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パンデミックの正体

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 それを考えると、
「まだまだ、計画もこれからで、何をどうしていいのか、暗中模索というところなんだろうな?」
 と、健太郎は、考えていた。
 少し、なたんではいたが、悲観しているわけではない、
「先は見えているが、紆余曲折の時期に差し掛かっている」
 ということが分かってきたということであろうか?
「まだまだ、先は長く、右往左往している時期なんだな」
 と考えさせられていた。
「三歩進んで二歩下がる」
 という歌謡曲が、半世紀前くらいに流行ったというが、まさにその通りなのだろう。
 健太郎は、最近昔の歌謡曲をよく聴くようになった。やはり、
「何か教訓を得たい」
 という、藁をもすがる気持ちなのかも知れない。
 それでも、何とかなるもので、研究所は出来上がった。
 もちろん、誰かにしわ寄せが行って、夜も眠れないほどに忙しく立ち回った人がいるということは間違いではない。それだけに、簡単に、
「出来上がった」
 などというのは、本当はいけないことなのだろうが、それでも、結果として、チームの結束がよかったのも間違いではなく、そういう意味で、
「いいチームが出来上がった」
 といってもいいだろう。
 チームといっても、開発や運用が始まると、別々のチームになるわけだが、そもそも、そちらの方が専門なわけで、きっと、
「開発チームでも、十分な力が発揮できる連中だ」
 ということを、所長の宗次郎は分かっていた。
 そうなると、開発は研究員に任せて、自分は運営をしっかりしていればいいのだろうが、そもそもの開発者としての血が騒ぐというか、じっとしてはいられない。
「まるで、野球のプレイングマネージャーのようではないか」
 と感じるのだった。
 いわゆる、
「選手兼監督」
 というものだが、普通であれば、なかなか難しい。
 監督を引き受けると、基本仕事は監督になり、選手としては、代打の1打席くらいしかないものだが、数年間も、
「キャッチャーで四番を務めた」
 という監督がいた。
 彼のバイタリティのたまものなのだろうが、それ以上に、彼が監督を引き受ける際に、
「自分が指定したヘッドコーチでなければ、監督就任の打診は引き受けられない」
 ということであった。
 フロント側も、まだまだ彼の選手としての実力は評価し、さらには、監督としての手腕にも期待していた、-。どっちも叶えるには、彼の要望を聴くしかなかった。
 そのヘッドコーチには、たぶん、最初から根回しをしておいたのだろう。すぐに決まったようだった。
 そうやって、
「選手兼監督」
 としての、
「二足の草鞋」
 とうまく使える土台を整えたのだった。
 宗次郎もそうだった、
 所長という立場にありながら、参謀というか、秘書というか、軍師とでもいえばいいのか、それに値する人はいた。
 その人は、会社から与えられたものではなく、自分で見つけてきて、自分から会社に売り込んだのだ。
「自分でやりやすいようにするためには、何だってやる」
 というくらいのバイタリティを持った宗次郎は、次第に、研究に没頭していくのだった。 
 その代わり、所長の補佐役の人間と、健太郎は綿密な中になった。
 宗次郎が自分の研究に熱心になっている間、経営のほとんどを任された彼だけではおのずと限界がある。それを見かねた健太郎が、経営のノウハウなどを補佐役に教えて何とか、宗次郎が研究に没頭できるようになった。
 実は、健太郎としても、その方がよかった。
 宗次郎の研究者としての実力は、話をしていてすぐに分かった。
「宗次郎という男は、考え方が、他の人とは一線を画している」
 と感じていた。
「俺の研究は、他の人には分かるものではないからな」
 と、少し自信過剰なところがあったが、
「あいつは、自惚れれば自惚れるほど、実力を発揮する珍しい男だ。しかし、研究者たるもの、あいつほどの気概がなければできないだろう、そういう意味で、あいつに気持ちよく研究をしてもらいたいという気持ちが一番なんだ」
 と考えていた。
「研究というのは、始めたら、他のことを一切遮断するくらいでないと、できるものもできない」
 と、宗次郎が飲みながら話していた。
 その意見には健太郎も賛成で、
「宗次郎を、研究で実力を発揮させるためであれば、俺は、協力を惜しまない」
 とばかりに、健太郎は思っていた。
 それだけ宗次郎の力を予見していて、それだけに、宗次郎のことがウワサニんあるのを恐れていた。
「あいつが評判にでもなって、他に買収されたりしなければいいが」
 と健太郎は思った。
 評判になるくらいならいいが、他に取られたり、
「取れないのであれば、潰してしまおう」
 などということを考える悪しき組織があれば、それこそ一大事である。
 怪しい組織であれば、それくらいありえなくもない。
 取れなければ放っておくというような、程度の組織であれば、組織としてはたいしたことはないだろう。
 そうは思ってみても、実際には、
「何かが起こってみないと分からない」
 というのが実情で、そんな起こるかどうか分からないことにだけ、木を病んでいてもしょうがない。
 かといって、放っておくわけにもいかない、
 いかに、状態をキープしつつ、先に進んでいけるかということを目指していけるかということが問題なのだろう。
 そんな研究所において、宗次郎は、他の連中とは違った研究をしていた。
 宗次郎には、
「所長としての補佐役」
 という人物もいれば、
「研究員としての補佐役」
 もいる。
 どちらも大切な相手なのだが、健太郎は、経営に関しての補佐役の人間は知っていても、研究における補佐役を知らない。ましてや、そんな立場の人間がいるということを想像もできなかったのだ。
 逆に他の研究員であれば分かっている。
 チームで研究することが多いので、自然とそういう形は出来上がってくるのだ。それを分かっているから、研究員には分かるのであって、どうしても政治家としては、似たような組織で動く集団ではあるが、明らかに違う健太郎には、分かりそうで分からない、
 それを、
「ニアミス」
 とでもいうのではないだろうか?
 しかし、逆に宗次郎も、健太郎の胸の内はよく分からない。
「兄貴ほど、自分の気持ちを押し隠すことがうまい人はいない」
 と、実は子供の頃から思っていた。そして、
「だから、政治家に向いているのかも知れないな」
 と感じたのである。
 もちろん、今もその気持ちに変わりはなく、
「いや、むしろ、強くなっている」
 と思うほどだった。
 健太郎は、あまり人に頼ることがなかった。兄という立場も手伝ってか、人に頼られることはあっても、自分から頼ることはない。それは、子供の頃からのことで、それを分かっている父親だからこそ、
「こいつは、政治家になるために、生まれてきたようなものだ」
 といっていたのだ。
 その言葉を聞いて、露骨に嫌な顔をしたのが、母だったのかも知れない。それを後から思ったのだが、そう感じることで、
「そっか、離婚の理由はこのあたりだったのかも知れないな」
 と感じたのであった。
 思春期の、子供時代で一番変わる頃を見ていないので何とも言えないが、
作品名:パンデミックの正体 作家名:森本晃次