それを思うと、これからの自分はアイドルをやりながら、先にあるものを目指すという考え方行こうと考えるのだった。

                 ジレンマ

 人から勧められ、最初はまったくやる気がなかったオーディションだが、審査をパスしていくうちに、いつの間にか、必死になっていく自分がいるのに気が付いた。
 一生懸命に、合格を願い、それまで練習してもこなかったダンスや歌も、へたくそならではでこなしてみると、なぜか、とんとん拍子だった。
 さすがに最初は、
「小さい頃からアイドルを目指して頑張ってきた人に対して自分のような素人が、勝ち進んでいくのは、失礼かな?」
 と思ったが、誰に対して失礼だというのだろう?
 もし、他の応募者に対して失礼だというのであれば、他の人の才能が本物で、ずぶの素人の自分が選ばれるはずがないというのであれば、その失礼は、
「審査をしている人」
 に対してになってしまうだろう。
「あなたたちは、ずぶの素人の私を選んで、他の上手な人を落とすということで、その目は節穴か?」
 といっているようなものである。
 それを思うと、
「審査は公平だ」
 と考える。
 自分が合格するということは、
「自分には、他の人にはない、何かを見つけたからなのかも知れない。自分の知らないところで何かがあるのではないだろうか?」
 と考えられるのだ。
 そう思うと、それまで、中途半端な気持ちで審査を受けてきたわけではないと自分に言い聞かせ、
「こうなったら、落選した人のためにも、自分が合格し続けたい」
 と思ったのだ。
 だが、
「落選した人のためにも」
 などというのは、自分の言い訳であり、
「落選した人は、落選するなりの理由があった」
 と思わないと、結局、審査員に失礼だということになるのだ。
 そして、実際に合格してしまうと、すべての人に対して、自分の合格を認めてもらわないと、価値がないとも思うようになった。
 最終的に、それが嫉妬であってもいいと思う。ここまでくれば、どんなに嫉妬をしても時間を戻すことができないのだから、受賞者の勝ちであることに変わりはないのだ。
 はるかは、
「当てが外れた」
 と思っているかも知れない。
 応募させて、一次審査、あるいは、それ以前の書類審査で落ちたちあきを見て、何か自己満足のような感情に浸りたいと思っていたことだろう。
 しかし、それがうまくいかず、結局、合格させてしまったのだから、
「ミイラ取りがミイラになった」
 とでも思っていることだろう。
 さらに、自分が掘った穴に落ちたという意味で、
「墓穴を掘った」
 ともいえるだろうし、
「因果が巡る」
 ということで、
「因果応報」
 ともいえるだろう。
 同じ結果であっても、ちょっとした違いで、これだけたくさんの格言があるのだから、
「人間、どんなところからでも、そこに行き着くだけの可能性が存在しているのだとすれば、可能性が無限に存在するという考え方も、まんざらではないかも知れない」
 といえるのではないだろうか?
 とにかく、ちあきは、アイドルになるため、上京し、さっそくアイドルのアンダーとして、日々、レッスンに励むことになった。
 ちなみに家族は、反対することはなかった。ただ、
「あんた、本心からではないと聞いたけど、それで大丈夫かい?」
 と言われた。
「うん、大丈夫。オーディションも必至に食らいついたつもり」
 というと、両親は安心したように、
「いつでも帰ってきていいからな」
 と声をかけてくれた。
 本心ではないと分かったが、それが親の一種の、
「愛のムチ」
 だったのだ。
 それをありがたく受け取り、上京し、寮に入った。
 そこでは、皆が平等だった。入った年数によっての、年功による序列はあっても、それは社会人としてということで、研修生という意味では、先輩も後輩もない。どうせ、ここから抜ければ、後輩であっても、相手が上になるからだ。
 ルームメイトなどで、仲間が増えたが、友達ではない。
「一つの同じ目標に向かって頑張る仲間」
 ということで、ライバルでもあるし、一番しっくりくる言い方は、
「仲間」
 ということだろう。
 特に共同生活の中で覚えていくことは、もし、ここを辞めることになったとしても、ここで培われたことは生きるはずだ。
 もちろん、最初からそんな気弱なことではいけないのだろうが、そこを考えるのはスタッフの仕事で、彼女たちは、とりあえず、自分のことで精いっぱいだと言えるだろう。
「今年の新入生は結構多いな」
 というのは、オーディションにはいろいろなオーディションがあり、アイドルグループ一つを取っても、一つのアイドルグループだけが、アイドルグループではない。
 中には、
「派生型のアイドル」
 つまり、お店の姉妹店のような関係のグループのある。
 そのため、
「姉妹グループ合同のオーディション」
 というのもあり、そこで合格した数名が、一つのアンダーグループとして、皆同じところに住み、日夜レッスンを続けているというケースもある、
 ちあきたちは、まさにその一つで、いろいろなオーディションに合格してきた人もいて、話を聞いていると、勉強になる。
 中には、ちあきの取ったオーディションでは、途中で落ちたが、他のオーディションで、グランプリという人もいる。
作品名:自分の道の葛藤 作家名:森本晃次