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パンデミックの正体

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 というもので、それだけに、水面下で動くことが絶対なのである。
「相手に悟られないことが、成功の秘訣であり、悟られさえしなければ、まず失敗することはない」
 ということで、絶対条件は、
「秘密裡」
 ということであった。
「下手に動けば足元をすくわれる」
 というのもこういうことであり、何しろ政権を掌握し、実際に政治を行ってきたということでは、ノウハウにしても、自分たちよりもかなりたくさん持っている。
 ということである。
 ただ、一つ大きな追い風として、
「このパンデミックの時代を背景に、国家は次第に、面倒なことを、子会社として見ている我々に丸投げにしてきた」
 ということである。
 それだけ中央の力が落ちてきたということであり、いくら今まで半世紀以上も、一党独裁のような形でやってきたのにも陰りが見えてきたということであろう。
 もちろん、その間には、一党独裁ではうまくいかない時は、
「勢いのある政党」
 であったり、勢いというよりも、
「ただ、組織票を持っている」
 ということで、票目当てだけのために、与党に組み込むことで、自分たちが与党でいられるという。いわゆる、
「なりふり構わない」
 というやり方で、政治を行ってきたのだった。
 実際に、与党を監視するはずの野党は実に情けなくなっている。
 野党第一党と言われるところが、政府の批判ばかり、何かあれば、
「内閣不信任案」
 という伝家の宝刀を、簡単に抜こうとするのだ。
 いざという時のための伝家の宝刀なのに、そんなに簡単に抜いていては、相手に見透かされるということくらい、なぜ分からないのか?
 そんな野党だって、肩書だけを見れば、大変な人ばかりではないか?
 元弁護士、元医者。元科学者などと言った、有識者でもいいくらいの専門家団体の集まりなのに、どうして、こんな
「小学生の喧嘩レベル」
 と言われるようなことしかできないというのだろう?
 そんなことを考えていると、本当に情けない団体だ。そういう意味では国民もちゃんとわかっていて、そんな、
「批判ばかりするくせに、代替え案をまったく出そうとしない、行き当たりばったりの野党に政権を譲るくらいなら、まだ現状の方がましかも知れないな」
 と思うのだった。
 どうせ、政権を握っても、皆が皆、人に責任や対策を丸投げするだけで、誰も動こうとしないに違いないからだ。
 それに、
「実際に動かれて、あらぬ方向に舵を切られでもすると、修復不可能なところにでも連れていかれると、国家の崩壊となる」
 ということになる。
 そういう意味で、自治体単位とはいえ、行政としての経験のある、自治体の知事が、政治を動かすというのは、野党に比べればよほどあてになり、信憑性があるのではないだろうか?
 そんな自治体の中で、政府をうまく誘導することができるところが現れた。
 元々は政府にいたこともある知事なので、中央のやり方や考え方が手に取るように分かるということであった。
 政府にとって、いかに自治体に自分たちの仕事を任せるかということを、なるべく知られないように、自治体に移行できればと思っていたが、かといって、政府の方も、主導権を自治体に持っていかれると、政府の意向がまったく反映されないということも困るのであった。
 そこで、知事会の中で一番力の強い知事と、政府の窓口とがうまく話をすることができればということで、この県の知事が選ばれた。
 実際に自治会の会議の中でも、重鎮としての迫力のようなものがあった。
 ただ、彼は会議の最中は、ほとんど自分から口を開くことはない。いつも最後まで目を瞑って、冷静に話を聞いているだけだった。
 それだけに、迫力と威厳を感じさせる。そして、最後にゆっくりと目を開けて、自分の意見をいうのだった。
 たぶん、この知事は、自分の立場というものをよく分かっていて、まわりの知事から意見が出てくるのを、妨げることはせず、話を聞きながら、自分の意見をずっと暖めていたのだろう。
 かといって、彼は自分の意見を最初から持っているようで、最期に自分の意見を言いながら、他の人の意見を一つ一つ、どこが違うのかということをしっかりと述べてくれる。
 まるで、どこかの予備校の、
「赤ペン先生」
 のようだ。
 と、若手知事から言われていた。
 それだけに、知事の会議が行われている時、皆、活発に自分の意見をいう。
 このような長老のような人が控えていれば、若手知事は気後れして意見が言えないものだが、逆に彼は、若手に、
「どんどん、意見を出しなさい」
 と言っている。
 とは言っても、そんなに簡単に委縮している人たちから意見も出てこないものなのだろうが、いつも最後に一人一人の意見と自分の意見の違いは同じところを、キチンと話すことで、若手の連中も、
「自分のどこが悪くて、どこがいいところなのか?」
 ということが分かっているのだった、
 しかも、彼のうまいところは、
「まず、悪いところ」
 を先にいって、その後、
「とはいっても」
 と言いながら、
「では、いいところとして」
 といって、悪いところをカバーするような言い方をする。
 普通に、評論することを商売としている人がよく使う方法であるが、下手な言い方をすれば、白々しく感じられてしまうだろう。
 そうでもなく、相手に信用させる言い方を政治家ができるというのは、選挙でもなかなか使わない手法ということで、結構、政治家のような人に使いこなせないようなテクニックを使えるということで、中央との折衝には、十分な力を発揮できるようだ。
 どうしても、地方と中央というと、中央の意向が生きてしまうが、地方の要求を最初にうまくまとめていれば、対等に話もできるというものだ。
 それを考えると、この知事はうまい立ち回りをしている。さすがに中央の大臣やソーリであっても、なかなか一筋縄ではいかないと思っているだろう。
 だが、逆に地方と中央の意見にさほど差がない時は、話が早い。
 それだけの理解力もすごいものがあって、政府の言いたいことを、自分なりに、解読してそれを話し、そして、自分たちの主張の根幹を少し話すことで、政府要人にも、
「なるほど、言い方が若干違うだけで、言っていることは同じではないか」
 ということで納得させることができる。
 その時、少し大げさに知事側の意見を広げた形でいえば、同じ内容でも、少し知事側に歩みよった裁定を下してもらえるようになるようだ。
 つまり、普通に台頭にしているつもりでも、普通に話せば、国側から丸め込まれる形で、自治体は結局、
「国の言いなり」
 という形になりかねないのだった。

                 F大学伝染病研究所

 そんな知事がいる、F県では、独自にウイルスを研究している研究所があった。
 この知事は、今までの経験と勘から、
「どうせ、国家はそのうちに投げ出して、自治体に丸投げすることになるだろう」
 ということは、大体予想がついていた。
 実際に、今までの自治体の対応を見ていると、
作品名:パンデミックの正体 作家名:森本晃次