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パンデミックの正体

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「最初は、国主導でやろうとするだろう。何しろ、国にはプライドと、それだけの金があるからだろうが、それも、半年、一年と長引くと、お金の問題もそうだが、有識者の人たちとの確執も出てくるだろうから、医療、経済の板挟みになり、しかも、自治体ごとに体制が違うとなると、国では手に負えなくなる」
 と考えたのだ。
 まさにその通りだった。
 時期的なものも、知事が考えていた時期とある程度まで一緒だったこともあり、知事の方では、いきなり丸投げされても、対応ができるような体制は取っていた。
 一番大きな問題は、
「医療崩壊を防ぐ」
 ということである。
 まずは、病床を相当数増やすこと。
 その問題と平行して、独自にウイルスの研究チームを作ることだった。
 もちろん、国には極秘であった。下手に国にいうと、国のプライドを傷つけるということにもなりかねないし、さらにそれによって、国からパンデミック関係以外でも、目をつけられて、ロクなことにならないのではないかとおもうのだった。
 そんな状態だったので、
「なるべく国は刺激しないように、そして、自分たちだけの独自ルートで情報収集ができるような組織を持つ」
 ということを、かねてから水面下で動いていて、実際に、パンデミックが起こる数年前には、十分にできていた、
 この知事が、
「F県知事」
 となってから、6年が経っていた。
「今までで、最高の優良知事」
 という触れ込みで知事になった人は、F県をはじめとして、いくつも例があったことだろう。
 人気だけが先行している人もいたが、それまで悪政だったことで、知事が変わり、
「前に比べれば」
 という、前置きがあるが、それでも、新しい知事は、結構いい人がなっていることが多かった。
 それでも、ほとんどの人が2期というのが、多いのではないだろうか?
 知事の任期は、4年なので、2期だと、最長、8年ということになる。
 しかし、実際は、
「対抗馬がいない」
 あるいは、タレントだったり元アナウンサーだったりという、
「ただの、人気だけで、長期政権」
 という人もいる。
 しかし、F県においては、別にタレントだったわけでも、メディアに登場するような人気があった人ではないが、地道な努力と、県民に訴えかけるその心意気というものが、それまでの知事と違って、人気がある証拠だった。
 前の知事が、不正をしていたということもあり、辞任したことからの、知事選で、彗星のように出てきたのが、今の知事だった。
 1期目で、かなりの実績を上げた。災害時の対応の素早さや、被災地を訪れるタイミングなど、実に、
「県民に寄り添った」
 というところで、その力をいかんなく発揮したのだった。
 それまで、あれだけメディアへの露出が少なかったにも関わらず、こと災害が起こると、露出度は、激しくなる。
 かといって、闇雲にテレビ出演するわけではなく、県民への報告や、激励、さらには、警鐘と、必要な時には、素早く対応するのだった。
 そんな知事が、パンデミックになった時、ちょうど、2期目の自治線のすぐあとだった。知事選は、他を寄せ付けないほどの得票差で、ぶっちぎりの当選だった。
 下馬評もまさに、
「現職優利」
 という形だったが、マスコミなどは、最初から、
「再選確定か?」
 とまで言われていた。
 選挙が終わり、2期目にもいろいろ公約をしたこともあって、その準備をしている時に、パンデミックが襲ってきたのだ。
 1期目の時の公約は、いくつか果たされた。
「公約なんて、破るためにある」
 という開き直りのような知事が多い中、何も言わず、いきなり公約にあったことが達成されたと、マスコミが発表することで、サプライズ感があるからか、県民の指示を十分に受けていた。
「これだけの知事だから、対抗馬として、誰が出てきても一緒なんじゃないか?」
 と言われてきたが、野党側は、どうしても、この知事を引きずり下ろしたいと思うからなのか、いつも対抗馬をぶつけてくる。
 ただ、的外れなのだ。
 実績があって、ゆるぎない地位を築こうとしている現職の知事に対して、人気だけのタレント銀をぶつけて来るなど、
「身の程知らず」
 と言われても仕方が合いだろう。
 そんな、野党は、完全にこの県では、
「悪役」
 である。
 それなのに、わざわざいつも対抗馬を出してくるのは、何かあるのだろう。
「きっと、今の知事に続けられると、困るようなあくどいことをやっているんだ」
 というウワサもあるくらいだった。
 あまりにも、善良な知事が就任したことで、居心地悪いと思っている県議員もいることだろう。
 しかも、それは野党だけではなく、同じ党である与党側の議員の中にも、胡散臭いと思っている人もいるからだ。
 だが、それも、悪いのは自分たちで、
「下手に動かれると、自分たちがやってきたことが明るみに出る」
 と思っているのだろう。
 それは、法律ギリギリのところでのことなのだろう。黙っていれば、見逃してもらえるところなのだが、どうもこの知事は、妥協を許さない人のようだ。
「議員たるもの、普段から、襟を正して」
 と自分でも言っていて、それを皆にも、半分強制をしていた。
 しかし、これは、知事として、最低の仕事の一つではないだろうか?
 それをわきまえた上で、
「時には悪者になることもある」
 とたまにそのようなことを口にしているが、まさにこのことを言っているのだろう。
 県知事をやるうえで、
「一人では、十分なフォローはできない」
 ということも十分に分かっていて、副知事も自分の手足となって動いてくれる人が就任したことで、かなり動きやすかったのだ。
 パンデミックの時も、知事がいつも表に出て、メディアの露出も今までと見違えるほど多くなり、パンデミックの対応だけでも大変だった。
 他の知事業務のほとんどを副知事と、その配下の議員に任せて、自分はパンデミックに集中していた。
 というのも、彼は他の県の知事とは違い、最初からいろいろ見越して行動していた。
 他の県の知事たちは、
「国の方針が示されるまで、何もできない」
 ということで、ほとんど、様子見の状態だった。
 しかし、
「先手を打っておかないと、いざという時に、間に合わなくなる」
 というのが、まずは、病床の確保だったのだ。
 まず最初に、
「今自分たちで何ができるか?」
 ということを考え、さらに、
「国にはできないが、自分たちがしないと先に進まない」
 という発想から、まずは、
「病床の確保」
 だったのだ、
 こればかりは、国が手配してくれるわけではない。ただ、問題は病院に対しての保証だった。
 これは国が方針を決めてから、知事が実行するというもので、保証がハッキリしていないために、なかなか病床確保も難しい。
「とりあえず、キープしておく」
 というくらいしかできなかったが、それでも何とかキープだけはできた。
 その時はそれで十分だった。
「今できることを、できるだけ考えて実行する」
 というのが、知事をしていてのモットーであり、
「パンデミック」
 という非常事態でも、それは変わらない。
作品名:パンデミックの正体 作家名:森本晃次