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第一印象と二重人格の末路

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 そんなテレクラが流行った頃のことを、覚えている人も少ないかも知れないが、考えてみれば、テレクラが店舗としてあった時期というのは、結構長かったような気がする。
「10年以上は普通にあったよな」
 といえる。
 今は昔のテレクラというのはないようだが、その代わり出会い系のようなものはいまだに残っているという。
 そういえば、ネットの出会い系というものも、今から15年くらい前が一番最盛期だっただろうか?
 どこの雑誌にも、いかにもというような書き方で、
「出会える」
 と書いてあったような気がする。
「出会い系」
 と言われるだけあって、出会うということが最大の魅力なのだ。
 テレクラだって同じではないか。あまりテレクラや出会い系を利用しない人から見れば、
「何が楽しいんだ?」
 と思うだろう。
「だって、オンナを抱きたいと思ったら、ソープにいけば、法律で守られた店舗なのだから、安心ではないか? 下手に自分立ちで交渉すれば、騙されたりしても、文句が言えないだったり、下手をすれば、美人局が現れて、有り金むしり取られることになりかねないのではないか?」
 と思うのだ。
 普通に考えれば、テレクラや出会い系は本当に怖い気がする。それでも会いたいというのは、
「素人を自分がナンパしたかのように感じるからなのだろうか?」
 と、吾郎は、テレクラにたまに言っていたくせに、理解していなかったのだ。
 そもそも、交渉をすれば、普通なら、2万円とか、3万円とかで、ホテルにということになるのだろうが、ソープであれば、もうその頃は、大衆店などがあり、60分であれば、3万もいらないところが多いのではないだろうか? 
 ソープであれば、危険なことはない。美人局や、追加料金などはありえないからだ。そんなことをすれば、風営法違反で、営業ができなくなるし、営業ができても、変な評判をネットなどに流されでもしたら、もうアウトである。
 それに、店であれば、女の子は定期的に性病検査も行っているだろう。
 しかし、素人の出会い系のオンナが、自分で性病検査を行っているとは思えない。そういう意味で、病気を貰うという意味でも、出会い系や、テレクラの方がよほど怖い気がする。
 実は、吾郎も一度だけ、テレクラで知り合った女と、ホテルに行ったことがあった。確か2万だったが、サービスなどまったくない。相手は完全にマグロであり、表情もまったく変わらない。
 それを思うと、
「まるで、金をどぶに捨てたおうな気分だ。あんな女、金貰っても二度と抱くもんか」
 と思ったものだった。
 それから、テレクラにも、出会系にも手を出すことはなかったが、出会い系のチャットのようなものは、実にうまくできている。
 一回の書き込みに、課金されるのだ。
 値段は憶えていないが、一回の書き込みいくら、電話番号を教える時はいくら、あるいは、待ち合わせの約束をする時はいくら、というように、それぞれで値段が違ったような気がする。
 しかも、オンナは完全にサクラであり、舞い上がっている男は気づかないが、少しずつ近づいているというようなそぶりを見せながら、どんどん、書き込みを相手にさせるのだった。
 相手の会社に振り込みをすれば会話が続けられるというもので、興奮してくると、
「どうせもうすぐ会えるのだから、この一回の課金で終わりだ」
 と思って課金して、会話を続ける。そして実際に待ち合わせとなって、その場所にいくと、最初は、
「あなたが分からない」
 といって少しでも書き込みさせておいて、最期には、
「ごめんなさい。急用ができて、帰らなければいけなくなったの。ごめんなさい」
 で終わりだった。
 その時初めて相手がサクラで、その場にいるわけではなく、
「ネカマが話を合わせているだけだ」
 ということに気づかされて、愕然とする。
 しかし、そもそもこんな陳腐なことに引っかかったのも自分が悪いのだ。我に返ると、
「こんなことは、誰にも言えないよな」
 と思う。
 だから、出会い系の連中にとっても、悪いウワサを流されないで済むので、いくらでも手を広げることができるということだろう。

                 道化師

 吾郎は、制服フェチという性格から、ついつい風俗系に流れがちであり、結構の風俗に手を出したりしていた。
 しかし、中には、いわゆる、
「ぼったくり」
 と言われるようなところにも、迂闊にも入り、5万近くも吸い取られたこともあった。
 実際には、悔しさで胸をかきむしりたくなったが、元々、知らずに飛び込んだ自分が悪いのであって、下手に逆らうと、怖い兄さんが出てきて、ボコボコにされる恐れがあった。それこそ、
「○○ポッキリ」
 などというのほど、胡散臭いものはないと思いながらも、なぜに手を出したのか、その時の心境を思い出すことができない。
「まるで、夢を見ていたかのようだ」
 と感じた。
 それにしても、高い授業料であった。そう思うしかないのは分かっているが、すぐは、どうしても、むしゃくしゃしてしまった。
 しかし、
「熱しやすく冷めやすい」
 という性格の吾郎は、すふに、
「やっぱり授業料が高かっただけだ」
 と、意外とアッサリと諦めた。
 だが、欲情の虫は収まらなかったのだ。
「このまま、帰るのは、俺の気が済まない」
 と、思い、馴染みのお店に出かけていった。
 その時はちょうど、フリーだったのに、あまり客がいない日で、普段であれば、指名できないような子が、ちょうど開いていた。
「じゃあ、この子で」
 ということで入った。
 確かに、あの日は、会社でポカをやってしまい、上司からこっぴどく叱られた日だった。悪いのは、完全に自分だったので、文句を言うわけにもいかず、しかも相手は直属の上司、何も言えるはずもなかった。
 ふらりと風俗街にやってきて、最初はソープにでも行こうかと思ったが、ネオンサインが普段い比べて眩しく感じ、どうにも足が向かなかった。
「こんな日は、暗いところの方がいいんだろうか?」
 と、暗い方に導かれるように歩いたのだった。
 それが悪かったのだろう。暗闇に吸い寄せられる虫を、虎視眈々と狙うクモのように、気が付けばクモの巣に捉えられ、逃げられなくなったのだ、
 最初は女神に見えた女が次第に、女郎蜘蛛へと変化する。風俗街においてなので、まさに、
「女郎」
 である。
 どんどん、ビールを追加したり、お障りいくらなどと、勝手にこっちが何も言わないのを見て、追加していく。
「ヤバイ」
 と頭の中では思っているのに、女郎蜘蛛の糸から逃れられなくなっていた。
「もうどうでもいいt思った時には、6万円」
 さすがに、値段としては想像通りだったが、酔いが覚めたのは、値段を聞いたからではなかった。ハッと女の顔を見た時、本当の女郎蜘蛛の化身に見えたからだ。
「こんな女に、この俺が」
 と思うと、逆らうこともできない立場に、悔しさがこみあげてきた。
「一発でも、誰か関係者をぶん殴っていいのであれば、6万くらい、くれてやる」
 というくらいに思ったのだが、それができない自分に苛立ったのだ。