第一印象と二重人格の末路
と考えるのだった。
そうやって考えると、
「制服が似合う」
という音の子を基本に考えると、可愛いと思える子であれば、好みは結構広がってくる。
逆に小学生の頃は制服の女の子というのは、お姉さんであり、憧れでしかなかった。特に近くに住んでいた、優しいお姉さんが今でも忘れられなかったりする。そのお姉さんが、高校生の時、
「思春期で最初に好きになったその子に似ている」
と感じるまでに、少し時間が掛かったのだ。
小学生の頃に見たお姉さんは、あくまでも、
「お姉さん」
なのだ。
付き合うとか、彼女とか、そんな感覚ではない。むしろそんなことを考えるのは、失礼に当たるというくらいで、それこそ、女神のような存在だった。
だから、余計に、
「汚してはいけない」
という意味で、
「自分なんかが好きになってはいけないんだ。あくまでも、観賞用として愛でる対象なのではないだろうか?」
と考えるようになった。
だから、自分の好みとして考えた時に違和感があった。そして、それから大学卒業くらいまでは、自分がどんな女性が好きなのか、暗中模索だったような気がする。
だから、一時期、
「どんなタイプの女性であっても、必ず声をかけるようになった」
といってもいいだろう。
高校生の頃まではパッとしなかった吾郎だったが、大学生になると、急に垢ぬけてきて、女性からモテるという自負が、自他ともにあったと言えるだろう。
それは、逆に高校生の頃までの学生服が却ってネックだったのかも知れない。
ブレザーのような制服であれば、まだしも、当時はまだ詰襟の学生服が多く。ブレザーに憧れたりしたものだった。いわゆる詰襟の学生服を、一般的に、
「学ラン」
などと称していた時代があった。
時に、昭和50年代などには、校内暴力というものが流行り、先生もそれに対抗し、ジャージに竹刀といういでたちの先生が、ドラマに出てきたりもした。
生徒の中には、そんな先生からの締め付けがひどいことに反発し、学校を退学させられたり、自らした生徒が、
「お礼参り」
と称して、学校への破壊工作に及んだりしたものだった。
その時に変形学生服が使われ、いわゆる、
「不良ルック」
とでもいうような着こなしが、象徴的だった。
さすがにそんな時代は知らないが、いずれ、不登校、苛めの時代に入り、制服も変化していった。
普通のセーラー服ではなく、ブレザー系には、前述のような紺のハイソックスと言った服や、一時期爆発的に人気であったが、すぐに消えていった、
「ルーズソックス」
などというものもブームだったりした。
その頃の女子高生は、 テレクラなどという風俗が流行ったおかげで、
「おじさんが簡単に女の子と出会って、ホテルにしけこんで、お小遣いをもらう」
などという文化があったりしたものだ。
今の出会い系の元祖のようなものだといってもいいだろう。
今では、ネットのSNSや、出会い系のサイトなどで、簡単に知り合えるが、昔は、
「テレクラ」
いわゆる、
「テレフォンクラブ」
という店舗があって、そこで、女の子からの電話を待つというシステムになっていた。
店舗のよっていろいろな種類があるようで、よくドラマなどで出てくるのは、
「先着型」
とでもいえばいいのか、かかってきた電話を、最初に取った人に権利があるというものだ。
そんなことをしていると、なかなか順番が回ってこない人もいるということで、
「順番型」
という制度のお店も出てきた。
どっちが最初だったのか分からないが、順番型の方が後のような気がした。
というのは、順番型というのが、あくまでも、
「先着型の欠点を補った形ではないか?」
と思えるからである。
吾郎も、学生の頃は行ったことがあったが、ほぼ、テレクラが衰退する少し前だったこともあって、入った店で、
「先着型」
だったということはなかったのだ。
順番型というのは、部屋の番号が決まっていて、若い順から掛かってくる。そして、その人が話をして、交渉がまとまれば、待ち合わせということになるのだろうが、まとまらなければ、男が電話を切ると、そのまま、今度は、次の部屋に掛かるというわけだ。
交渉がうまくいかなかったのには、いろいろな理由が考えられる。
「時間が合わない」
あるいは、
「好みが合わない」
これには、年齢であったり、容姿や話していての雰囲気も含めてのことになるのだが、たまたまその人が合わなかったというだけで、次の人とパッチリ相性が合うかも知れない。そういう意味で、女の方も男の方も、
「合わなければ次」
ということになるだろう。
もし、そこで交渉が成立し、待ち合わせ場所を決めて、
「会おう」
ということになっても、お互いに相手が出てくるかどうか難しいところだ。
交渉がうまくいったといっても、あくまでも、電話で話をしただけで、男性側の好みとまったく違う女がそこにいるかも知れないし、男にしても、電話で話したことが、女の子のイメージに合わなければ、交渉決裂。待ち合わせ場所に行ったとしても、相手が、
「これは違う」
と思うと、その場から、そそくさと帰ることだろう。何しろ、お互いに顔も知らない。
「初めまして」
だからである。
店の方もそのことは重々承知で、男性が外出する時は、時間内であれば、戻ってきてもいいことになっている。
つまり、男性が表に出る時は。受付に、
「ちょっと外出してきます」
というのだ。
だから、店は最初から料金は前払い。そのまま戻ってこなければ、
「うまく会えたんだ」
ということで、店は、時間がくれば、片付けて、空室にしてしまう。
そういう意味で、その部屋の時間分は貰っているので、部屋が空いたとしても、店側の損にはならないということだ。
客も、ずっとそこで、電話を待っているだけということもない。三時間という時間を取っていたとしても、時間帯によって、あるいは、曜日によってなのかも知れないが、女の子から電話がかかってこないということも、平気であるのだ。
それでも、女の子用のダイアルは、フリーダイアルにしてあるので、女の子がいくらかけても、電話代の心配はない。その分は、男性の部屋の使用料で、賄うのだろう。
部屋の中では。マンガを見たり、あるいは、その頃に流行り出した。ケイタイ電話のツールを使って、
「伝言ダイヤル」
などというツールであったり、
「出会い系のチャット」
というものもあるので、店にそのカードが置いてあり、カードを使って、利用するので、その時に客がカードを買うことになる。
電話を待っている間に、チャットは伝言ダイアルでも、食指を伸ばしていると、どこから引っかかるか分からないというものだ。
基本的にテレクラというのは、女性から掛かってこなければ、何もできない。それをケイタイが埋めてくれるのだった。
あとは、マンガなどが置いてあってマンガを見たり、パソコンが置いてあったりすれば、そこで、AVを見たりして時間を潰しているのだろう。それこそ、
「ネットカフェのようではないか?」
といえるのではないだろうか?
作品名:第一印象と二重人格の末路 作家名:森本晃次